3日間犬が車内放置され警察出動事例も…杉本彩が指摘、猛暑の中子どもやペットの命を奪う「ちょっとだけなら」の甘えと油断

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「窓も閉め切りで、ずっと鳴き続けているけど大丈夫なのかな……」

GW中の5月4日、都内の大型スーパーの駐車場で編集部スタッフMは、隣に停まっている車の助手席に小型犬が乗っていることに気づいた。この日は蒸し暑く、車に搭載されている温度計を見たら外気温は31度。犬がいる助手席には直射日光が当たり、犬は鳴き続け体力も消耗している様子……。Mが運転席にいる夫と「どうしようか、心配だね……。お店に伝えた方がいいよね!?」と話していると、カートにたくさんの荷物を載せて、隣の車の持ち主が戻ってきた。飼い主が戻ってきたことに安堵はしたものの、あれだけの量の買い物は10〜15分では終わらない……。相当な時間犬を車内放置していたことは予想でき、モヤモヤが止まらなかったと話していた。

「桜の季節が終わったとともに夏日がやってくるようになりました。子どもの車内放置が社会的に大きな事件となったように、犬や猫などのペットの車内放置も問題になっています。『すぐに戻るから』の油断が大きな問題を起こす可能性があることを知ってほしいですね」

こう語るのは、長野県松本市の繁殖事業者の事件など、動物虐待事案の告発や、動物福祉向上に関する普及啓発活動を積極的に行っている『公益財団法人動物環境・福祉協会Eva』の主宰でもある俳優の杉本彩さんだ。杉本さんの団体では過去に、車内に放置された犬の救出に関する依頼が来たことがあった。

杉本さんが自ら執筆し、動物に関する問題を伝える連載『猫と犬と、動物と 』の15回目では、この「犬猫の車内放置」問題について執筆いただく。

以下より、杉本さんの執筆です。

名称がつくほど「40度以上」が当たり前に

2026年4月、気象庁から、最高気温が40度以上の日の名称を「酷暑日」に決定したという報道があった。これは、2月27日から3月29日にかけて気象庁のホームページでアンケートが実施され、それをもとに定められたものである。

また、2026年の暑さの見通しも、気象庁はじめさまざまなところから発表されている。今年の夏も、昨年に続き平年に比べ高くなるそうだ。しかも40度以上の「酷暑日」は全国で延べ7〜14地点になると予想されている。ちなみに2025年は、30地点もあったというから驚きだ。昨年の最高気温は、群馬県の伊勢崎市で41.8度。静岡市も41.4度を観測した。さらに北海道の帯広市では、40度に迫る暑さで帯広駅前にある大型の温度計が暑さに耐えられず、表示が消えてしまったという報道もあった。今年も猛暑、酷暑を覚悟して、熱中症対策とこまめな水分補給で、猛烈な暑さに十分備える必要がある。

そして、この時期になると必ず起きるのが、子どもの車内置き去りといった痛ましい事件だ。一般車両でも車内置き去りによる死亡事故は毎年のように起きているが、2022年に起きた通園バスにおける園児の置き去りによる事件も記憶に新しい。亡くなった女の子の水筒は空になっていて、しかも暑さから衣服を脱いだ状態で倒れていたそうだ。小さな子どもが一人車内に取り残され、どれだけ暑く苦しかっただろうと胸が締め付けられる。

閉め切りの車内温度はあっという間に上昇

自動車部品などを扱う複合型専門商社「三洋貿易」が2023年に行った調査(※1/アンケート実施2023年 5月末〜6月初め)によると、1年以内に子どもを残したまま車を離れた経験がある人は20.4%いることがわかった。その中の5.1%の子どもに、めまい、顔のほてり、体温が高いといった熱中症の症状が現れていたという。2022年に連日報道された通園バスにおける園児の置き去り事件があったにもかかわらず、車内置き去りの経験の減少は前年比に比べてわずかなものだった。

だが、JAF(日本自動車連盟)が実施した検証テスト(※2)では、気温35度の炎天下に駐車した車内では、直前までエアコンが作動していても、窓を閉め切った状態でエンジンとエアコンを停止すると、わずか15分で暑さ指数(WBGT、熱中症指数ともいう)が31度以上に上昇した。これは、熱中症の発生リスクが極めて高い状態で、人体にとって「危険なレベル」とされる。「すぐ戻ってくるから大丈夫」と、買い物をしてレジ待ちをするたった15分の間に取り返しのつかないことになる……。

この現実を知れば、いかに置き去りが危険かわかる。しかも、「すぐに戻る」気持ちでいても、レジやトイレが混んでいて予定よりも戻るのが遅れたり、“ついつい”で時間が過ぎてしまうこともある。15分などあっという間だ。「人の時間に対する観念などいい加減だ」という意識を持つことも必要なのだろう。

