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メカニズムの多くをシビックと共有

A、B、Cで始まって、Zで終わる。読者も一度は、アルファベットの歌を口ずさんだ経験をお持ちだろう。しかしホンダは、順番にとらわれなかった。現在HR-V(ヴェゼル)とCR-Vをラインナップするが、その間に収まるクロスオーバーとしてZR-Vが登場した。

【画像】乗り心地と操縦性はクラス最上位 ホンダZR-V 同クラスのクロスオーバーと写真で比較 全107枚

現行のCR-Vは、2023年後半にひと回り大きいサイズへ世代交代する予定。フォルクスワーゲン・トゥアレグやヒョンデ・サンタフェと比較されるSUVへ成長する。結果としてHR-Vとの間にギャップが生まれ、新たに1車種追加されることになった。


ホンダZR-V e:HEV アドバンス(欧州仕様)

車名をZR-Vとしたことを、ホンダは明確に説明していない。Z世代への訴求力を高めようと考えたのかもしれないが、恐らく違う。アメリカでは、HR-Vという名で売られているためだ。

それはさておき、ZR-Vの全長は4570mm、全幅は1840mm、全高は1620mmあり、ざっくりいえば、ホンダ・シビックのクロスオーバー仕様だと考えても問題ないと思う。ちなみにシビックの3サイズは4551mm、1802mm、1408mmとなる。

メカニズムもシビックと多くを共有しており、同様のハイブリット・パワートレインを搭載している。2.0L 4気筒ガソリンエンジンは143psを発揮し、通常は発電機を回して183psの駆動用モーターや1.05kWhの駆動用バッテリーへ電力を供給する。

好印象なインテリアもシビックとほぼ同じ

普通に市街地を運転している限り、内燃エンジンが直接タイヤを回転させることはない。高速道路へ足を伸ばすとeCVTのクラッチが繋がり、ギアを介して前輪を駆動するようになる。

タイヤと直接結ばれていない4気筒エンジンは、ソフトウエアが必要に応じて仕事をさせる。軽負荷時には回転を止めるし、駆動用バッテリーを充電するため、一定の回転数で動いている時もある。この制御は、新しいシビックと変わらない。


ホンダZR-V e:HEV アドバンス(欧州仕様)

インテリアも、シビックとほぼ同じ。エアコンの送風口が水平に伸びるダッシュボードも、実際に押せるボタンが並んだエアコンの操作パネルも、見慣れたもので好印象だ。

ダッシュボード上部には、9.0インチのタッチモニターが据えられている。表示はさほど鮮明ではないが、ショートカットキーが用意され、スマートフォンとワイヤレスで同期できるため、使い勝手は褒められる。

内装の素材は、ソフトタッチ加工された領域が増えるなど、シビックより若干アップグレードされている。センターコンソールの収納も大きい。ZR-Vには、リンケージが必要になるマニュアル車が用意されないためだ。

ドライビングポジションも、不思議なことにシビックとほぼ同じ。ハッチバックでは低めの目線で足を伸ばす格好がしっくり来るものの、クロスオーバーには高めの目線を期待するユーザーも多いはず。

後席側の空間は上下左右に広々としており、大人もゆったり座れる。エアコンの送風口とUSBポートが用意され、長距離でも快適に過ごせるだろう。

乗り心地と操縦性はクラスの最上位

荷室の容量は、このクラスでは小さめ。後席が使える状態で390Lとなるが、シビックの410Lより小さい。競合する日産キャシュカイ(旧デュアリス)は504Lある。床面はフラットで仕切りが内蔵され、デザインは工夫されているのだが。

後席は、ホンダ・フィットのように跳ね上がらない。乗り心地と操縦性を優先し、小さくまとまるトーションビーム式ではなく、マルチリンク式をリア・サスペンションへ採用したことが理由。燃料タンクが座面の下部にあり、構造的に不可能だった。


ホンダZR-V e:HEV アドバンス(欧州仕様)

もっとも、ファミリー・クロスオーバーとして実用性が優先されても良かったと思う。観葉植物や家具など、大きなものを運びたい場面は少なくない。

そのかわり、適度な重み付けで反応の良いステアリングと、程よく引き締まった姿勢制御で、確かにコーナリングは優れる。サスペンションは少々硬めながら、減衰力の特性が良く、穏やかで落ち着いた乗り心地を備えている。

試乗したスペインの舗装に砂が浮いていたことを考えれば、グリップ力も低くない。複数用意されていた試乗車は、ミシュランかダンロップのタイヤを履いていた。高速域での、風切り音も小さいようだ。

ホンダの狙い通り、このクラスのクロスオーバーとして、ZR-Vの乗り心地と操縦性は優秀。最上位に据えても構わないだろう。

全体的には優秀なシビックに届いていない

パワートレインの印象は、メカニズムを共有するシビックとは若干異なる。ZR-Vの車重が100kgほど重く、シビックに実装されるデジタルノイズ・キャンセリング機能が備わらないことが原因だろう。

シビックの試乗時にはノイズキャンセリングが目立たず働いており、特に触れることはなかったが、効果は小さくないようだ。ZR-Vでは明確にエンジン音が車内へ届き、比較すると質感はやや劣る。


ホンダZR-V e:HEV アドバンス(欧州仕様)

アクセルペダルを傾けると、シビックと同様に滑らかに加速することが殆どだが、踏み込み具合ではエンジンの負荷が増え、回転数が高まる場面も。シフトチェンジした時のような、回転数の変化をシミュレートしたギミックも控えめだった。

燃費は良好で、ワインディングを積極的に走らせた区間も交えて、平均で16.4km/Lという結果になった。日常的な乗り方なら、17.0km/Lは狙えるだろう。

シビックをベースにしたクロスオーバーのZR-Vだが、差別化が小さく、結果として望ましくない比較関係が生まれている。モデル単体では優れているものの、さらに優秀なシビックへは全体的に届いていない印象がある。

他のメーカーも、ハッチバックとクロスオーバーでベースを共有することは珍しくない。しかし、明確な違いを与えることで、その事実を巧みに隠すのが通例なのだが。

訴求力は低くない 英国価格はお高め

それでも、ハッチバックへ近いドライビングポジションに納得できれば、ZR-Vの訴求力は低くない。乗り心地や操縦性は好印象で、インフォテインメント・システムは扱いやすく、不足ない動力性能と優れた燃費を得られる。運転支援システムも高機能だ。

ZR-Vの英国価格は、3万9495ポンド(約691万円)から。ルノー・オーストラルのトップグレードや日産キャシュカイ eパワーとほぼ同等と、お高めに設定された。試乗したアドバンス・グレードは4万2895ポンド(約751万円)で、少々強気に思える。


ホンダZR-V e:HEV アドバンス(欧州仕様)

ホンダZR-V e:HEV アドバンス(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万2895ポンド(約751万円)
全長:4570mm
全幅:1840mm
全高:1620mm
最高速度:172km/h
0-100km/h加速:7.9秒
燃費:17.2km/L
CO2排出量:132g/km
車両重量:1604kg
パワートレイン:直列4気筒1993cc自然吸気+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:199ps(システム総合)
最大トルク:32.0kg-m(システム総合)
ギアボックス:eCVT/前輪駆動