ハリウッドが生んだ変人、ジョン・マルコヴィッチの貴重なインタビュー
今から9年前の2010年、ローリングストーン誌の依頼でジョン・マルコヴィッチにインタヴューするため、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏にある彼の自宅を訪れた。当時はちょうど、彼の出演した新作『RED/レッド(原題:RED)』(LSD中毒の元CIAエージェント役)と『セクレタリアト/奇跡のサラブレッド(原題:Secretariat)』(気難しい調教師役)の2本が公開される時期だった。両作品でマルコヴィッチは有名な変人を演じ、どちらもヒットした。しかしどういう訳か、同インタヴュー記事が公開されることはなかった。出版業界特有の気まぐれか、ローリングストーン誌の編集者による突飛な思いつきだろう。本記事は、改訂して公開されるのを暗い蔵の中でじっと待っていたのだ。
65歳になったマルコヴィッチは、ひと息つくような気配を全く見せない。自分を取り巻く環境は変化しているかもしれないが、マルコヴィッチは揺るぎないように見える。しなやかな常緑樹のように、どこでも常に彼らしい存在感を出す。ここに私が9年前に書いた彼のインタヴュー記事があるが、以上のような理由で内容は改訂されていない。当時の彼と今の彼は、ほとんど変わりがないのだ。もちろん米中西部で過ごした少年時代とは全く容姿が異なる。当時の彼は、体重が標準より30kgオーバーで”ふとっちょ”などと呼ばれることもあったという。靴に矯正具を付けて歩く彼はよく、スリムで格好良いスカーフを巻いたイタリア人のプレイボーイ”トニー”になりきることがあった。その後あらゆる役を演じることとなる彼の初めての演技経験といえる。
フランス郊外の閑静な雰囲気に囲まれた自宅の外で、ジョン・マルコヴィッチは遠くを見渡していた。遠くにかすかに見える丘の上には、偉大なマゾヒストだったマルキ・ド・サドがかつて管理し、今はピエール・カルダンの所有する美しい城がある。風が吹いて雲が動き始め、遠くの景色に陰がさす。マルコヴィッチは飾り気のない金属製の椅子に腰掛けて足を組み、コーヒーを啜っている。彼はミミズのように薄い唇をすぼめ、ペラペラとよくしゃべる。何ひとつ変わっていない。彼には、現在世界にアピールするものや、世界がどうなるだろうかという彼の意見を聞きたいと思った。彼はエレガントに両手を重ねて首を傾げ、まるで大学教授のような仕草で答えを探す。
