大久保嘉人 (写真:二宮渉/フォート・キシモト)

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 サプライズは、なかった。ザックが発表したワールドカップのメンバーである。
 大久保嘉人の選出は、記者会見場だけでなくオフィスなどにもどよめきを呼んだかもしれない。だが、昨シーズンから継続してゴールをあげている31歳の代表復帰は、きわめて妥当なものだ。

 2列目のサイドでも、1トップでもプレーできる汎用性の高さは、攻撃の選択肢を増やす。昨年からシュートレンジを大きく広げ、それがまた高精度の決定力を誇る。国内ベースのストライカーでは誰よりも勢いがあり、前回大会を知る経験も頼もしい。

 1トップの有力なスタメン候補の柿谷とは、セレッソ大阪在籍時にキャリアが重なる。今シーズンはリーグ戦でいまひとつ調子に乗り切れていない24歳の、良き相談相手にもなれるだろう(ザックがそこまで見込んでいるかは分からないが)。2年以上も代表から遠ざかった意味ではサプライズだが、大久保の選出に疑問は入り込まない。

 23人の顔ぶれも、予想どおりと言っていいだろう。細貝ではなく青山敏が滑り込んだのは、ダブルボランチの序列を整理すると分かりやすい。

 大別すれば長谷部と山口が守備で、遠藤と青山が攻撃により多くの力を注ぐのが基本タスクだ。ボールを刈り取る性格が山口とかぶる細貝ではなく、攻撃にスイッチを入れられる青山を選ぶことで、ザックは中盤セントラルの役割分担を整えたのだ。

 高さというオプションを、攻撃に加える選択肢もあった。豊田は大久保に劣らず好調で、サガン鳥栖で継続的に結果を残している。フィテッセでプレーするハーフナー・マイクも、2シーズン連続で2ケタ得点をマークした。
 
 長身ストライカーを活用したパワープレーは、相手守備陣にストレスをもたらすも。たとえクロスを跳ね返しても、セカンドボールの行き先に攻撃側の選手がいれば、二次攻撃やシュートにつなげられてしまう。何が起こるか分からない意味で、守備側はパワープレーに神経をすり減らされる。
 
 クラブレベルで長身選手を使いこなしたこともあるザックなら、豊田やハーフナーをチームに落とし込むことはできるはずである。 
だが、ザックは彼らを選ばなかった。
 
 これまで同様のパスサッカーでW杯に挑むというメッセージが、そこに込められている。
 
 自分たちの特徴を発揮したうえで上位進出を目ざすのは、16強入りでなお物足りなさを残した4年前の持ち越し課題である。選手に不足はない。可能性を秘めたチームだ。4年越しの答えを見つける戦いを、いまは期待するだけである。