紙の帳票、ファクスでやりとり…物流の課題デジタルで解決 Hacobuの佐々木太郎社長
物流の世界では、紙の帳票やファクスのやり取りなど、古い商慣習が効率の悪さにつながっている。
深刻な人手不足で、2030年には3割の荷物が運べなくなるという試算もある。
4月には改正物流効率化法が施行され、年間9万トン以上の貨物を取り扱う特定荷主には、全体を統括するCLO(物流統括管理者)の設置が義務づけられた。
この業界に飛び込んだ元コンサルタントの佐々木太郎氏(49)は、2015年に「Hacobu(ハコブ)」(東京都港区)を創業した。デジタル技術を活用し、物流の課題解決を進めている。
■不透明な多重下請け構造
−−物流を変革する会社を設立した理由は何か。
「10年前、乳製品の卸会社の経営を見ている時に、BtoBの企業間物流を知った。宅配の市場規模に比べて10倍の大きさがあるのに、非常にアナログで驚いた。アクセンチュアで働いていた頃、ITを扱っていたので、何かできるのではないかと考えた」
−−当時の物流はどんな状態だったのか。
「房総半島の先まで、トラックが牛乳1本を届けていた。紙の帳票や電話の連絡、メールのコミュニケーションが中心なので、そもそもどのトラックに何が載っているかがわからない」
「配送先から商品が届いていないと言われて、ドライバーに電話をしても運転中で出られず、わからないとしか答えられない。情報が集約されておらず、ブラックボックスみたいな状況だった」
「やり取りがアナログなだけでなく、間に何社もの会社が入っていて、どこから届いた依頼なのかがわからない。危ない案件もあったりして、運送会社は『取捨選択しないといけない』と話していた」
−−多重下請け構造が問題視されている。
「物流には、トラックを持たず、荷主と運送会社の間に立って手配を行う仲介業者がいる。貨物利用運送事業者を指し、水屋とも呼ばれる。会社を始めた頃に、貨物利用運送免許を取得してこの領域の業務に携わったことがある」
「運送会社に支払いをして、上流の仲介事業者に請求したのに、入金されないことがあった。法的手続きをして勝訴したが、差し押さえの対象が特定できず、実態を確認できなかった。似たような経験が二度あり、多重下請け構造には、責任や支払いの所在が見えにくくなる側面があって、取引の透明性が重要だと痛感した」
■経営資源を予約システムへ
−−現在の業務内容を教えてほしい。
「Hacobuを設立した当初から、物流のデータを蓄積するとインフラの効率化が図れるという仮説を立てていた。それが最初にうまくいったのは、予約受付システムの『MOVO Berth(ムーボ・バース)』だ。トラックや物流センターが無駄な荷待ちをしないで済む」
「当社はこのシステムで2番手、3番手の後発組だったが、経営資源を大胆に投入した。小売りの大手に使ってもらうと、商品を納めるメーカーも入れざるを得ない。『オセロの角戦略』と名付けて進めてきた」
「『MOVO Fleet(ムーボ・フリート)』は、トラックにGPSを搭載してもらって位置情報を把握する。商品をどのように、エリアで最適化するにはどうすればいいかがわかる」
「『MOVO Vista(ムーボ・ビスタ)』は荷主が運送を発注する時に、電話やファクスではなく、共通のシステムで統一するサービスだ。法改正で、元請け会社は運送管理簿を作らねばならず、荷主もどのように荷物が運ばれているかを把握しなければならなくなった。多重下請け構造を明確化しなければならないことも追い風になっている」
■発言できる経営層をCLOに
−−CLOの設置が義務化された。企業は何を意識すればいいのか。
「経営の中できちんと発言できることが大事だ。そこまで物流に詳しくなくてもいい。複数の事業を束ねているような会社ならば、横串を通せる社内にネットワークを持っている人をあてるべきだ」
「物流はサプライチェーンマネジメントの一環なのだが、これまでのポイントは生産や調達だった。最近は物流がボトルネックになってきて、これを解消しなければいけないと考えるようになった。まだ、気づいていない経営層も多い」
−−今後はどんなことに力を入れたいか。
「物流業界は、気合と勘と努力の『KKDロジティクス』だったのが、データを取り入れるデータドリブンの『DDLロジティクス』に替えなければいけないと言ってきた。次はAIを活用した『ADLロジティクス』だ。たくさんのデータを集めたら、これをAIに分析してもらう。データが多いほど生産性を上げる提案ができる」
「データを活用するには、現場を理解する力が大事だ。当社はすでに何千もの拠点があり、顧客も1000社を超えた。ネットワークを生かして課題解決のために、AIを活用していきたい」
佐々木太郎氏(ささき・たろう)
2000年慶大法卒。アクセンチュアなどを経て、09年米カリフォルニア大ロサンゼルス校アンダーソン経営大学院修了。15年にHacobuを創業し、社長CEO(最高経営責任者)。
