なぜ巨大タンカーは「鉄」で高速船は「アルミ」なのか? よく使われる船の素材を紹介【眠れなくなるほど面白い 図解 船の話】
船は種類に応じてさまざまな素材が使い分けられている
素材の特性が左右する船の性能
船の性能は、どんな素材でつくられるかによって大きく変わります。強度を重視するのか、軽さを優先するのか、あるいは加工のしやすさを求めるのか。素材の選択は、船の性格そのものを決める重要な要素といえるでしょう。
まず、一般的な素材として挙げられるのが鋼です。鉄の一種ですが、高い強度と衝撃への強さを備え、大型船の船体に適した素材として長く使われてきました。大量輸送に必要な強度を確保できるため、タンカーやコンテナ船では欠かせません。しかし重量があり、速度重視の船には向きにくい面があります。
そこで軽量化が求められる高速船では、アルミニウム合金が利用されることがあります。鋼より軽く加工しやすいため、複雑な構造をつくりやすいのが利点です。ただし衝撃や高温に弱く、使える船の大きさには制限が生じます。
さらに、FRP(繊維強化プラスチック)も広く普及しています。軽くて錆びず、自由な形状をつくることができるため、漁船や小型旅客船、プレジャーボートで採用されているようです。ただし、鋼やアルミニウム合金に比べると強度が高くないのが課題点です。
このように素材は、船が何を重視するのかによって使い分けられます。素材選択が、船の性能を根本から左右するのです。
よく使われる船の素材
木
メリット・柔軟性がある
・加工しやすい
・比較的耐久性が低い
・水を吸い、腐るので小まめな手入れが必要
鋼
メリット・強度が高い
・リサイクルしやすい
・錆びやすい
・ある程度の重さがある
アルミニウム合金
メリット・軽くて加工しやすい
・錆びにくい
・やや強度に劣る
・耐熱性が低い
カーボンファイバー
メリット・非常に軽い
・強度が高い
・加工が難しい
・コストが高い
防水性があれば、どんな素材からでも船をつくることは可能です。船の役割や求める性能に合わせて、それぞれ適した素材が選ばれています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 船の話』監修:池田良穂
【監修者紹介】
池田良穂 (いけだ よしほ)
1950年北海道生まれ。大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程船舶工学専攻修了。同大学工学部船舶工学科助手、助教授を経て、同大学大学院海洋システム工学分野教授に就任。退職後、現在は大阪府立大学名誉教授、大阪公立大学客員教授。船舶工学研究活動に従事し、著作活動では船舶工学・海洋工学等に関するテーマで70冊あまり執筆。主な著書に『図解 船の科学』(講談社)、『基礎から学ぶ海運と港湾』(海文堂出版)、『船の最新知識』(SBクリエイティブ)、『船舶算法と復原性』(共著、成山堂書店)、『船のしくみ パーフェクト事典』(ナツメ社)などがある。
2023 年日本船舶海洋工学会「船舶海洋技術賞」受賞。雑誌、新聞等への寄稿も多く、日本における船舶の理解と認知度の向上に貢献したとして、2025年に国土交通大臣から「交通文化賞」を受賞。

