NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年5月19日付で、小惑星探査ミッション「Psyche(サイキ)」の探査機が、2026年5月15日に火星スイングバイを完了したことを発表しました。


本番に向けた搭載機器のテストも実施

NASAによると、Psyche探査機は火星表面から約4609km(2864マイル)を通過し、推進剤を消費することなく加速と軌道面の調整を成功させました。


Psycheミッションの最終的な目的は、火星と木星の間にある小惑星帯(メインベルト)に位置する、金属に富む同名の小惑星「16 Psyche(プシケ)」を詳細に探査することです。プシケには2029年8月に到着し、様々な高度で周回しながら観測を行う予定です。


NASAによれば、今回の火星最接近時およびその前後の期間において、Psyche探査機は単に通過するだけでなく、多波長撮像カメラ(マルチスペクトル・イメージャー)、磁力計、ガンマ線・中性子スペクトロメーターといった、すべての観測機器を起動しました。これは、目的地である小惑星への到着を見据えた、機器のキャリブレーション(較正)およびテスト運用を兼ねた重要なプロセスとして実施されています。


ユニークな火星画像の取得と軌道の確定

今回の火星スイングバイでは、科学的にも興味深いデータがもたらされました。


撮像機器の責任者を務めるアリゾナ州立大学(ASU)のJim Bell氏によれば、Psyche探査機は火星を珍しい角度から観測し、多数の画像を取得したといいます。


【▲ 2026年5月15日にPsyche探査機のマルチスペクトルイメージャーで撮影された三日月形の火星(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)】

この画像はそのひとつで、大気中の塵による強い光の散乱によって、通常よりも明るく広がった「三日月形の火星」です。


Bell氏によれば、探査機は高い位相角(太陽・目標天体・探査機のなす角度が大きい状態)から火星に接近したため、珍しい視点からの画像を多数取得できたといいます。また、今後小惑星プシケで使用される画像処理ツールのテストを行う上で、今回得られた膨大なデータセットが大きく貢献するとも語っています。


また、JPL(NASAジェット推進研究所)のナビゲーションリードであるDon Han氏によれば、NASAのディープスペースネットワーク(DSN: 深宇宙通信網)を通じたドップラー信号のリアルタイム解析も行われました。その結果、探査機が時速約1600km(1000マイル)ぶんの加速を得て、太陽に対する軌道面が約1度変更されたことが無事に確認されています。


【▲ 火星スイングバイ時にPsyche探査機のマルチスペクトルイメージャーで撮影されたホイヘンス・クレーター(右上)。色は違いを明確にするために強調表示されていることに注意(Credit: NASA/JPL-Caltech/ASU)】

プシケ到着に寄せられる期待

幅約280kmの小惑星プシケは、初期の惑星を形成した「微惑星」の金属コア(核)の一部が露出した姿ではないかと考えられています。


探査機の火星スイングバイ成功を受けて、Psycheミッションの主任研究員を務めるカリフォルニア大学バークレー校のLindy Elkins-Tanton氏は、地球のような岩石惑星の直接探査することができない内部構造を理解するうえで、このミッションが他に類のない貢献を果たすことが期待されると語っています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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