日本の国土が消える…「連絡先なし」で買える驚愕の穴。高市政権「規制強化」でも防げない深刻な限界

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国籍報告でも防げない「制度の穴」

外国資本による日本の不動産買いが加速している。一方で、外国人に買われた日本の土地が海外で転売され、最終的に「所有者不明土地」となるケースを問題視する声もある。

政府は’25年12月、土地や建物などの不動産取得に関する規制強化の方針を相次いで打ち出した。

財務省は外国為替及び外国貿易法(外為法)の省令を改正し、外国人が「居住」目的で日本の不動産を取得した際に報告の義務を課す。これまでは「投資」目的の場合にのみ報告が必要だった。

法務省は、「個人」が土地や建物などの不動産登記をする際に国籍情報の提供を義務づけ、パスポートや住民票(国籍記載のもの)などの公的証明書の提出を求める。内閣府、国土交通省、農林水産省はそれぞれ「外国法人」に対して、防衛関係施設の周辺や国境離島などの「重要土地」、大規模な土地や森林を購入した際に、代表者の国籍の届け出を義務づけると明らかにした。

政府は、2月に外国人の土地取得規制の強化に向けた検討会や有識者会議を設けて議論し、今年前半までに法案の骨格を取りまとめるとしている。

海外では安全保障の脅威や住宅価格の高騰を理由に、外国人の不動産取引や購入を制限または禁止している国が少なからずある。日本は’25年4月から短期在留資格を持つ外国人の農地取得を原則禁止しているものの、基本的には外国人による不動産の取得を直接的に制限する法律はない。

高市政権が打ち出した規制強化は、外国人が関係する「所有者不明土地」対策としてどれほどの効力を持つのか。外国人に対する日本の土地取得規制は現状のままでいいのか。土地法制に詳しい北星学園大学の足立清人教授に聞いた。

足立教授は十数年前に「外国人による不動産取得が将来、所有者不明土地発生の一因になるのではないか」との懸念を抱き、所有者不明土地問題について調べ始めたという。

「政府は、外国人による不動産保有の実態を正確に把握するためのインフラ整備を進めようとしています。今回、各省庁が発表した省令改正の内容を見ると、規制を厳格化する傾向にあるという印象です

だが、外国籍の個人や法人に不動産取得時の国籍の届け出を義務づけたくらいで、所有者不明土地問題は解決するだろうか。外国人が日本の土地を海外で別の外国人に転売した場合、実態の把握や追跡が困難になるとの指摘がある。

外国人の間で転々譲渡をされてしまうと、所有者がわからなくなるケースは確かにあると思います。

不動産登記法の改正で’24年4月から国民の相続登記は義務化されましたが、土地の売買による所有権移転登記については義務ではありません。

日本の不動産取引制度では登記は売買契約の成立要件ではなく、売り主と買い主の間で合意があれば法律上、契約は成立します。土地の譲渡、売買で登記を義務化するとなると、日本の不動産取引法制の根幹から議論しないといけないでしょう。10年や20年で実現する話ではないんです。

ただ、海外居住の個人や法人を所有権の登記名義人とする場合、国内の連絡先を登記することが改正不動産登記法で定められました。現段階では国内の連絡先がなければ『連絡先なし』と記載した上申書を提出すればいいことになっていますが、いずれは義務化もあり得る。所有者不明土地の発生を防止する効果が期待できるのではないかと思います

中国は禁止、なぜ日本はできない

外国人の土地取引について法的な観点から研究する足立教授は、実は、外国人による土地の取得を一律に制限することには反対の立場だ。

経済がグローバル化している現在、外資による土地取得を過重に制限すると、日本の経済が打撃を受けます。日本人の海外不動産取得が制限され、経済活動に影響が及ぶ恐れもある。それが全面的な規制に賛成しない理由です

たとえば中国は、外国人が土地を購入し所有することを原則禁止している。だが日本の土地は、中国資本に買われている。

だからといって、特定の国に対して規制を設けることはできないと思います。日本では、経済的な観点だけでなく国際ルールなどさまざまな要因から、外国人による不動産取得を制限するのが難しいんです。

ただ、僕は、日本の不動産法制自体にも問題があると考えています

日本では土地と建物が「別個の不動産」として扱われ、多岐にわたる法律が複雑に整備されている。しかも、土地や建物の「登記」「取引」と「利活用(計画)」の所管省庁はそれぞれ異なる。この「縦割り」の構造も不動産法制の問題の一つと足立教授は指摘する。

