【『終のひと』柿澤勇人×西山潤 対談】斬新なバディを演じた注目の俳優二人が撮影現場で「自分の演技」をチェックしない理由

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TBS「ドラマストリーム」で放送中の『終のひと』。清水俊の同名コミックを原作にした本作は、余命半年の葬儀屋・嗣江宗助と新入社員の梵光太郎──通称「ボン」のバディを描いた異色作だ。 

毎週“死”をモチーフにした喜怒哀楽のヒューマンドラマが繰り広げられ、話題を集めている『終のひと』。いよいよ近づく最終回を前に、嗣江役としてドラマ初主演の柿澤勇人とボンを演じた西山潤による“バディ”対談が実現。撮影現場の思い出からお互いへの質問コーナーまで、めくるめく濃厚トークをお届けしよう。

バディものへの憧れ

──いよいよ『終のひと』最終回が目前ですが、まずはおふたりの好きな“バディもの”の映画、あるいはドラマを教えてください。

柿澤:洋画の『最強のふたり』ですね。映画作品として好きですし、ああいう友情とも違った独自の関係性は男心をくすぐるというか、憧れがあります。いつかあんな役を演じてみたいなと思っています。

西山:ぼくはテレビ東京でやっていた『まほろ駅前番外地』が放送当時から大好きで、映画版もふくめて何度も見ています。永山瑛太さんと松田龍平さんがツーショットで立ってるだけで堪らないですね。きれいにしすぎず、いい意味で汚い感じがカッコいい。エンドクレジットが流れるときも、ふたりが雑然とした事務所でやり取りしてて……ああいう空気感がとても好きでして。そのため、「いつかバディものがやりたい」という夢がずっとありました。

──その夢が『終のひと』で叶ったわけですね。

西山:いわゆる“静と動”のバディじゃないですか。勇人さんの嗣江が静として佇んでいて、その周りをボンちゃんがちょこまか動き回る。年齢もひと回り離れているバディで、師弟のような兄弟のような、そういう間柄です。

柿澤:嗣江さんがステージ4のガンで余命宣告をされて、葬儀屋の仕事をどうしようかというタイミングでボンちゃんと出会い、彼の死や別れに対する想いから「受け継いでくれるんじゃないか」という思いで、自分の仕事ぶりを背中で見せていく。そこがバディものとして、珍しいですよね。

──どのようなバディを演じようと思いましたか?

柿澤:具体的に「こうしよう」という話はぜんぜんしてなくて。普段のぼくと潤には共通点がたくさんあったんです。たとえば同じ学校の出身だったり、お互いに呑むのが好きだったり、そういった似ている部分が多かったので、インする前から自然に関係性ができていました。あとは現場を楽しむだけでしたね。

西山:木更津で撮影してまして。すごく寒かったです(笑)。

柿澤:同じホテルに泊まって、銭湯に行ったりして、ずっと一緒にいましたね。われわれの思うバディの正解だったんじゃないかなと思います。

特に思い出深いシーン

西山:放送を見て、あらためて勇人さんの嗣江がめちゃくちゃカッコいいと思いました。現場で共演していたときより、完成したドラマであらためて「嗣江さんってこんなに素敵なんだ」と思いました。嗣江さんにゴールを決めてもらうため、ボンちゃんはなんとかボールを持っていく。ゴール前まで縦横無尽に駆け抜ける……そこに徹しました。最後は嗣江さんの活躍を見届ける役だと思ったんです。

柿澤:ボンの存在が、どんどん嗣江のなかで大きくなっていきましたね。ぼくと潤の関係もそうなんです。

──とくに思い出深い撮影は?

柿澤:ぼくはやっぱり物語の佳境の第10話、嗣江とボンのふたりきりのシーンですね。台本だと5〜6ページかな。ボンちゃんはボンちゃんで嗣江さんのことを見てて、もうわかっていることがあるけど言葉にはしない。

嗣江さんも嗣江さんでボンちゃんのため、嗣江葬儀店のため、あえて言わなかったことがあって……そんな状況で、お互いが初めて胸の内を明かす。そしてボンちゃんが嗣江さんのためになにをするべきなのか、決断する。

