『GRヤリスMコンセプト』を渡辺敏史が取材(前編) 注目はトヨタ初のリアミドシップ4WDと次世代内燃機関
実戦開発のフェーズに入っている
『GRヤリス』をベースに、リアミッドシップのレイアウトを採る『Mコンセプト』が発表されたのは2025年のオートサロンでのこと。
【画像】リアミッドシップ採用!『GRヤリスMコンセプト』と、ベースになった『GRMNヤリス』 全53枚
その際に発表されたスーパー耐久への参戦は同年秋から始まり、今年もOEMの技術開発車両がひしめくST-Qクラスで出走、この週末に富士スピードウェイで行われている24時間耐久レースのエントリーリストにも名を連ねている。

GRヤリスをベースに、リアミッドシップのレイアウトを採る『Mコンセプト』。 トヨタ自動車
いわば実戦開発のフェーズに入っているわけだが、果たしてその狙いは何なのか、そして市販車への結実はあり得るのかといった疑問は尾を引いている。そんな中、Mコンセプトの開発を担うGR部門から、車両取材と同乗試乗の機会を提供してもらえることになった。
レースへの参戦を通して存在は公然化しているとはいえ、我々のような外部の人間にバリバリの開発途上車両を触らせることはよくある話ではない。しかもその記事化が可能ということは、マーケットの認知を高め反応を知りたいという思惑があるのだろう。つまりGR部門としては、Mコンセプトの市販化はありと考えていることがうかがえる。
ふたつの技術的な注目点
Mコンセプトに搭載される技術には大きくふたつの注目点が挙げられる。
ひとつはもちろんトヨタとしては初めてとなる、リアミッドシップ4WDのメカニズムだ。GRヤリスが搭載する電子制御多版クラッチを用いたGR-FOURを単純に逆さにレイアウトするという手段も考えられるが、後に触れるエンジンやミッションのマウント位置を最適化するために、一旦駆動軸をエンジン後方に導いてから規格品のチェーンを介して前軸へとドライブシャフトで繋ぐという方式を採用している。

トヨタ初となる、リアミッドシップ4WDを採用する。 トヨタ自動車
もちろん開発車両ゆえ後の仕様変更も十分考えられるが、GRヤリス全般の開発を担当する齋藤尚彦チーフエンジニアによれば、メカロスや耐久性といった項目については想定以上に好結果が出ているという。
もうひとつは現時点で搭載されているG20系4気筒ユニットだ。
これはトヨタが2024年にマルチパスウェイ戦略の一環として発表した次世代内燃機関で、ショートストローク化やシリンダーヘッド内で排気を収束する設計を採用、体積や全高を従来のT24系2.4Lターボに対して10%程度低減しながら、600ps級のパワーアップも想定しているという。
エンジン本体、特に背丈を小さくする理由のひとつは、BEV専用として開発されているノーズのコンパクトなアーキテクチャーとの組み合わせを将来的な選択肢として残しておきたい、そんな思惑があるからではないかと個人的には推している。
一方でストロークを短縮するとなればボア側を小さくする、つまり幅側を縮めることは難しい。それを更に後軸の内側に低く置くためには、前軸への駆動伝達も前述のような工夫に迫られたということだろう。
なるべく小さく軽く仕上げたい
齋藤さんは同様に幅側の制約がリアサスの形式にも及んでいることを明かす。ダブルウイッシュボーンやマルチリンクなどは重量も嵩み幅も要するということで、なるべく小さく軽く仕上げたいというMコンセプトの趣旨とは相容れない。
ということで試作車では敢えてストラットとして全幅、すなわちリアトレッドをGRヤリスのプラス50mm程度に収めているという。そこから推するに現時点での全幅は1850mm前後ということになるだろうか。

GRヤリス全般の開発を担当する齋藤尚彦チーフエンジニア。 トヨタ自動車
試乗コースとなったのは、トヨタテクニカルセンター下山の第三周回路だ。他施設に先駆けて2019年から運用を始めているこのコースは、山中の地形を活かしてニュルブルクリンクと同質の過大な入力が連続的に掛かるよう設計されるなど、メーカーの施設としてその厳しさは世界的にも屈指のものとなっている。
同乗のドライバーを務めてくれるのは大嶋和也選手と佐々木雅弘選手だ。共にGRブランドのレース活動にも携わりながら、GRヤリスの開発にも関与している。
そんなふたりであっても、コースをいつでも限界域で走れるわけではない。開発のための課題の炙り出しやその再現のために定常的で正確な周回を求められることもある。それがメーカーの車両開発における実験走行の大義だ。
この日はそういう縛りは一切なしということで、両ドライバーも心なしか伸び伸びとクルマを走らせているように感じられた。
*『GRヤリスMコンセプト』を渡辺敏史が取材(後編)に続きます。
