未就学の子連れ「お断り」に賛否広がる…だし巻き玉子専門店の決断、飲食店はどこまで客を断れる?
大阪市内にある「だし巻き玉子専門店」が、未就学児を連れた客の入店を断る方針を打ち出し、SNSで話題となっている。
同店はSNSで「店内外でのトラブルが頻発している」などの理由を説明。走り回る子どもによる他の客への迷惑や安全面の懸念、注意しても改善されないケースがあったことなど、切実な事情を明かしている。
これに対し、SNS上では「こういうお店が増えてほしい」「子どもを叱らない親が多すぎる」といった共感の声も寄せられている。
飲食店が利用客の属性によって入店を制限することは許されるのか。安全配慮や営業の自由との関係で、どこまで認められるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●「誰を相手に商売するか」一定の自由がある
私も子どもの頃、騒がしかったので他人事ではないように思いました。
法的には、まず大前提として、飲食店などの民間事業者には、誰を相手に商売するかについて一定の自由(契約自由の原則)が認められています。
「うちは会員制です」「ドレスコードがあります」といった営業形態が許されているのも、この原則があるからです。
●「未就学児連れお断り」は違法なのか?
では、「未就学児連れお断り」という方針は違法となるのでしょうか。
現行法上、性別・人種・障害などに関する差別的取扱いについては、一定の規制があるものの、子ども連れであることを理由とした飲食店の入店拒否を直接的に禁止する明文の規定は見当たりません。
このため、一般論としては、直ちに違法とは評価しにくいと考えられます。
ただし「絶対に何でも自由」というわけでもありません。たとえば合理性を欠く恣意的な対応であれば、社会的相当性を逸脱するとして問題となる余地があります。
●安全配慮上の合理性があれば正当化されやすい
今回、店側は「店内外でのトラブルが頻発している」「走り回ることで他のお客さんへの迷惑や安全上の危険がある」「注意しても改善されなかった」など、具体的かつ切実な事情を丁寧に説明しています。
安全面への配慮として合理的な理由がある場合、入店制限は正当性を持ちやすいと思われます。特に、熱い料理を扱う専門店という業態を考えると、子どもの安全確保の観点からも一定の合理性が認められる可能性があります。
●時間帯や席の配置でゾーニングも
ただし、未就学児の入店を一律に断る前に、段階的な対応を検討することも望ましいでしょう。
たとえば、「お子さんが走り回ったり、大声を上げ続けたりする場合はご退店をお願いする場合があります」というルールをあらかじめ入口や予約時に明示する方法が考えられます。
また、席の配置を工夫して子ども連れの客と他の客を分ける、ランチ帯など時間帯によって受け入れる、といった選択肢も考えられます。
●「社会での育児」と「公共の場でのマナー」をどう考えるか
子育て世帯にとっては、「利用できる場所が減る」という切なさもあるかと思います。
ただ、お店側にとっても、トラブルを繰り返した末の苦渋の判断であることが、今回の丁寧な説明から伝わってきます。
法はあくまで最低限のルールを定めるものであり、最終的には「子どもは社会全体で育てる」という価値観と、「公共の場でのマナー」をどう両立させるかという、社会的な合意のあり方が問われる問題だといえるでしょう。
今回の事例は、そんな問いを私たちに投げかけているように思います。
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。Xリーグ選手でもある。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/
