ドラマの役作りから アリサ・リュウ まで ヘアケアブランド露出の裏側

記事のポイント
シュワルツコフはドラマの役作りやアリサ・リュウのヘアを通じ、ポップカルチャー露出を広げている。
ハリウッドのトップヘアカラーリストとのネットワークを生かし、ブランド存在感を高めている。
ドラマで生まれたヘア技術を教育やSNSに展開し、スタイリストと顧客への認知拡大を狙う。
ドイツの消費財大手ヘンケル(Henkel)傘下のシュワルツコフ・プロフェッショナル(Schwarzkopf Professional)は、ポップカルチャーとの関わり方を熟知している。
さらに、フィギュアスケートのアリサ・リュウが五輪で金メダルを獲得する前に施した「ヘイローヘア」にも使われていたことが判明した。
「我々は、役作りのための変身やレッドカーペットのような、ポップカルチャーと地続きにある本物のパートナーシップに大きな期待を寄せている。そのうえで、我々の拠点であるロサンゼルスの環境を最大限に活用しているのだ」と、シュワルツコフ・プロフェッショナルのゼネラルマネージャー、ミシェル・チャンドラー氏はGlossyに語った。
ロサンゼルス拠点でハリウッドの美容コミュニティに入り込む
同社はドイツの消費財企業ヘンケルの傘下で、ヘンケルはほかにもディヴァカール(DevaCurl)、ジョイコ(Joico)、ゴットゥービー(got2be)、アルテナ(Altena)などの親会社でもある。2018年、ヘンケルはプロ向けヘアケア部門の本社をロサンゼルスに移転した。
「ヘア業界の才能ある人材のなかに身を置くことは、単なるセレブとのつながりのためだけではない」とチャンドラー氏は述べた。
「それは、ハリウッドのもっとも有名な人物たちの髪に毎日触れている場所、つまりロサンゼルスの会話の中心に我々が入りたいとする戦略的なメッセージを送るためでもある」。
ライアン・マーフィーのドラマを通じた有機的なブランド露出
シュワルツコフは、ライアン・マーフィー制作のFX・Hulu向けドラマ「ラブ・ストーリー」と公式な関係を持っているわけではない。
代わりに、ピジョンの新しいブロンドヘアを手がけたセレブ専門ヘアカラリスト、カリ・ヒル氏とのビジネスパートナーシップを通じて存在感を示している。
ヒル氏は、同リミテッドシリーズの撮影前にマーフィー氏のチームから依頼を受け、ピジョンのダークブラウンのボブヘアを、ベセットの象徴的な1990年代風のロングブロンドスタイルへと変身させた。
ヒル氏の顧客にはリサ・クドロー、アリ・ラーター、シェイリーン・ウッドリーらがいる。ほかにもジュリア・ロバーツ、レネー・ゼルウィガー、ズーイー・デシャネル、アンナ・ファリスとの仕事歴がある。2010年代には、ヒル氏はロレアル パリ(L’Oréal Paris)のヘアアンバサダーを務めていた。
キャロリン・ベセット風ブロンドを再現した独自カラー技術
ヘアスタイリストのバリー・リー・モー氏とエクステンションアーティストのアレックス・パードー氏とともに、ヒル氏は90年代の雰囲気を再現するために独自のフォイリングとグロッシング技術を開発した。
施術には12時間以上を要し、ヒル氏はヘアケアやドラマの時間経過に合わせたキャラクターの髪色の微妙な変化のために、ロサンゼルスからニューヨークまで出張した。
「90年代のヘアカラーは、いまとはまったく違っていた。ハイライトはもっと鮮やかで大胆だった。ゴールド系の色合いだった」とヒル氏は語った。
「年代が進むにつれて、より洗練されていった。彼女の髪の色はどんどん明るくなり、ほぼプラチナに近い色になった」。
これは、自然なバレイヤージュやクールトーンのハイライトなど、現在の多くのトレンドとは対照的である。後者は、ブリーチ中も髪の構造を維持するボンド修復技術によって実現されるが、こうした技術は30年前にはまだ存在していなかった。
「ベセットブロンド」をスタイリスト教育に展開
シュワルツコフはその後、ヒル氏の技術を教育機会やマーケティングキャンペーンに活用している。
同社はピジョンに使用した具体的な技法を「フォイルド・カシミア(foiled cashmere)」や「ベセット・ブロンド(Bessette blonde)」と名づけ、さまざまな施策に展開した。
プロのスタイリスト向けの無料デジタル教育シリーズもそのひとつだ。業界ではほとんどの講座が有料であることを考えると、これは異例のことである。
また、「ラブ・フェスト(love fest)」と呼ばれる対面型マスタークラスも開催され、ヒル氏がロサンゼルスの影響力あるライセンス保持スタイリストたちに対し、自身のアプローチを段階的に指導した。
「みんなあの2人のようになりたかった。私もそうだった」とヒル氏は、ジョン・F・ケネディ・ジュニアとベセットについて語った。「この物語をもう一度語り継げることがうれしい」。
自社製品の使用を広めるために、シュワルツコフはピンタレスト(Pinterest)にベセットとピジョンの画像を大量に投稿し、スワイプするとヒル氏の正確なカラーレシピが表示されるようにした。
