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誰もが夢見るマイホーム。しかし、不動産営業マンのセールストークや周囲の意見に流されず、自身の収入やライフプランに沿った価格で検討できなければ、幸せな生活が一転、最悪の場合「破産」「差し押さえ」という最悪の結末を迎えるかもしれません。FP Office(ライフコンサルティング株式会社)の久保雅巳氏が、マイホーム購入計画の立て方について、2組の夫婦のエピソードをもとに解説します。

住宅購入価格の上昇が止まらない

2022年8月住宅金融支援機構から発表された「2021年度フラット35利用者調査」によると3大都市圏のマンション価格は2011年に比べ平均700万円以上値上がり。 土地付きの注文住宅も2011年に比べ平均700万円値上がりしている。

[図表1]所要資金(土地付き注文住宅) 出所:2021年度フラット35利用者調査

[図表2]所要資金(マンション) 出所:2021年度フラット35利用者調査

それに伴って、年収に占めるローン返済額の割合を示す「返済負担率」、住宅購入価額が年収の何倍に相当するかを表す「年収倍率」が上昇している。

特に、マンション・土地付き注文住宅の購入者の返済負担率、年収倍率は高く

・マンション購入者の15.7%が返済負担率30%以上、年収倍率は全国平均で7.2倍 (2011年は購入者の10.6%が返済負担率30%以上、年収倍率は全国平均で5.7倍)

・土地付き注文住宅購入者の21.1%が返済負担率30%以上、年収倍率は全国平均7.5倍 (2011年は購入者の16.5%が返済負担率30%以上、年収倍率6.2倍)

となっている。

[図表3]マンション・土地付き注文住宅の購入者の返済負担率 出所:2021年度フラット35利用者調査

[図表4]土地付き注文住宅の購入者の年収倍率 出所:2021年度フラット35利用者調査

[図表5]マンション購入者の年収倍率 2021年度フラット35利用者調査より

返済負担率30%・年収倍率7倍越えの危険

世帯年収 800万円 

住宅価格 6,000万円(建物+土地)頭金なし

購入時 夫28歳 公務員年収500万円 妻26歳 会社員 300万円 子無し

住宅ローン返済期間 35年

年間返済額 196万円(月額13万円+ボーナス払年2回20万円)

結婚して3年目、そろそろ子供も……。と考えだしたタイミングで住宅購入を検討されたAさん夫婦は子供が3人欲しいとの希望もあり戸建て購入を検討。

少し高いかな? と思ったが、ハウスメーカー担当者からの「皆さんこれくらいの金額ですよ!」との言葉や、同僚や先輩社員に聞くとみんなそれくらいの金額だし……とのことで人気エリアに土地付注文住宅を購入。打合せで盛り上がり購入金額はさらに上昇し、最終的に6,000万円まで膨れ上がりました。

新居が完成したタイミングに第1子が誕生、幸せな新生活がスタートしました。妻も育休を取得し、子育てに専念してくれています。

ある日、ふと通帳を見ていたら「あれ?」と違和感。今までできていた貯金ができてない。周りに聞くと「そんなもんだよ……」と。

その後第2子、第3子と誕生。5年後奥様が時短勤務にて復職したが年収ダウン(225万円)、保育料の負担も……。ご主人はもとより残業が多く、育児に参加できない状況です。

現在ご主人42歳、奥様40歳、12歳、10歳、8歳、現状貯金はほぼなく、来年から第1子が中学生なのに教育費の準備もまったくできていません。大学へ行かせてあげたいものの、このままでは全額奨学金もやむなし。

子供のためにマイホームを建てたのに……Aさん夫婦は頭を抱えていました。

周りからよく聞く「皆さんこれくらいですよ」の危険

住宅購入相談に来られた方がよくいわれるのは 「不動産会社の営業マンに『このあたりで購入を検討されるとこれくらいは必要です』や『お客様くらいの方は皆さんこれくらいの物件を購入されていますよ』といわれたから」 「会社の人に聞いても同じくらいで買われている人が多いので」 などなど……。

