インディーズ時代のikura

 10月1日に結成5周年を迎えた音楽ユニット「YOASOBI」。コンポーザーのAyaseは、この日、Xを更新し、ボーカルのikura(幾田りら)と2人でシャンパングラスを手に乾杯する写真をアップした。この写真で、Ayaseはシャツの袖の下からタトゥーを覗かせており、X上では賛否入り乱れる声が数多く寄せられた。「ポップアーティストのタトゥーは、ありかなしか」という、ちょっとした論争が沸き起こっている。

「Ayaseさんは、YOASOBI結成以前は、ハードコア要素のあるロックバンドで活動してきた人物ですから、体にタトゥーが入っていても何らおかしくはありません。YOASOBIを結成してからもタトゥーを見せることはあり、タトゥーを露わにしたのは今回が初めてではありません。

 ただ、これまであからさまにタトゥーを見せることはなかったのに、今回はシャツの袖をまくって、わざわざアピールしているように見えたことで、より大きな反響を呼んでいるのでしょう。Ayaseさんのタトゥーの数も、明らかに増えているようです。

 YOASOBIを、アニメ『推しの子』第1期の主題歌『アイドル』の楽曲のイメージでしか知らなかった人や、初めてAyaseさんのタトゥーを目にした人たちは特に驚いたようで、そのビジュアルに拒否感を示す声もあがりました」(芸能記者)

 ファン層は、中高生を含む10代から30代が多いとされるYOASOBI。近年はアジアツアーに打って出るなど、国内から世界へ羽ばたこうとしているが、なぜ今回のAyaseのタトゥーがここまでの騒動になってしまったのか。

「アーティストとしての現在のYOASOBIは、国内ツアーをやり終えて、海外ツアーに力を入れている状況です。今回、Ayaseさんが露骨にタトゥーを公開したのは、自分は世界に打って出るから、もうここまで見せてもいいだろうという計算もあるんじゃないかと思います。

 海外でやっていくという決意の表われでもあり、たとえるなら、日本のプロ野球選手がメジャーに挑戦するとき、ヒゲを伸ばしたりするのに近い感じ。海外のアーティストと対等に渡りあう覚悟を示すための、わかりやすいアピールだと見ています。

 とはいえ、Ayaseさんのびっしりと入ったタトゥーは、どうしても日本の一般人の常識では受け入れられない部分がある。ワールドワイドなアーティストを目指すYOASOBIと、日本の一般的なJ-POPファンの気持ちの乖離というのが、今回のタトゥー騒動につながっているのではないでしょうか」(音楽評論家)

 海外でも活躍する日本のアーティストといえば、ロックバンド『ONE OK ROCK』のボーカル・Takaはタトゥーを入れているが、論争の対象になったことはない。Ayaseのタトゥーがここまでの論争になったのは、やはりアーティストとしてのイメージが大きく関係しているのだろう。

「たとえば、10代の男女に絶大な人気を誇る『Mrs. GREEN APPLE』のメンバーが、Ayaseさんばりのタトゥーを入れていたら、おそらく『ガッカリした』というファンも出てくるだろうし、騒動になるでしょう。一方で、これがLDH系のアーティストなら、問題になることはありません。

 結局、イメージなんですよね。やんちゃな男たちが愛を歌うというLDH系のイメージならタトゥーは許されるけど、Mrs. GREEN APPLEは、バンドといっても、アイドル寄りなんです。

 イメージ的に、タトゥーを入れてもファンが許容できるアーティストと、そうじゃないアーティストがいるわけで、それでいうと、YOASOBIを後者のイメージで捉えていたファンがけっこう多かったということじゃないですかね。

 YOASOBIも、今はAyaseさんだけですけど、これでikuraさん(幾田りら)までがっつりめのタトゥーを入れ出したら、話が全然変わってくる。それこそ、本気で離れるファンも出てくるでしょう。

 欧米では、アイドルやポップアーティストにタトゥーが入っているぐらいで、いちいち騒がれることはありません。でも、日本では、売れているアーティストに “肉体の清廉潔白さ” が求められる傾向にあるんですよ。

 支持する音楽とアーティストの見た目は関係ないという人もいるが、そうじゃない人もいる。これは日本独自の文化というか、不思議な傾向です」(同)

 Ayaseのなかでは、海外進出という “タトゥー解禁” の思惑があってのことかもしれないが、危惧されるのは彼に影響を受けた若いファンだ。

「人気楽曲『アイドル』でファンになったファミリー層では、親御さんが眉をひそめるということも出てくるでしょう。別の角度で心配なのは、Ayaseさんの影響で若い子たちが安易にタトゥーを入れてしまうことですよね。

 特に10代の子たちが勢いで入れちゃうと、将来、絶対に影響が出てくる。私は音楽評論家という職業柄、タトゥーを入れた人にたくさん出会ってきましたが、プロミュージシャンとして活躍できている人など一部を除けば、大人になってタトゥーを消したがる人たちがとても多いんです。

 タトゥーを消すのもお金がかかるし、なによりタトゥーは時代ごとにデザインの流行り廃りもある。就職するにしても、海外で事業を立ち上げて勝負するなら話は別ですが、日本の企業に就職するならリスクしかない。一般企業なら、まず面接で弾かれるでしょう。

 Ayaseさんはプロミューシャンで、お金もある。表に出る人だから、時代によって見え方を変えていくのもわかる。だけど、一般の人は、そういうわけにはいかないですからね」(同)

 ポップアーティストとしてのYOASOBIのイメージと、Ayaseの “がっつりタトゥー”。相反する2つの要素が、ここまでの議論を呼ぶとはAyaseも思っていなかったに違いない。