教え子へのわいせつ、通報あったのに調査せず…元教諭は事実認めるも「退職金取り消し」認められず
かつて勤務していた高校で教え子だった女性にわいせつ行為をしたとして、諭旨免職となった大阪府立高校の元教諭の男性について、2019年に通報があったにもかかわらず、教育委員会が調査義務を怠っていたことが住民監査請求で明らかになった。
女性が2025年に再び通報したことで、府教育庁(府教委)はようやく調査を実施した。その際、元教諭は事実関係をおおむね認めたという。女性側が求めていた退職手当の取り消しは棄却されたものの、事実関係の一部は認められたかたちだ。(ライター・渋井哲也)
●住民監査を請求したのは女性本人
再通報に至るまでの経緯については、筆者がすでに報じている。わいせつ行為をされた教え子のAさんはこう語る。
「告発してからずっと不安でしたが、元教諭が私との関係を認めたことには驚きました。教員免許の取り上げが官報に載っているのを見て、少し安心しました。ただ、退職金が取り消されなかったことには、モヤモヤが残っています」
住民監査請求をおこなったのも、Aさん本人だ。
Aさんに対するわいせつ行為は懲戒免職相当の非違行為にあたり、本来であれば退職手当は不支給となるべきだったとして、退職手当の取り消しと、2019年の通報から退職日までに支払われた給与の返還を求めた。
●2019年通報後も「調査」確認できず
当初の監査で、教育庁は「告発(通報)自体を確認できない」としていたが、Aさんの陳述により時期が特定されて、再度確認がおこなわれた。
その結果、2020年8月、教育庁へ告発文書が提出されていたことが判明した。しかし、元教諭への調査がおこなわれた記録は確認できなかった。
つまり、この段階で事実上、調査がされていなかったことになる。
当時Aさんが記していたノートには、次のような言葉が残っていた。
「恋愛ではない!・・・(略)・・・これは洗脳的であり、生徒の感情をいいように利用しており、最初から誘ってきたのは元教諭であり、たぶらかしであり・・・(略)・・・それなりの、相応の処分が下されるべきだ」
「元教諭みたいな奴がまだ教師を続けていると知り憤った。もう教師をやめていると思っていた。匿名で文書を送った」「秘密を墓まで持っていくのが、嫌になった」
●「5年間放置ではなく、私の感覚では7年間」
Aさんが最初に被害を伝えたのは、2018年9月。当時の校長らに相談している。もともと大阪市立高校だったが、2022年に府へ移管されて府立高校となった。Aさんは言う。
「一部報道では、『5年間放置』とされていますが、私の感覚では『7年間放置』です。校長先生は市教委に報告してくれました。ただ、元教諭は府の教職員でした。府教委に報告するかと聞かれました。
この時点でもっと寄り添った姿勢で、聞き取りをしてくれると思っていましたが、逆に訴えられる不安があり、『誰も助けてくれないんじゃないか』と思ってしまったので、見送ることになったのです」
●2025年の告発で事態が動いた
2025年、Aさんは「24時間電話教育相談」に元教諭のわいせつ行為について連絡した。教育庁はAさんと面談し、元教諭から事情を聞いた。その結果、元教諭はAさんへのわいせつ行為をおおむね認めた。
Aさんは振り返る。
「教育組織の仕組みがわからず、市教委に相談したときから“たらい回し”だと感じていました。その時点で連携してちゃんと調査するべきだったと思います。2025年の告発で、当時の手紙が放置されていたとわかりました」
●「俺たちの関係は二人だけの秘密やで」
Aさんは小学校時代からいじめを受け、教師からの性被害も経験していた。精神的に不安定だった高校3年の5月初め、元教諭から声をかけられ、距離が縮まった。
「お前には治療が必要だ。明日から早めに学校来い」
校内の人気のない場所で話すようになり、やがて放課後に食事へ誘われるようになった。
「神社に行くと、展望台があって、一緒に座っていたら急に私の膝に先生が頭をのせてきたんです。膝枕みたいな感じです。私もドキッとしてしまって…。当時、性的な対象に見られる自信もなかったので、『私も(性的な)価値があるのかな?』と勘違いしちゃったんです」
元教諭は関係を外部に漏らさないよう口止めしたという。
「俺たちの関係は二人だけの秘密やで」
夏頃から性的接触が始まり、次第にエスカレートした。家族の工場や実家に連れて行かれ、性的行為を受けたとAさんは証言する。
高校卒業後、一度だけ性交があったが、その後、関係は終わった。
(参考)「今から思えば地獄だった」 "治療"と称して女子高生を支配した教師、恋愛を装った性搾取の実態
●記事を読んで、自分の被害の大きさに気づいた
Aさんは、自身の被害が記事として公表されたことについてこう語る。
「正直、私にもおかしいところがあったのかなとか思いながらの告発でした。記事を客観的に読んで、こんなに大変だったんだと自分でも驚きました。怒ってくれていた親友の気持ちがわかりました」
●懲戒免職ではなく諭旨免職となった
監査請求の結果、元教諭はAさんへのわいせつ行為を認めた。
ただし、
・当時は、市教委の任用期間だったため、府教委は懲戒処分ができない
・卒業後の行為については、成人後であること
などを理由に、府教委は「非違行為があったとは言えない」として懲戒処分の対象外と判断した。
そのため懲戒免職はできなかったが、辞職勧告をおこない、諭旨免職とした。また、教員免許状の取り上げもおこない、官報に公告した。
「処分を聞いてから、官報に名前が掲載されるまで時間がかかりました。本当に載るのかと疑いながら、毎日チェックしていました。名前を見つけたときは驚きました。監査請求をしてよかったと思います。本人には反省してほしいです」
