シートもライトもクルコンも改良!

 MAZDA2、聞き慣れない車名だが、これは、アクセラ→MAZDA3、アテンザ→MAZDA6同様の、デミオの新車名である。そもそも、2014年にデビューした4代目デミオは、Bセグメントのコンパクトカーながら、美しい! とさえ思わせるインテリアのデザイン、質感へのこだわり、このクラスの国産車では希少な1.5リッタークリーンディーゼルターボエンジン=スカイアクティブDの用意、ドライバーに正体するオルガン式ペダルの採用や、スカイアクティブテクノロジーがもたらす人馬一体感ある走行性能が大きな特徴、個性だった。

 ただし、ホンダ・フィットのように、後席の広さやシートアレンジ性で勝負するコンパクトカーでないのも事実。デミオをベースにしたCX-3がそうであるように、前席優先の洗練されたデザインの“カップルズカー”というキャラクターというわけだ。

 そんなデミオがMAZDA2へと名称変更したのと同時に、じつは、さまざまな改良を受けている。まずはエクステリアデザインで、最新のマツダ車に共通する大型フロントグリルを採用。おかげでより低く構えたツラ構えになっている。リヤビューも、リヤコンビランプが新しい。

 自慢のインテリアにも手が入り、シートを大改良。MAZDA3から採用されている、ドライバーの骨盤を立てて、背中のS字カーブにフィットさせる、高反発ウレタンを使った表皮の素材をも一新した新しいシートが奢られているのだ(基本構造はデミオのもので、完全新設計のMAZDA3のシートとは異なる)。6WAYの2名分のメモリーが付くパワーシートも、国産コンパクトカーとしてはめずらしく、MAZDA2の”上質なパーソナルカー”というコンセプトを反映した装備となるはずだ。

 ちなみにインテリアは、Lパッケージ、Sパッケージ、プロアクティブの3種類を用意し、Lパッケージのシートには、レザー×スエード調素材を採用し、上質さ、商品力を一段と高めたグレードとしている。

 さすが、マツダで、走行性能にかかわる改良にもぬかりはない。前後サスペンション、パワーステアリング、タイヤ、そして最新制御のGVC(G-ベクタリングコントロール)といった部分までもが新しい。

 また、先進運転支援装備も進化した。デミオは国産コンパクトカーとしていち早くACC(アダプティブクルーズコントロール)やブラインドスポットモニタリングを採用しているが、今回、そのACCの作動範囲を、デミオの約30km/h〜115km/hから、0km/h〜115km/hにアップデート。

 つまり、もはやACCに不可欠な渋滞追従型となり、60km/h以上で作動するレーンキープ機能まで用意しているのである。アダプティブLEDヘッドライトに関しては、片側20分割となり、対向車がいた際のハイビーム維持性能、カーブでの配光性能を高めているという。

 それだけではない。静粛性の向上にも力が入っている。例えば、天井内張り材の吸音性能を35%増しとし、ドアを閉めた際のガチャンという音の収束性を高め、同時に車内の反射音を低減させている。新タイヤによっては、タイヤのパターンノイズをよりすっきりとしたものにしているのだから、単なる名称変更ではなく、ビッグチェンジと呼べる進化ということになる。

肝いりのシートは「人によっては」ファブリックのほうがいい!

 さて、最初に試乗したのは、1.5リッターガソリンエンジン+6速AT、110馬力、14.4kg-mの15S Lパッケージ、2WD。走行性能の進化で著しいのは、まずはステアリングのレスポンスである。

 今回はデミオと直接乗り比べることができたのだが、パワーステアリングのやや重目の操舵フィールに大きな違いはなかったものの、よりレスポンスに優れ、スムースで、ステアリングを切ると、今まで以上にスッと思いどおりにノーズが向きを変える、軽快で、速度、走行環境を問わない安定感に満ちた、マツダらしい人車一体感ある操縦性がさらに高まった印象を受けた。

 絶対的にコンパクトなサイズと最小回転半径4.7m〜という軽自動車並みの小回り性の良さもあって、走りやすさ、運転のしやすさは、もう抜群と言っていい。

 そして、開発陣の説明どおり、新タイヤのパターンノイズは明らかに低減。とくに荒れた路面でのロードノイズが低まり、車内全体の静粛性が高まっていることが確認できた。エンジンそのものはキャリーオーバーだから、扱いやすい穏やかな加速性能にデミオとの違いは見いだせないものの、スッキリとした回転上昇感は依然、悪くない。

 一方、105馬力、25.5kg-m! を発揮するスカイアクティブD、1.5リッタークリーンディーゼル・シングルターボエンジンを搭載するXD Lパッケージ、4WDの走行性能は、走り始めた瞬間から、より上質で重厚、濃厚な走行性能、乗り心地を味わわせてくれることになる。

 この感覚はMAZDA6(旧アテンザ)、CX-3、CX-5、CX-8などのマツダ車でも同様で、とにかくクリーンディーゼルエンジン搭載車の仕上がり、走行性能が突出していいのである。その理由が、クリーンディーゼルエンジンの重さ(ガソリンエンジンに対して70〜90kg増)がいい方向に作用していることと、MAZDA2の場合、2.5リッター車並みの25.5kg-mもの分厚いトルクである。

 そうそう、肝いりの新シートだが、試乗した2台が最上級のLパッケージで、レザー×スエード調表皮だったためか、表皮の張りが硬めで、MAZDA3の新シート(ファブリック)で感動した、お尻の心地良い沈み込みによる、骨盤が立つ絶妙な着座姿勢、サポート感、カーブなどでの上半身、頭部の揺れの少なさは、身長172cm、体重65kgのボクには感じ取れなかった。

 このあたりは、あらためてファブリックシートで検証したいところである(シートの設計基準は、欧米向けがAM50 175cm/75kg、日本向けはJM50 165cm/65kg)。

 スカイアクティブDモデルの価格は同グレードのガソリン車に対して22万円ほど高くなるものの、今のマツダ車に乗るなら、クリーンディーゼルエンジン! と言いたくなるほどの走りの質感の優位性がある。

 ただ、2.2リッターのスカイアクティブDの、大小2つのターボを使い分ける2ステージターボに対して、こちらはシングルターボ。マツダのクリーンディーゼルエンジンの中ではもっともディーゼルっぽさがあるエンジンだと思え、トルキーではあるものの、回転上昇感にはザラつきがあり、あまりすっきりしていない。

 MAZDA2のエンジン評価としては、すっきり爽(さわ)やかな加速フィールを望むなら1.5リッターガソリン、乗り味まで含めた上質感、加速性能で選ぶなら1.5リッタークリーンディーゼルとなるだろう。ちなみにガソリンとクリーンディーゼルのWLTCモード燃費は、2WD、6速ATで比較するとガソリンが19.0km/L、クリーンディーゼルが21.6km/Lとなり、極端には変わらない。

 なお、MAZDA2で内容が充実した先進運転支援機能をさらに拡大する「セーフティクルーズパッケージ」は、長く乗るつもりなら、必須のオプションとしたい。