アウディが発表したスーパーカー「ヌヴォラーリ」! 過去を振り返るとその名前がもつ重要な意味がわかる!!

この記事をまとめると
■1001馬力の新型アウディ・ヌヴォラーリが世界初公開
■名の由来は伝説的ドライバーへの敬意にある
■過去にも「ヌヴォラーリ」を冠したコンセプトカーが存在していた
22年越しに蘇ったヌヴォラーリ
2026年6月4日、アウディはフランス・アンティーブにてスーパーカー「ヌヴォラーリ」を発表した。ランボルギーニ・テメラリオのアーキテクチャを使用するプラグインハイブリッドはシステム最高出力1001馬力を発生。0-100km/h加速2.6秒、最高速度350km/h以上という数字を誇る499台限定のフラッグシップで、2027年上半期からグローバルでの引き渡しが始まる予定となっている。

「ヌヴォラーリ」という名が市販モデルに冠されたのは、これが初めてのことだ。しかし、この名前とアウディの関係は、2026年に突然始まったわけではない。22年前、2003年のジュネーブモーターショーに「ヌヴォラーリ クワトロ」という名のコンセプトカーが登場していた。
では「ヌヴォラーリ」とは一体なにを意味するのか。その答えは、第二次世界大戦前のグランプリレース史にある。
タツィオ・ヌヴォラーリは戦前のグランプリにおけるもっとも偉大なレーシングドライバーの一人として認められており、61回のグランプリ優勝とその他の国際レースでの活躍によってその地位を確立した。約30年にわたって現役でレースを続け、アウディの前身にあたるアウトウニオンが多くのグランプリで勝利を収めることができたのは、彼の卓越したドライビングの芸術性によるところも大きかった。

1930年代のグランプリレースで、ヌヴォラーリはアウトウニオン・シルバーアローを駆って強敵メルセデス・ベンツと激闘を繰り広げ、大胆不敵な走りでヨーロッパ中のファンを熱狂させた。つまり「ヌヴォラーリ」の名は、アウディにとってはアウトウニオン時代の栄光と、そこに不可欠だったひとりの天才ドライバーへの最大限のオマージュなのだ。
そして、2026年の市販ヌヴォラーリに先立ち、この名が初めてアウディのコンセプトカーに使われたのは、2003年のジュネーブモーターショーでお目見えした「ヌヴォラーリ クワトロ」というコンセプトカーだった。
アウディの未来像を告げるモデルだった
ヌヴォラーリ クワトロは、2ドア2+2シーターのクーペとして設計された。ボディは最新世代のアウディ・スペースフレーム(ASF)によるアルミニウム構造を採用。押し出し材とダイキャスト部品を組み合わせた軽量・高剛性な構成は、当時のA8のアーキテクチャと同様のアプローチだ。

その心臓部には新設計の5リッターV10ツインターボエンジンを搭載し、最高出力600馬力、最大トルク750Nmを発生。0-100km/h加速4.1秒、最高速度は250km/hに制限されている。駆動方式はいうまでもなく4WDで、6速ティプトロニックと組み合わせられる。
そして、このモデルのなによりのハイライトといえるのがそのデザインである。2002年にアウディのデザインディレクターに就任したワルター・デ・シルヴァが牽引する新たなデザイン言語を全面的に導入。その最大の特徴となるのは、やはり逆台形に大きく口を開けた「シングルフレームグリル」だろう。

このシングルフレームグリルは、アウトウニオンが1936年に手がけたレースカー「タイプC」を参考にデザインされたという。モデル名と同様、アウディの原点へのリスペクトを窺い知ることができるわけだ。シングルフレームグリルは、2004年に3代目A6(C6系)として市販車に初導入。その後すぐにA4にも取り入れられ、そこから二十余年を経た現在に至るまで、ディテールを変えながらもアウディ車のデザイン上のアイコンとして機能しつづけていることは周知のとおりである。

そして、冒頭に記したとおり、ヌヴォラーリの名はふたたび蘇った。R8以来のアウディ謹製スーパーカーというだけでなく、そのスタイリングはアウディの現行ラインアップのどれとも異なる、新時代を予感させるものだ。それもそのはず、奇しくも新生ヌヴォラーリは、2024年にアウディのチーフデザイナーに就任したばかりのマッシモ・フラスチェッラによる新たなデザインフィロソフィーを本格採用した初の市販モデルなのだ。
ちなみにフラスチェッラは、”The Radical Next”と呼ぶそのデザインフィロソフィーを初採用したコンセプトカー「コンセプトC」の発表時に、1936年のアウトユニオン・タイプCや2004年の3代目A6にインスパイアを受けたと語っている。そう、どちらも2003年のヌヴォラーリ クワトロと深くかかわるモデルなのだ。
これらの事実を並べてみれば、「ヌヴォラーリ」の名を冠して世に出た2台がもつ奇妙な共通点は、単なる偶然として片付けるにはいささか出来すぎているように思える。新旧ヌヴォラーリに共通するのは名前だけではなく、「アウディが未来を提示するとき」という文脈もまた、共有されているのかもしれない。



