岩手県北上市にあるキオクシアの北上工場=キオクシア提供

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 半導体大手キオクシアホールディングス(HD)の時価総額が、一時トヨタ自動車を抜いて2位となったのは、AI(人工知能)の普及でデータセンター向けの半導体需要が増え、好業績が続いているためだ。

 ただ、記憶媒体となるメモリー半導体では、数年ごとに好不況を繰り返す傾向があるため、巨額の設備投資を続けられる成長を維持できるかどうかが課題となる。(鈴木瑠偉、杉本要)

過去最高

 キオクシアHDの業績は好調だ。2026年3月期連結決算国際会計基準)では、売上高が前期比37・0%増の2兆3376億円、本業のもうけを示す営業利益が前期比92・7%増の8703億円で、共に過去最高となった。

 さらに、26年4〜6月期は、営業利益が前年同期比28・9倍の1兆2980億円になると見込む。好業績が1年間続くとすると、トヨタの27年3月期の営業利益の予想(3兆円)を上回る。24年12月の上場時は約8000億円だったキオクシアHDの時価総額が、3日に一時、50倍超の45・4兆円となり、トヨタを逆転したのは、この勢いを市場が好感したためとみられる。

 1日に時価総額が国内首位となったソフトバンクグループの場合、出資先の米オープンAIの株式上場計画への期待などから株価が上昇した。一方、キオクシアHDは、メーカーとしての実業が評価されている。半導体業界の関係者は「キオクシア株の急伸はAI関連企業の好調を象徴する出来事だ」と話す。

データセンター

 半導体業界では、AIの普及でデータ処理量が増え、データセンターの新増設が進んだことで好況が続く。データセンターでは、キオクシアHDが手がけるNAND型フラッシュメモリーのほか、短期の記憶を担うメモリー半導体のDRAM、計算処理を担うGPU(画像処理半導体)などが使われる。DRAMはサムスン電子やSKハイニックスなど韓国勢、GPUは米半導体大手エヌビディアが得意としている。

 一方、NAND型フラッシュメモリーは、データの処理速度は遅いものの、大容量で長期保存に向く。そのため、AIが回答を導く際に使う大量のデータの保存に適しているとされる。生成AIが普及し、AIが膨大なデータを基に回答を導くようになったことから、需要が一気に増えた。

先行き警戒も

 キオクシアHDは、28年までのNAND市場が年平均22%成長すると見込む。太田裕雄社長は2日の投資家向け説明会で、半導体メモリーを作る北上工場(岩手県)での新工場棟の建設について「議論をスタートする」と述べた。また、長期の供給契約を求めるIT事業者が複数いるとして「市場がまだまだ強い裏付けだ」と自信を見せる。

 一方、メモリー半導体では、3〜4年周期で好不況を繰り返す「シリコンサイクル」と呼ばれる循環がある。現在は、需要の急拡大で「谷」が小さくなる「スーパーサイクル」に入ったとの見方もあるが、先行きへの警戒感も出ている。

 米調査会社オムディアの南川明氏は、各社の設備投資により、27年後半には需給のバランスが改善するとの見通しを示したうえで「キオクシアの好業績は約半年で3倍になった製品の単価上昇が影響した。適切な設備投資で生産コストを下げることで、市況が悪化しても利益を出せるようにする必要がある」と述べた。

東芝、債務穴埋めで売却

 キオクシアHDは、2017年に東芝がメモリー半導体事業を分社化し、東芝メモリの社名で発足した。東芝は当時、15年に発覚した不適切会計問題の影響で経営危機に陥っていた。

 NAND型フラッシュメモリーを世界で初めて開発した東芝にとって、メモリー半導体事業は成長が期待できる事業の一つだった。しかし、既に白物家電や医療機器などの事業を売却していたため、巨額の債務超過の穴埋めに事業売却が避けられない状況だった。

 結局、メモリー半導体事業は18年に米投資ファンドのベインキャピタルや韓国の半導体大手SKハイニックス、日本のHOYAによる日米韓連合が2兆円で買収、19年にはキオクシアHDに社名を変更した。東芝は現在、持ち株比率が16・10%の株主となっている。

 キオクシアHDはその後、設備投資や研究開発に充てる資金を調達するため、東京証券取引所への上場を目指した。しかし、市況の悪化で23年3月期から2期連続で最終赤字となるなど業績が悪化し、延期を繰り返した。一方、24年12月の上場後は、好調な業績が続いている。