みんなと一緒は安全でしょうか?  家庭によって、生活費は異なります。総務省統計局の「2021年1〜3月期家計調査」で集計された平均的な生活費を見ても、世帯人数ごとで生活費は変わります。

[図表6]2021年1〜3月期家計調査 出所:総務省統計局 家計調査家計収支編/総世帯を参考に作成

当然各家庭によって普通の水準は違います。ご自身の普通とはどのようなものか考え、無理のない返済計画を立てましょう。

また、子供の人数、教育への考え方も各家庭によって違います。 大学に進学する、しないだけではなく、高校、中学の私立校、公立校、習い事の数、種類など各家庭によって違うでしょう。

「子供の進路なんてわからない」とよく聞きます。もちろんその通りなのですが、どこまで準備してあげたいかを考え、住宅費以外の資金もふまえ購入価格を検討しましょう。

[図表7]幼稚園〜大学までの進路別学費合計

第2子の誕生を機にマンション購入を検討したBさん夫婦

世帯年収 780万円 

マンション購入 6,000万円(頭金500万円) 

購入時 夫42歳 会社員(年収 780万円) 妻35歳 専業主婦 子2人(6歳、0歳)

住宅ローン返済期間 35年

年間返済額 182.8万円(月額11万9,000円+ボーナス払年2回20万円)

ご主人が電車通勤ということもあり駅前のマンションを検討、ボーナスを併用すれば今の家賃とそれほど変わらないと考えて、思い切って5,500万円のマンションを購入しました。

購入直後はそんなに負担を感じませんでしたが、当初は月6,000円程度だった修繕積立金が年々上昇、5年後には9,800円に値上げ。今後5年ごとに値上がりし、最終的には20,000円程度になる予定であることが判明しました。

さらに、夫の勤務地が変わって車通勤になり、子供の送り迎えなどに車がもう1台必要となったため、駐車場代が倍に……。

現在、夫48歳、妻41歳、子12歳、6歳。来年から第1子が中学校に進学するため、塾に通わせたいと考えています。

また、第2子も小学生になるので習い事も増やしたいのですが、車の購入により貯蓄は半減しています。子供の学費は学資保険などで貯めているものの、自分たちの老後資金の準備はまったくといっていいほどできていません。

このままでは立ち行かないと、妻はパートを検討しているとのことですが、「あくまでも扶養の範囲で」という考えです。

「パートは扶養の範囲内で」は本当にベストな選択肢?

住宅購入をきっかけに奥様がパートを始める。ただし「扶養の範囲で」とおっしゃる方が多いです。しかしその働き方で本当に良いのでしょうか?

「130万円の壁」と言われていた社会保険における被扶養者の目安は、2022年10月より「106万円の壁」と、被扶養者の適用条件が引き下げられます(従業員数101人以上規模の企業に勤務、月額賃金8.8万円以上、週所定労働時間20時間以上、1年以上の雇用見込み、学生以外)。

この10年間で最低時給が全国平均212円上昇(2012年→22年/最低時給749円→961円)したため、2012年に年収103万円であったパート社員さんが2022年に同じ時間働くと、年収は132万円にまで上昇しました。

「働くなら扶養の範囲内!」と安易に決めつけず、家計の理想収入額、無理のない働き方、扶養を外れることによって受け取れる将来の年金のUP額などを考え、しっかりと就労計画を立てていきましょう。

「夢のマイホーム」だけに、決して簡単ではない

住宅は大きな買い物です。「夢のマイホーム」という言葉もあります。すばらしいモデルルームを見て、幸せな日常を想像し買いたい気持ちは高まるばかりです。家を買いたい気持ちは、恋愛に似ているかもしれません。

住みたい街、2つとない土地・部屋、誰しもが理想のマイホームを手に入れたいことでしょう。すばらしいことだと思いますが、夢のままで終わらないように、今後の生活、仕事、家族のことなど考え、ライフプランを立てたうえで、「理想の生活」を実現できるマイホームを検討することが重要です。

久保 雅巳

FP Office(ライフコンサルティング株式会社)

ファイナンシャル・プランナー