カルバン・クラインの検索数が急増した理由は? ドラマが生んだ文化的熱狂とD2Cの戦略的連携

記事のポイント
Huluのドラマが90年代の美学を再燃させ、カルバン・クラインの検索数や売上に大きく貢献している
ブランドの原点であるDNAを現代的に再構築した戦略が、ポップカルチャーの流行と見事に合致した
スポーツ選手や有名人の起用、試合入場時の衣装提供など、文化的な接点を活用し成長を加速させている
Huluのドラマが90年代の美学を再燃させ、カルバン・クラインの検索数や売上に大きく貢献している
ブランドの原点であるDNAを現代的に再構築した戦略が、ポップカルチャーの流行と見事に合致した
スポーツ選手や有名人の起用、試合入場時の衣装提供など、文化的な接点を活用し成長を加速させている
アパレル大手のPVHが、テレビのおかげで予想外の追い風を受けている。
同作はジョン・F・ケネディ・ジュニアの妻、キャロリン・ベセット・ケネディ時代のスタイルへの関心を再燃させ、それとともにカルバン・クライン(Calvin Klein)の1990年代の美学をも、よみがえらせている。「今、カルバンについて『ラブ・ストーリー』抜きで会話をするのは、ほぼ不可能である」と同氏は決算説明会で述べた。
ドラマシリーズのローンチタイミングは、ブランドの業績にとってこれ以上ないほど良いタイミングであった。PVHは第4四半期のガイダンスを売上高、営業利益、EPSのすべてで上回り、同四半期の売上高は24億9000万ドル(約3735億円)を記録した。
そして、ラーション氏が「カルバン・クラインとトミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)の両方で好調な勢い」と表現し、2026年に突入した。
ドラマを契機にカルバン・クラインの需要が急伸
カルバン・クラインは、その勢いをもっとも明確にリードするブランドとして台頭している。ラーション氏によると、ドラマの公開は、顧客のブランドに対する認識に変化をもたらした。
「番組がローンチされてから、カルバン・クラインの検索数が増加した。Eコマースのトラフィックも好調だ。消費者はアンダーウエアやデニムのような、カルバン・クラインの象徴的なアイテムを求めている」と同氏は述べた。「現在もっとも売れているデニムスタイルは90年代風のフィット感である」。
反響の規模は、PVH自身も想定外であった。「これほど世界中に、世代を超えて大きな反響を呼ぶとは、誰も予想できなかったと思う。世代を超えた関心の広がりを我々は目にしている」とラーション氏は述べた。
PVHにとって、いまは数年にわたるブランド再構築の集大成である。電話インタビューにて、ラーション氏はカルバン・クラインをコアアイデンティティを軸に再構築するために進めてきた取り組みについて言及した。
「我々は、1990年代にカルバンを文化と衝突させた原点のDNAに立ち返り、象徴的なDNAの100%を取り出し、それを100%現代的なものにするために懸命に取り組んできた」と同氏は述べた。
「『ラブ・ストーリー』のような作品のヒットと、ブランドの取り組みが、非常によいタイミングでシンクロした」。
90年代エディットがエンゲージメントをけん引
戦略の変化は、消費者がブランドの各カテゴリーでどのように買い物をしているかにも表れている。需要はアンダーウエアとデニムに集中している。これらはPVHがここ数カ月のあいだ、製品とマーケティングの両面で優先してきたカテゴリーである。
同社はこの機を捉え、calvinklein.com上に90年代をテーマにした特集記事を掲載した。ラーション氏によれば「平均以上のソーシャルエンゲージメントとクリック率を生み出している」。
小売店でのプロモーション活動も、ブランドの勢いを後押ししている。3月にニューヨーク・マガジン(New York Magazine)と連携して行ったカルバン・クラインのソーホー店でのポップアップは、ラーション氏によると、同店史上最高の1日あたりの売上と来店客数を記録した。
