クラブOBで元日本代表の藤田俊哉氏がスポーツダイレクターに就任【写真:Getty Images】

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【識者コラム】小野社長は藤田氏を「そんな日本人はほかにいない」と評価

 ジュビロ磐田の小野勝社長は9月15日、フットボール本部の新体制を発表。

 本部長にはもともとクラブの企画営業に携わっていた大石倫裕氏が就任、そして鈴木秀人氏の解任で空位になっていた強化部長に代わり、元日本代表MFで磐田OBの藤田俊哉氏が、新設されたスポーツダイレクター(SD)に就任した。

 強化部長ではなくSDとした理由について、小野社長はチーム編成だけでなく、クラブのビジョンを作っていくいく役職をイメージしており、さらに「将来的にはジュビロ全体を見て、統括してもらうつもり」と信頼を寄せた。

 オランダ1部ユトレヒトでの選手経験があり、現役引退後も欧州に渡ってVVVフェンロのコーチ、さらにはイングランド1部リーズ・ユナイテッドの強化部で働き、2018年からはJFA(日本サッカー協会)での技術委員会で、欧州駐在強化部員として活動した。

「そんな日本人はほかにいない」と小野社長が評価する藤田SD。欧州で監督になることが目標にしていたなかで、17年ぶりにフロントとして古巣に復帰したことについて、「クラブとして相当な覚悟があって、僕のところに来てくれた」とオファーを受けた理由を語る。

「未来を作る」

 小野社長はフットボール本部の目的をそう語った。それはジュビロ磐田というクラブのアイデンティティーを構築していきながら、世界で通用するクラブを目指ししていくこともであるようだ。タイミング的には、最下位に低迷するジュビロの救世主として藤田SDを迎えたように見えるかもしれない。しかし、大石本部長によるとJリーグ参入30周年となる来年に向けて、水面下で構造改革のプランを進めていたという。

自分たちが主導権を握り、アクションを起こしていくスタイルを理想像に

 フットボール本部の設立も藤田氏のSD就任もおそらく既定路線だが、時期が少し早まったのだろう。藤田SDも「今の状況を度外視してやりがいがある」と語るが、今後のプランについて「まず来年以降については今語るべきではない」と多くは語らず「まずは6試合で何をするべきか。次の6試合に集中したい」と主張した。

 少し矛盾するようだが、要は残留争いの救世主として藤田氏が来た訳ではないが、今やれるサポートは精一杯やるいうことだ。浦和レッズに6-0の大敗を喫した翌日に伊藤彰前監督が解任されたが、コーチだった渋谷洋樹新監督が就任してからも、状況が大きく好転することはなく、3試合で勝ち点1に止まっている。その間にライバルのガンバ大阪やヴィッセル神戸も勝ち点を上げており、磐田だけが取り残されたような状態だ。

 藤田SDはすでに数日前から渋谷監督といろいろな話をしているというが、戦術面や選手起用に関しては監督やコーチに一任して、そこに口を挟むようなことはしないと強調した。そのなかで、「コンディションを整え、モチベーションをさらに高めるのがやれること」と語る。つまりはピッチ内ではなく、ピッチ周りのところで、チームが気持ち良く力を発揮していくためのサポートに徹するという。

 来シーズンをJ1で迎えるのかJ2で迎えるのかで、おそらく今後の成長の加速度が違ってくる。J2のほうが基盤からチームを作りやすいという声もよく見るが、J1昇格は生優しいものではなく、昇格を逃せば補強した選手も、成長した若手も早く移籍してしまう。ただ、結果がどうなろうと、藤田SDを中心に磐田が目指していく方向性は大きく変わらないかもしれない。

「今のジュビロの状況を考えた時に、いい時代があったと言ってもらえる。僕はあまりそう考えたことがない。明日何をするかのほうが好きです」

 具体的なプランは語らなかった藤田SDだが、イメージとしては自分たちが主導権を握り、アクションを起こしていくスタイルを理想像として描いているようだ。

「ワクワクしたものを見てもらいたい思いは強い。そのためにどんなサッカーをしていくかを僕だけでなく、監督、コーチと一緒に考えて、みんなで議論して、世界の水準で戦えるサッカーを目指して、どんどん構築していきたい」

 欧州でも最高峰の1つと言われるイングランドのフットボールに触れてきた藤田SDは「ゲームテンポを上げないと、上には行けない」と言うが、それに見合った技術も必要であると指摘する。ただし、単に欧州の真似をするのではなく、自分たちの良さは生かして融合していくこと。その化学反応が新しいジュビロ磐田のフットボールを作っていくことを強調した。

 おそらく藤田SDがクラブから打診を受けた時よりチームの置かれている状況は悪くなっている。順位や勝ち点もそうだが、新型コロナウイルスの陽性者が新たに5人出るなど、いい状態で次の試合に臨むことも難しくなっているなかで、まず残り6試合でJ1残留を目指していく。そしてシーズンが終わった時に、改めて新たなジュビロ磐田の未来像見えてくるだろう。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)