万が一、外出先の駐車場で、車内に子どもが置き去りにされているのを見たら、迷わず通報と救出が必要だ。そして、車に子どもを置き去りにする行為は、子どもを危険な場所に放置することとし、「刑法第218条」の「保護責任者遺棄等罪」で、3月以上5年以下の拘禁刑を科せられることもある

※1:三洋貿易、「子どもの車内置き去り実態調査 2023」

※2:真夏の車内温度(JAFユーザーテスト)

3日間も犬が車内放置された事例

そして置き去りは子どもだけではない。JAFでは高齢者やペットなども車内に残して車から離れることは決してしないよう注意を呼びかけている。ペットの車内閉じ込めは、過去に私たちが運営する協会にも通報があり、実際にスタッフが現地に行き対応したことがある。

数年前の出来事になるが、3月中旬東京都内のコインパーキングの車内に、3日前から犬2頭が閉じ込められているとSNSで拡散されていて、それを見た方が私たちの協会に通報してきたのだ。都内で近かったこともあり、すぐに駆け付け現地を確認した。

1頭の柴犬は前足をダッシュボードやドア窓にかけたりして、よく動き外に出たそうな様子だったが、もう1頭のとても小さい犬は、助手席のシートにうずくまっていた。車内に水や餌があるかどうかもよく見えず確認できない。フロントガラスには「!!警告!! 2日以上の長期駐車は出来ません。3月15日までに清算と出庫をお願いします」と書かれた2枚の紙がワイパーに挟んであった。やはり数日間車内に置き去りになっていたのだと確信した。

その後、大急ぎで警察や行政機関、その他さまざまなところに働きかけたが、たらい回し状態でなかなか事態が動かない。SNSを見て心配してやってきたという人も次第に増えてきた。中には「警察に捕まってもいいから窓ガラスを割って犬を助けたい」とバールを持った男性も現れた。近くで活動している愛護団体さんや都議会議員も駆けつけてくれて、各所に掛け合ってくれ、夜間の保護に備え獣医師も手配してくれた。

その後も警察との押し問答が繰り返され、時間を追うごとに警察車両が増え規制線が張られ、車の周りをたくさんの警察官が囲み、とうとう私たちは車に近づくことすらできなくなった。犬を案じる側と警察とのにらみ合いが続き、静かな住宅街がパトカーの赤色灯に照らされ、物々しい雰囲気になった。結局、私たちの協会スタッフが現場に到着してから約4時間半後、警察が飼い主に連絡が取れたことで最終的に犬たちは救出された。

犬の車内放置で書類送検された事例もある

犬が車内から救出された日は、3月で小雨も降っていたため3日経っても暑さの面では大きな問題はなかったが、翌日から気温がグンと上がる予報が出ていた。3月であっても最近は25度以上の夏日になることもある。

ましてや犬や猫は全身毛に覆われていて、人間と違って汗腺が足の裏などにしかないため、熱を外に逃がすことができない。そのため体内に熱がこもることから体温調節が難しく暑さにとても弱い。

JAFの実験では、今の時期多い快適な23〜24度の日中でも、車内温度は最高46.5度まで上がることがわかっているので、季節や天候に限らず、子どもやペットを「車内に置かない」は鉄則だ。

動物に関する法律においても、給餌給水をやめ、健康や安全を保持することが困難な場所に拘束し、衰弱させるなどの虐待を行った者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する、とあり、「動物虐待罪」の罪に問われることもあり得る

実際に、2025年9月には、炎天下の車内に高齢の犬を約4時間も放置した男性が、動物愛護法違反容疑で書類送検されるニュースがあった。ショッピングモールの駐車場の車内で、ぐったりしている犬を通行人が見つけ通報したのだ。この日の最高気温は34.4度。人間でさえ熱中症のリスクが高く厳重な注意が必要だというのに、車のエンジンを切った状態で車内に犬を放置したらどれだけ危険なことか、常識的に考えたらわかるだろう。

男性は「今までも犬を放置したままにしたことがあったから大丈夫だと思った」と発言したそうだ。犬は衰弱していたが、幸いにも動物病院で治療を受け一命を取り留めた。本来飼い主の責任とは、動物の命を預かる立場として、適正な給餌給水はもちろん、健康で安全な管理を行うことだ。また社会や近隣に迷惑をかけない社会的責任も同時にある。その責任が果たせない人は飼い主になるべきではない。

子どもやペットを守れるのは我々大人たちだ。近年の季節を問わない異常な気象をふまえ、不注意や判断ミスによる悲しい事故が起こらないように、常に子どもや高齢者、動物など、サポートを必要とする側の目線になって判断してほしい。「今までも大丈夫だった」「短い時間だから」という自分都合の価値判断がいかにいい加減なものなのか……、ちょっとした油断が過去の悲しい事件が引き起こしていることを心に刻んでほしいと思うのだ。

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