同ブランドは、文化的な接点を通じて90年代の美学を広めている。なかには、ドラマでキャロリン・ベセット・ケネディを演じる女優のサラ・ピジョンをヴァニティ・フェア(Vanity Fair)誌主催のオスカーパーティーにスタイリングした。
ブランドは、ここ最近の有名人起用キャンペーンにも資金を投じており、売上増に大きく貢献している。
PVHによると、K-Popスターのジョングクを起用した春のキャンペーンで取り上げたアイテムは、50%以上売上が伸び、ジョングクが着用したジャケットは2週間で60%売れ行きが伸びた。
3月にサッカー・FCバルセロナ所属のハフィーニャ選手を起用したキャンペーンは、ソーシャルエンゲージメントを62%押し上げ、2025年の同様のキャンペーンと比較して、取り上げられた商品の売上が11%増加した。3月9日からスタートした女優のダコタ・ジョンソンを起用した別のキャンペーンは、欧州のWebサイトトラフィックを二桁増加させ、主要アイテムは以前の4倍売り上げた。
関税の逆風のなか、マーケティング投資を拡大
PVHはこの需要を増大するマーケティング投資で支えている。特に上半期に注力しており、現在のエンゲージメントを生かしてD2Cの成長を後押しする狙いである。
一方で、これは同社が2026年にマージンを圧迫すると見込まれる215ベーシスポイントの関税による逆風を相殺しようとしているなかでの動きでもある。
ラーション氏はまた、PVHが誰のためにブランドを構築しているのかについて、決算説明会で驚くほど率直に語った。同社はZ世代と若いミレニアル世代の消費者に注力しており、特に「ステータス志向の買い物客とスタイル重視の消費者セグメント」に焦点を当てていると同氏は述べた。
「彼らはより頻繁に買い物をし、より多く支出し、より高いロイヤルティを持っている」。
トミーヒルフィガーのスポーツ戦略
PVHの第2のブランドであるトミーヒルフィガーは、スポーツパートナーシップと製品の可視性を軸にした異なる戦略を通じて、親会社の業績に貢献している。
同ブランドが1月に英国のリバプールFC(Liverpool Football Club)と締結した新たな契約は、過去最高のエンゲージメントを記録したソーシャル投稿を生み出し、Eコマースのトラフィックを即座に急増させた。
「リバプールは、トミーのソーシャルチャネルで発信された投稿のなかで、過去最高のエンゲージメントを記録した投稿となった」とラーション氏は決算説明会で述べた。
ラーション氏によると、選手がトミーヒルフィガーを着用して試合の入場に登場した際、欧州における掲載製品の売上は前週比で200%増加した。これは主に、デジタルチャネルで直接購入可能であったためである。
今後、同ブランドは各シーズンに複数回、リバプールの選手の試合入場時の衣装を担当し、トンネルウォークの瞬間を活用して主要ルックを披露し、再びデジタルチャネル全体でショッパブルな商品と直接連動させていくとラーション氏は述べた。
2月からはじまったF1とのパートナーシップも同様の成果を生んでいる。キャデラックF1(Cadillac F1)とのパートナーシップにひもづいた活動(ドライバーの出演や地域限定キャンペーンを含む)は、3月にトミーヒルフィガーの中国におけるD2C売上を二桁増加させる一助となった。
米国では、「チェコ」の愛称で親しまれているメキシコ人レーシングドライバー、セルジオ・ペレスが着用した製品が安定した需要を生み出しており、ケーブルニットポロなどのアイテムが二桁の売上増を記録している。
ブランドはアスリート主導のアプローチをさらに拡大し続けている。
PVHは3月30日、トラビス・ケルシーをトミーヒルフィガーのグローバルアンバサダー兼クリエイティブコラボレーターに起用したことを発表した。今後のキャンペーンや製品ローンチの開発にあたり、幅広い文化的影響力を持つアスリートを新たに加えた。
[原文:The 'Love Story' Effect: Calvin Klein's '90s reset drives demand for PVH]
Zofia Zwieglinska(翻訳、編集:藏西隆介)
