銀河の育ち方は初期宇宙の頃から“住む場所”で違う? 約126億年前の原始銀河団の観測結果
国立天文台ハワイ観測所の特別客員研究員Ronaldo Laishram氏を中心とする研究チームは、約126億年前の宇宙に存在した大規模な「原始銀河団」の観測結果をもとに、銀河の成長はこの頃すでに銀河が密集する環境の影響を受けていたことが明らかになったとする研究成果を発表しました。
今回の研究は、銀河の運命は初期宇宙の段階で“住む場所”に左右されていたことを示す、画期的な成果と受け止められています。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。
銀河の進化を左右する「環境効果」はいつ始まったのか?
現在の宇宙では、銀河は均等に散らばっているわけではなく、数百から数千の銀河が集まる巨大な「銀河団」を形成しています。こうした銀河団の中に存在する銀河は、孤立して存在する銀河に比べて星形成が止まりやすいなど、性質が異なることが知られています。
このように、周囲の環境によって銀河の成長過程が変化する様子は「環境効果」と呼ばれています。しかし、この環境効果が宇宙の歴史のどの段階から現れ始めたのかは、天文学における大きな謎のひとつでした。
ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた「銀河の育ち方」の違い
研究チームは今回、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC」による広域探査で見つかった、約126億年前(ビッグバンから約12億年後)の宇宙に存在していた原始銀河団(銀河団へと成長する銀河の集団)に注目しました。インドのロクタク湖に浮かぶ島々のように4つの銀河集中域からなる構造を持つことから、この原始銀河団は「ロクタク原始銀河団(Loktak protocluster)」と名付けられています。

研究チームはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で取得したデータを使用して、ロクタク原始銀河団の銀河および同時代の平均的な環境にある銀河の構造を比較しました。遠方の宇宙から届く電磁波は宇宙の膨張にともなって波長が引き伸ばされるため、当時の銀河から放射された可視光線や紫外線は、太陽系へ届く頃にはどちらも赤外線になっています。そのため、当時の銀河の様子を探る上で、赤外線観測に特化したウェッブ宇宙望遠鏡は重要な役割を果たします。
論文によると、星が形成されている領域を示す「もともとは紫外線」のデータで銀河のサイズを比較したところ、環境の違いによる大きな差はみられませんでした。しかし、過去からその時点までに形成された星全体の分布を示す「もともとは可視光線」のデータでサイズを比較したところ、銀河が密集した環境である原始銀河団に存在する銀河のほうが、平均的な環境の銀河と比べて約40%も大きいことが明らかになりました。
この違いは、新しい星を形成する活動のレベルは同程度であっても、密集した環境にある原始銀河団の銀河のほうが、星の分布が銀河の外側に向かってより速く広がっていったことを示しているといいます。

銀河の姿は初期宇宙の頃から「住む場所」で決まる?
今回の発見は、銀河団という巨大構造が完成するずっと前の段階で、銀河の進化がすでに環境の影響を受けていたことを明確に示すものとなりました。銀河の進化は初期宇宙の時代から、銀河そのものの質量など内部の条件だけで決まるのではなく、「どこにいるか」という外部の条件にも左右されていたことになります。
研究チームは今後について、すばる望遠鏡の超広視野多天体分光装置「PFS」や次世代広視野光学装置「ULTIMATE-Subaru」、それにウェッブ宇宙望遠鏡による追加観測を組み合わせることで、この環境効果が初期宇宙において一般的な現象なのか、それともロクタク原始銀河団に特有の効果なのかが明らかになることに期待を寄せています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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