西山:まさに決断でしたね。ふたりっきりのお芝居で。

柿澤:あのシーンは年明けの撮影で、本来なら年末に撮る予定がズレちゃったんです。結果的にそれもよかった。1ヶ月ほどずっと一緒に撮影した期間があったので、濃密な関係ができたうえで撮ることができました。いいシーンになったんじゃないかと思います。

西山:ぼくも第10話です。それまでの回って意外と嗣江さんとボンちゃんだけのシーンが少なくて。必ず誰かしらがいたので。だから、第10話のあのシーンがいちばん長い共演で、ほぼ会話だけで動きもなく、嗣江とボンでありながら勇人さんとぼくの戦いでもあり、ある意味“勝負”でしたね。年末年始も気が気じゃなくて、本番当日は……役者として魂が震えました。

移動中の過ごし方

──ここから先はしばし丸投げで、柿澤さんと西山さん、それぞれお互いに聞きたい質問をお願いします。では、ご自由にどうぞ。

柿澤:じゃあ、ぼくからいきますね。クルマの調子はどうですか?

西山:そこですか(笑)。

柿澤:潤は撮影中にクルマを買い換えたんですよ。

西山:はい、佳境の撮影だったとか言いながら、買いました(笑)。

柿澤:余裕あるんじゃんと思ったよね。「試乗してきます」「マジで? すごい」とか話してて(笑)。

西山:木更津って遠いじゃないですか。それまで軽自動車に乗ってたんですが、新車はディーゼルエンジンだからアクアラインも快適に走れました。

柿澤:なるほどね。

西山:ぼくも勇人さんにクルマのことを聞きたいんですけど、移動中のクルマでなに考えてます? 音楽を聴いてるのか、それとも無音なのか、そこが気になってます。

柿澤:音楽はずっと流してる。

西山:それは決まった音楽ですか? それともプレイリストですか?

柿澤:プレイリストだね。好きな曲ばかり入れてて、それこそ奇妙礼太郎さんが歌うドラマの主題歌「愛がすべてのこと」も入ってるし、今日もそれ聴きながら……。

西山:歌ってるんですか?

柿澤:ちょっと歌ってる(笑)。でも、基本クルマって仕事に向かうときだから、そのときやってる作品のことを考えているかな。いまは舞台の稽古中だから、歌ったり、発声したりしてますよ。ドラマの場合は考えるだけでやんないけど。

西山:やらないですか!?

柿澤:ドラマのときはやんない。

西山:あの……舞台って現場に入ったら準備しますよね、ストレッチとかして。ドラマってそれがないじゃないですか。入ったらメイクして、すぐリハーサル、本番みたいな。極端な話、ひと言もしゃべらず現場に入っちゃう。だから、ぼくはクルマのなかでセリフしゃべったり、「ハッ、ハッ、ハッ」と声を出すようにしてます。勇人さんもやってるのかなと思ったら、逆だった(笑)。

撮影現場のモニターを見ない理由

柿澤:潤も新しい現場に入ってるじゃない。どうですか?

西山:けっこう撮影期間が長い作品なので、『終のひと』とはスケジュールも違うし、カメラの台数も違うし、スタッフの人数も違いますね。

柿澤:そっか〜。

西山:『終のひと』は最初から勇人さんとセッションしながらできたんですけど、今やってる現場は途中参加なんで、ビビっちゃってますね(笑)。ぼくが聞きたいのが、勇人さんって現場でモニター見ないじゃないですか。

柿澤:うん、あんまり見ないね。

西山:それってなにか理由があるんですか?

柿澤:理由のひとつは見るとショックを受けるからかな(笑)。「あ、こういう映りなのか」とか、それからカメラがこっちでこう映るというのがわかっちゃうと、意識しすぎて変なことになりそうなんだよね。だから極力見ないかなぁ。もちろん「どこまで映ってるか」という確認用に見ることもありますよ。

西山:でも、それって芝居する前ですよね?

柿澤:そう。あと見ない理由としては監督がOK出して、それをモニターチェックして自分が「ちょっと違うな」と思っても変えることはできないじゃない。その演技が自分のなかで最悪だったら、そのあとも引きずっちゃう気がして……そういう負のスパイラルが嫌で見ないというのもあるかな。

西山:ぼくも見ないタイプで、だから勇人さんのスタンスがありがたくて……逆にみなさんモニターを見る現場もあるんですよ。ぼくだけ見ないと仕事してない人みたいになっちゃう(笑)。

柿澤:時代劇の場合、芝居だけでなく所作の確認もあるからね。でも表情のアップなんか、やっぱり見たくないかなぁ。

舞台と映像での演技の違い

──柿澤さんは舞台出身ですが、映画やドラマのような映像と舞台の演技は、どういう部分が違いますか?

