<さーちゃん頼む目を覚まして>突然別れを切り出され、祈るしかない夫・敦史。しかしその願いもむなしく、妻・紗綾は未来を誓った別の相手と…
結婚10年目。子どもにも恵まれ、共働きで家事や育児を分担しながら暮らす夫・五代敦史(40歳)と妻・五代紗綾(37歳)。マンション購入の話も進み、周囲から見れば“いい夫婦(1122)”に映っていました。しかし春のある夜、妻から突然「好きな人がいる」「娘と二人で出ていきたい」と告げられて――。
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花粉にちょっと感謝


それでも日常は続く。
花粉症を理由に、職場で涙を隠す敦史。
昼食時に聞こえてきたのは「フリンもの」のドラマについて。
「さーちゃんも観てんのかな」…。
恋だの愛だの略奪だの不倫だの


「積み上げてきた現実がそんな簡単にブチ壊されてたまるかっての」
思いと裏腹に、既に壊れかけている自分の現実。
子どもの世話に家事、仕事も頑張ってきた。
「俺たちけっこういい夫婦だったじゃん」
頼む目を覚まして


「相手の話をちゃんと聞いて感情的にはならないように」
敦史の願いもむなしく、電話口で”別れる道筋”について確認し合う紗綾。
「ありがとうね」
電話の向こうの相手とは――。
「好き」「私も大好き」


電話越しに交わされる甘い言葉。
そこには、敦史に向けられることのない表情が。
栄養ドリンクを飲んで備える敦史。
果たしてその心境は…。
こわい


「やだな」「こわい」「にげたい」
溢れ出るネガティブな思いを懸命に抑え、玄関のドアを開ける。
その先に「春の嵐」が待っていることをわかっていながら――。
※本稿は、『1122 五代夫婦の場合(1)』(講談社)の一部を再編集したものです。
