「花手水」発祥の地・柳谷観音楊谷寺で満開のアジサイと花手水に癒される 空に浮かぶ傘のアートも圧巻
楊谷寺(ようこくじ)は、806(大同元)年、清水寺を開山した延鎮僧都が創建。天皇家との縁も深く、弘法大師空海が祈祷した独鈷水(おこうずい)は、眼の病に霊験あらたかと信仰を集め、柳谷観音(やなぎだにかんのん)の名で親しまれています。アジサイや紅葉の名所であり、近年では、手水舎や手水鉢に美しい花を浮かべて参拝者を迎える花手水(はなちょうず)の発祥地として知られています。6月1日から始まった「あじさいウィーク」に合わせて取材に訪れました。

西山の斜面に位置する楊谷寺
山門をくぐって左手にある手水舎の「龍手水」。柄杓を掛ける竹を仕切りにして、境内に咲いているアジサイなど、彩り豊かな花が浮かべてあり、咲き誇る花の美しさと、龍の口から流れる水音に心身ともに癒されます。

手水舎に季節の花を浮かべた龍手水
お清めを終え、本堂へお参りします。十一面千手千眼観世音菩薩(秘仏)の御本尊に手を合わせて、ご祈願します。眼病平癒で参拝される方は、独鈷水堂で弘法大師の霊水を汲んで、本堂の棚に置いて御本尊のお力をいただいている間に、境内を参拝するのがおすすめです。

十一面千手千眼観世音菩薩を安置する本堂

弘法大師の霊水。眼病やがん封じで祈祷される方も
庭園の手水鉢に落ちた椿を入れたのが花手水のはじまり
花手水を始められたのは2017年頃。住職に就任された日下俊英さんの「参拝される皆さまに、不安な現代にご利益と共に五感を通じて心に平安を」との思いを聞いて、妻で執事の日下恵さんが、名勝庭園「浄土苑」に花を増やせないかと考えました。しかし、京都府指定名勝のため、勝手に手を加えることはできません。
「庭園の手水鉢に庭に落ちていた椿の花を浮かべたら、水面をゆらゆらと漂って、すごくきれいで感動したんです」と恵さん。写真をSNSにアップしても数件の反応しかなく、それでも定期的にお花を浮かべました。

名勝庭園「浄土苑」に置かれた手水鉢
2年ほど過ぎたある日、赤、橙、黄、緑のグラデーションで紅葉の葉を浮かべた写真についた「いいね」の数が10万件、リツイート4万件を超えました。さまざまなネットニュースでも紹介され、北海道から九州まで、全国から手水鉢の花を見にくる参拝者が訪れるようになりました。

この手水鉢に花を浮かべたのが花手水のはじまり
花手水は、水のない野外で神事を執り行うとき、花草の露で手を清めることを意味するそうです。「そのことを後に住職から教わりましたが、手水鉢や手水舎に花を浮かべる花手水が広まりすぎたので、本来の意味も知ってほしいです」と恵さん。

水琴窟の音を聞くことができる琴手水
境内には、手水舎の「龍手水」、涼やかな音に心が静まる水琴窟の「琴手水」など5つの花手水があります。参拝者に人気の「恋手水」は、浮かべた花でハートの形にしたデザインが話題になったことで、その名を付けたそうです。実はこれを手がけたのは、忙しい恵さんに代わって手がけた日下住職なんだとか。まさに奥様への思いを形にされたのかもしれません。

日下住職がハートを作った恋手水。写真は取材時のもの
山に空に満開のアジサイを愛でる「あじさいウイーク」
楊谷寺では、6月1日から30日まで「あじさいウイーク」を開催しています。京都でも最大規模を誇る、約5000株のアジサイが植わり、梅雨から初夏にかけて、青、紫、ピンク、白、緑など、美しい姿を見せてくれます。境内は斜面に広がり、木々の陰になるところなど、アジサイの生育環境が異なるため、いつ参拝してもどこかで、満開のアジサイを鑑賞できるそうです。

あじさいの花階段では、龍が天に昇る様子を表現
あじさいウイークの期間中は、上書院が特別一般公開されます。三層のそれぞれから異なる景色を楽しむことができ、二層から見下ろす浄土苑の眺めは素晴らしく、6月19日から全国公開される映画「黒牢城」のロケ地に使われたほど。また三層には専用の机が用意されていて、スマホを置いて撮影すると、窓の外の景色が机に映り込んだリフレクションの写真を撮ることができ、フォトスポットとしても人気です(上書院は拝観料1000円)。

映画やCM の撮影にも使われた上書院

用意された机に映るリフレクションの写真が撮影できる
本堂から奥之院へ向かう心参道(ハートの小径)は、アジサイと紅葉に囲まれています。空を見上げると、50本のアジサイ柄のビニール傘が風に揺らぎ、空にも満開のアジサイが咲き誇っています。2023年から始まり今回で4回目となるスカイアンブレラは、フェリシモの紫陽花傘を使っていて、傘越しに空、青紅葉、庭園など、見る位置によって異なる景色が楽しめます。どんよりした曇り空のほうが逆光にならず、アジサイ柄が美しく見えて、きれいに撮影できるので、雨の日の参拝もおすすめです。

空にアジサイが満開のスカイアンブレラ

花手水のようなかわいいお守りや御朱印も人気です
紹介施設概要
[名称]柳谷観音 楊谷寺
[住所]京都府長岡京市浄土谷堂ノ谷2
[電話番号]075-956-0017
[受付時間]9時〜17時(最終受付時間16時半)
[拝観料]500円(ウイーク期間は1000円)
[交通]阪急京都線長岡天神駅・西山天王山駅・JR京都線長岡京駅からタクシーで10〜15分程。毎月17日の縁日のみ、阪急京都線西山天王山駅東口、JR京都線長岡京駅西口の2カ所からシャトルバスが発着。運賃片道500円
[HP]https://www.yanagidani.jp/
文・写真/寺田鳥五郎
テラダ・トリゴロウ。京都精華大学美術学部(現・マンガ学部)卒業。ココロ株式会社代表取締役。1968年、京都生まれ。タウン誌編集者、地方新聞記者、フリー編集ライターを経て、編集デザイン会社を設立。「人に歴史あり」を信条に取材を重ね、その人の魅力を伝えることを心がけている。