法務省は法務省、国土交通省は国土交通省と省庁ごとに法律で規定していて、それらの法律は横連携が取れていない。不動産法制については政府やわれわれ研究者が、複数の省庁にまたがって所管される法律を有機的に関連づけていくべきでしょう。

他方で、’20年に改正された土地基本法に関しては、僕は評価しているんです。改正法では土地の適正な利用と管理、取引を行う土地所有者の責務が定められ、地域の特性に配慮することが強調されている。この理念を実現するような法制度を作ることは、今の土地法制でも可能ではないかと思っています

ニセコの惨状…頼みの綱は「自治体」?

足立教授は外国人による土地取得について「全面的に制限することには賛成できない」とする一方、「部分的には規制を設けるべき」とも話す。

たとえば北海道ニセコの倶知安町では、外資による投資と開発で地価が高騰しています。外国人労働者が増えて賃貸物件の相場が上がり、地域で働く人たちが住居を確保するのが難しくなってきている。外国人の不動産投資によって、地域住民のウェルビーイングが損なわれているという現状があるんです。

日本では『建築自由の原則』から、建築基準法や都市計画法などの基準を満たしさえすれば、建物を建てられます。しかし、土地や建物はいわば、生活や経済、さらには生存、環境の基盤でもある。その利活用については、地方自治体が住民のウェルビーイングを考慮し、何らかの規制を設けるべきです

自治体が独自に定めることができるとすれば、どのような規制だろうか。

まず、都道府県と市町村は、都市計画法に基づいて都市計画を策定することができます。都市計画区域や準都市計画区域を指定すれば、土地利用や建築にさまざまな制限を課すことが可能です。

ただし、都市計画を策定していない自治体もある。先ほど挙げた倶知安町は都市計画区域と準都市計画区域、隣接するニセコ町は準都市計画区域を指定していますが、2町の周辺自治体は無指定の状態なんです。ということは、建設や開発が自由に行われてしまう可能性があります。

一定エリアの全町村を含めるような形での、広域的な都市計画を作ることを考えてもいいかもしれません

倶知安町といえば、昨年6月、中国系の事業者が北海道に無許可で約3.9ヘクタールの森林を伐採するという違法開発が発覚。事業者は許可を得ないまま住宅2棟の建設を進めていたが、道の中止勧告で工事は6月からストップしたままだ。

それ以外にも、倶知安町やニセコ町の雑木林でミニ開発が行われていて、中にはホテルを建てるつもりがうまくいかず、放置されたままの区画もあります。こうしたミニ開発を防止するには、都市計画法などによる規制の厳格化が必要でしょう。

加えて、開発税や別荘税、あるいは空き家税などを導入するのも対策の一つ。将来取り壊すための費用を、あらかじめ地方税として徴収するという方法も有効だろうと思います。

持続可能な地域社会を実現するためにはやはり、地方自治体が制度作りにしっかり取り組むことが重要です

ただ、自治体はマンパワー不足で手が回らないとの指摘も聞こえる。

確かに、小さな市町村はそうかもしれません。でも、国が一律に制限すると逆に、地域の実情に合った規制を設けることができなくなってしまう。具体的な土地利用規制に関しては、それぞれの自治体ごとに策定するべきと考えます。

例を紹介すると、倶知安町とニセコ町はともに景観条例を制定していて、土地開発や建設を実施する事業者に、事前の住民説明会に出席してもらう決まりになっています。説明会を通して、開発事業者と行政、住民が一緒にエリア全体の地域づくりを考えていく。それによって、自治体も地域住民もエンパワーメントされる。まちづくり条例や景観条例を策定することで、こうした仕組み作りをしていくことも大事だと思います」

外国人による不動産取得、それから生じる所有者不明土地や管理不全建物の問題は、政府任せでは解決できない。

「地方自治体も住民も力をつけ、自分たちの地域と国をどのように形づくっていくのか考えなければなりません。そうしないと、日本という国自体がもたなくなります。

国は自治体にもっと、権限を与えるべきです。私たち国民も、氾濫する情報を見極める眼力と健全な見識を身につける必要があると思います

▼足立清人(あだち・きよと)北星学園大学経済学部 経済法学科教授。1993年、明治学院大学法学部卒業。’03年、早稲田大学大学院 法学研究科修了。専門は民事法全般。

取材・文:斉藤さゆり