柿澤:なんだろう……まず“声”ですかね。舞台は声を張らないと、劇場の奥のお客さんまではセリフが届かない。映像の場合は相手役との一対一なので、その違いが大きいですね。

演技の根本は変わらないと思うんですが、やはり声の調整や表現、それが第一の違いだと思います。

──西山さんは子役出身ですが、大人の俳優になるうえで壁はありましたか?

西山:10代後半は表現することに迷いました。すぐ答えを出そうと、正解を求めようと苦しんだ時期で……大人って悲しいときに必ずしも悲しい顔をしないじゃないですか。でも、子供は悲しいと悲しい顔をする……いわゆる“子役芝居”ってやつですね。それを乗り越えるのが大変でした。

柿澤:ぼくよりキャリア長いですからね、潤は。もちろん後輩だと思って接していたら、じつは芸能界では先輩だった(笑)。

西山:小学1年生から始めて、21年目です。

ドラマを撮り終えての心境

──柿澤さんは同級生を、西山さんは祖母を亡くされた経験を放送前のコメントとして寄せていました。じつは、わたしも年明けに母を亡くしまして、予期せぬ葬儀のあれこれを体験した直後だったので、『終のひと』の描写が深く刺さるものがありました。誰しも近しい人の死に直面すると思うのですが、『終のひと』を撮り終えての心境はどのようなものですか?

柿澤:そうですね…………ぼくはドラマを経て、なにかが急激に変わったというわけではなく、もともとあった想いが強くなりました。同級生が亡くなったのも急で、まだ20代だったんですよ。ガンであっという間に亡くなって。毎年有志で集まり彼女のお墓参りをして、そのあと飲みながら思い出話をする。

彼女を忘れないための行事で、ぼくらにとって当たり前のことだったんですが、今回『終のひと』の撮影を経て、この行事を大事に思う気持ちがより強固になりましたね。残された人間たちが故人のために故人が生きた証を語る。そういうことは必要ですし、自分の父や母に対してもちゃんと向き合わなきゃなと、あらためて思うようになりました。

西山:ぼくはおばあちゃんが亡くなったとき、人生で初めて虚無感があったんです。去年の2月20日だったんですが、それから心にぽっかり穴が空いてしまい……うっかり物忘れをしたり、思わぬ失敗をしたり、ボーッとしちゃってる時期がありました。

柿澤:どうしてもそうなるよね、大切な人を失うと……。

西山:たぶん、あがいてたんですけど、あるとき死を受け入れるしかないなと考え方を変えたんです。「葬儀は残された人のためのものである」というセリフがあるのですが、流れていく日々のなかで今をどう生きるかを大事にしようと思いました。それから「会いたい人には会っておく」。『終のひと』を通して、その思いを強くしました。心の片隅にそういう気持ちを残しておこうと。

──ほどなく、お別れの最終回です。

柿澤:スタッフ・キャスト一同、妥協なく全力を尽くしたので、われわれとしてはやり切った思いがあります。もちろん反省や後悔もありますが、あの日あの場でやれたことに対する誇りはそれ以上です。

西山:後半にかけてボンちゃんは泣きっぱなしで、それまでにない感情が嗣江さんもボンちゃんも湧き出てきます。いいパスを出しながら勇人さんと戦ったので、そこを噛みしめて、味わっていただければと思います。

柿澤:死を扱ったドラマなので当然しんみりしちゃう悲しいシーンもあるんですけど、それだけではない。さまざまな要素の詰まった『終のひと』というエンターテインメント作品をぜひ最後までお楽しみください。

ドラマストリーム『終のひと』

出演:柿澤勇人、西山潤、筒井真理子ほか

原作:清水俊 脚本:倉光泰子ほか 演出:小村昌士、大内舞子

TBS系・毎週火曜深夜0時58分〜

(※一部地域をのぞく、時間変更の可能性あり)

地上波放送終了後「TVer」「TBS FREE」にて見逃し配信

Leminoで最新話を先行配信中

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