中国に端を発したとみられる新型コロナウイルスは、全世界に拡大を続けている。人類は1900年以降、何度もパンデミックに見舞われているが、不思議なことに、そのうちの多くは中華圏が感染源とされている。

【画像】中国の生鳥市場

 人類が経験している新型インフルエンザのパンデミックは過去4回ある。スペインかぜ(1918年)、アジアかぜ(57年)、香港かぜ(68年)と、09年のパンデミックだ。このうち「スペイン」と「09年パンデミック」は米国から中南米にかけてだが、「香港」と「アジア」は中華圏が発生源だ。さらに高病原性鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)のヒトへの感染、SARS(重症急性呼吸器症候群)も中国が感染源とされている。

生鳥市場でウイルスの遺伝子が再集合

 なぜこうも中華圏が多いのか。

 まず指摘されるのが、生鳥市場の存在だ。新鮮な動物や鳥類を食材とする中華圏では、生きたまま売る市場がいたるところにある。


中国の生鳥市場

 シベリアの営巣湖沼で鳥インフルエンザウイルスと共生しているカモが渡り鳥として南下して、地元の鶏に感染させる。そして感染した鳥が集められる市場で感染を繰り返し、やがてブタの体内でヒトのインフルエンザウイルスと交雑して、ヒトにうつる能力を獲得する遺伝子再集合を起こす。これが新型インフルエンザの誕生するメカニズムだ。

 02〜03年のSARS以降、中国ではこういった市場の縮小を図ったようだが、文化というのはなかなか捨てられない。

危険な「鳥インフルエンザ・ワクチン」

 もうひとつ感染源となる大きな理由がある。中国では国を挙げて家禽に対する高病原性鳥インフルエンザウイルスのワクチンを接種していることだ。ヒトへの感染で多数の死者を出しているH5N1ウイルスも、感染した養鶏場の鶏を殺処分して封じ込めればウイルスの撲滅を図れるが、ワクチンを接種していては感染にさえ気づかないから、いつの間にかウイルスが定着してしまっている。

 人獣共通感染症の第一人者である北海道大の人獣共通感染症リサーチセンターの喜田宏・特別招聘教授によると、ワクチンを使用しているのは中国、ベトナム、インドネシア、エジプトの4か国。「いつまで経っても鳥インフルエンザウイルスがなくならなければ、全世界的な流行を防ぐことができない」と警告する。

「第2波」に警戒せよ

 その喜田氏が、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックで危惧するのは、この先に訪れるかもしれない第2波だ。

 コロナウイルスの宿主はコウモリと伝えられているが、インフルエンザウイルスのブタのように、中間宿主となる別の動物を経由して変異したと考えられる。このウイルスが、さらにヒト→ヒト感染に適合すれば、病原性はさらに上がるとの懸念だ。

 実は、09年の新型インフルエンザのパンデミックで亡くなった人は、国内では約200人にすぎない。これに対して、翌年からの第2波では5000〜1万人が亡くなっている。

 喜田氏はこうも警告する。

「新型ウイルスよりも怖いのは、季節性のインフルエンザなんです」

 喜田氏のインタビューの詳細は「文藝春秋」4月号および「文藝春秋digital」掲載の「なぜ中国がいつも『感染源』なのか」をご覧ください。

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(辰濃 哲郎/文藝春秋 2020年4月号)