中国版Netflix、新作映画の大半をAI制作へ。AIコンテンツは動画配信を席巻するのか
「中国版Netflix」とも呼ばれる中国の大手動画配信サイト「iQIYI」が、新作映画やテレビ番組の大半をAIで制作する計画を明らかにしました。早ければこの夏にも、商業的成功を狙う完全AI生成映画の公開を目指しているといいます。
Bloombergによると、iQIYIのCEOであるGong Yu氏が年次コンテンツ発表会でこの方針を説明しました。あわせて発表されたのが、脚本執筆から最終レンダリングまで、映画制作の各工程を自動化できるという「Nadou Pro」と呼ばれるAI制作ツールです。Naou Proは、中国国内向けにはアリババとTikTokで知られるByteDanceのAIモデルを、海外向けにはGoogle Veo 3.1を活用するとのこと。
同社はこのNadou Proを使い、完全AI生成の映画で商業的成功を収めることを目標に掲げています。Bloombergによれば、iQIYIの初期ラインナップには、すでに生成AIで制作された16本のSF映画とアニメ映画が含まれているとのことです。
ショート動画では人気のAI動画
ここ1年で、生成AI動画はインターネット上のあらゆる場所へ広がりました。不気味なほどリアルな動物動画や、しゃべる果物たちのラブコメを描いたTikTok動画まで、ショートAI動画コンテンツは人気を集めています。
ただ、こうした人気が映画やドラマのような長編作品へそのままつながるかどうかは、正直まだ見えていない状況でしょう。1から10まで完全に生成AI制作した長編作品で、商業的にも成功し、多くの視聴者を惹きつけたものはまだ登場していません。
ハリウッドやNetflixでもAI活用への動き
それでも企業側は、この流れを見逃していません。今年初めには、Rokuの創業者兼CEOのAnthony Wood氏は、「100%生成AIの初のヒット映画」が今後3年以内に公開されるとの見方を示していました。こうした予想に応えるかのように、映像業界の大手を取り巻くAI事情も変化してきています。
たとえば、現在ハリウッドではAIへの投資は進んでいます。YouTubeは、昨年9月にコンテンツ制作向けのAIツールを導入。Netflixも昨夏、生成AIによるVFXシーンをコンテンツで正式に使い始めたと発表しており、確認されている最初の例はアルゼンチンのSF作品『エテルナウタ』だとされています。
またAmazon MGM Studiosも、映画・テレビ制作向けAIツールを開発する社内チームを立ち上げ、現在はそのツールをクローズドベータ版として公開していると報じられています。
さまざま分野で広がるAI活用
一方で、業界内の反応は割れています。AIの台頭に警戒感を示す関係者がいる一方で、積極的に取り入れる動きもあります。
たとえば、公開予定のインディー映画『As Deep As The Grave』には、死後にAIによって生成されたヴァル・キルマーが出演。マシュー・マコノヒーやマイケル・ケインといった大物俳優たちが自身の声をAI企業へ提供するといった動きもありました。さらに、女優のナターシャ・リオンはAI制作スタジオ「Asteria」を共同設立し、生成AIを活用した長編映画『Uncanny Valley』を制作しています。
ほかにも『ブラック・スワン』や『レクイエム・フォー・ドリーム』などで知られるダーレン・アロノフスキー監督も、今年初めに独立戦争を題材とした生成AIによるYouTubeシリーズを公開しました。
映像コンテンツ×AIのお金の話
実にさまざまな導入事例や活用方法がありますが、現時点でその成果は未知数といえるでしょう。まず、生成AI動画には非常に大きなコストがかかります。OpenAIは先月、動画生成AIアプリの「Sora」を終了させました。財務負担の軽減が背景にあるとも伝えられています。これにより、ディズニーによるOpenAIの動画生成分野への10億ドル投資も事実上終了したとされています。
もうひとつの問題は、視聴者がお金を払うかどうかです。TikTokやInstagramリールのように無限スクロールのフィードで観るショート動画では、AIコンテンツをおもしろいと感じるかもしれませんが、動画配信サイトのサブスク料金や映画館のチケット代を払ってまで観たいかは別問題です。
AIへのイメージはまだ微妙
また、人々のAIへの視線も厳しいのが現状です。NBC Newsが先月実施した世論調査では、回答者のおよそ半数がAIに対して否定的な感情を抱いていると答えました。
企業や業界のAI活用の波に対し、若干の温度差を感じますね。たしかにAI映画の時代は近づいているのかもしれません。ただ、なにより求められるのはやはり「おもしろい作品」でしょう。映像・映画×AIというテーマはまだまだ動向を見つめる必要がありそうです。

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