目的はシンプルだ。スタイリストにノウハウと自信と、製品の選び方を提供し、ベセットのスタイルを求める顧客の増加に対応できるようにすること。同時にスキルアップを無料で提供しながら、サロンでのブランド支持者を増やす狙いもある。
「そうすれば、あのピンタレストの写真が顧客のスマートフォン画面に表示された状態でサロンに持ち込まれても、スタイリストは自信を持って再現できる。それが我々の役割である」とチャンドラー氏は言う。
「だが同時に、顧客と対話し何を求めるのか、なぜそれを求めるのか、顧客がやりたいベセット風のスタイルをどうすれば簡単に実現できるのか、教育する必要がある」。
ハリウッドのヘアカラリストネットワークを活用する戦略
これはシュワルツコフが以前から使ってきたプレイブックだ。
同ブランドは2023年の映画「バービー(Barbie)」のプレスツアーに先立ち、女優マーゴット・ロビーのヘアカラリストであるジェイコブ・シュワルツ氏を起用し、オーガニックなメディア露出を獲得した。
シュワルツコフはまた、ハリウッドスターの誰もが名を知るカラリスト、トレイシー・カニンガム氏とも協業しており、これが2025年の映画「Freakier Friday(邦題:シャッフル・フライデー)」のプレスツアー中にリンジー・ローハンと接点を持つことにつながった。
そして、ローハンとカニンガム氏の自然な関係から有料パートナーシップへと発展した。
ローハンはカニンガム氏が同ブランドのイゴラ・バイブランス(Igora Vibrance)とブロンドミー(BlondMe)で作り出した「ソフトグロスブロンド(soft gloss blonde)」の色味を通じてシュワルツコフをプロモーションした。
同様に、シュワルツコフのコネクションの多くは、ロサンゼルスの緊密なセレブヘアカラリストコミュニティを通じて生まれている。実際、ヒル氏、シュワルツ氏、パードー氏はカニンガム氏のビバリーヒルズのサロン、メシェ(Meché)で一緒に働いている。
シュワルツコフはさらに、ドリュー・バリモア、ジェニファー・ロペス、キム・カーダシアンのスタイリストであるクリス・アプルトン氏ともパートナーシップを結んでいる。
「顧客と美容師の関係性は、我々の進化したマーケティング戦略の中心にある。特にカニンガム氏、ヒル氏、シュワルツ氏、アップルトン氏のコアチームとの関係でそれが顕著だ」とチャンドラー氏は述べる。
「彼らは実際の顧客の髪を毎日扱っている本物の美容師である。ただし、たまたまとても有名な美容師であり、とても有名な人々の髪を担当しているだけだ」。
128年の歴史を持つブランドの成長戦略
チャンドラー氏は、ヘンケル傘下のヘアカラーブランド、プラバナ(Pravana)を16年間率いており、2017年のプラバナ買収時にヘンケルチームに加わった。3年前にシュワルツコフのゼネラルマネージャーに就任した。
シュワルツコフは1898年に設立され、1903年に最初の製品であるパウダーシャンプーを発売した。1995年にはヘンケルに買収されている。
ヘンケルの年間売上高は2024年度(財務データが入手可能な直近の通期)で230億ドル(約3兆4500億円)、前年比売上成長率は2.6%であった。
「大胆な決断を下すのが好きだし、何よりもものを作り上げることが好きだ」とチャンドラー氏は語った。
「125年以上の歴史と伝統を持つシュワルツコフは、米国市場でも非常に存在感のある強力なブランドである。しかし、私がゼネラルマネジャーに就任したときには、成長の余地がまだ多く残されていた」。
アリサ・リュウの「ヘイローヘア」がもたらす新たな機会
適切な場所に適切なタイミングでいることは、チャンドラー氏のビジョンの重要な柱だが、同時にある程度のコントロールを手放し、ポップカルチャーの瞬間が自然に訪れるのを受け入れることも求められる。
たとえば先月、ネット上の調査好きたちが、五輪金メダリストのアリサ・リュウのトレードマークであるヘアカラー、ブラウンヘアに施された3つのブロンドのヘイロー(ハロー/光輪)のようなリングが、セントルイスを拠点とするヘアスタイリストのケルシー・ミラー氏によって、シュワルツコフの製品を使って作られたものであることを発見した。
「皮肉なことに、これは偶然私たちのもとに転がり込んできた。こうしたことが我々の周りでは何度も起きている」とチャンドラー氏は語った。
「彼女の美容師がシュワルツコフを使っていることがわかったので、現在はパートナーシップの可能性について話し合いが進んでいる」。
チャンドラー氏はGlossyに対し、ミラー氏とリュウ氏の両方がブランドにとって「非常に興味深い」存在であり、チームとして「これがどう発展していくか楽しみにしている」と語った。
[原文:How Schwarzkopf is winning pop culture, from Sarah Pidgeon's CBK transformation to Alysa Liu's halo hair]
Lexy Lebsack(翻訳、編集:藏西隆介)
