100キロ投手も戦略のうち?! 県立岩村田のベスト4の背景にあった徹底した“戦い方”
「100キロ王子」で昨夏、一躍話題なった岩村田のエース内堀光陽の巧みなピッチングに加え、終盤の逆転劇や延長戦を制するなどの粘り強い試合運びで、2017年の長野大会で24年ぶりのベスト4を決めた長野県立・岩村田。 この結果に、監督の花岡 淳一は、「信じられない」と語り、当の選手たちも「自分たちでも不思議」と言葉にした。とはいえ、24年ぶりのベスト4進出の背景には、結果を残せるだけの取り組みがあったはずだ。 今回は、夏の100回大会で大きく躍進したい公立校に向けて、岩村田の躍進のヒミツを「日頃の練習方法」と「チームの成長」の2つの軸から迫っていく。 と、その前に「ベスト4」への歩みと、大会後の「監督」と「選手」の本音から紹介しよう。
夏の悲壮感ってあるじゃないですか。最後の夏は、「半べそかきながら、戦う」というような。それが、選手たちには、なかったんです。選手たちは負けていても、ベンチに座って落ち着いていて、淡々と野球をやっていました。一球一打の結果に、一喜一憂しない。ピンチの場面でも、楽しそうなんです。 満塁になった時は、こっちが「もう負けるんかな〜」って思って見ていても、ゼロに抑えてベンチに帰ってくる。勝負の楽しさってこういうことなんだって、選手たちの戦いをみて感じた大会でした。
選手の本音正直、僕たちが、夏のベスト4(※)に入ったチームの中で一番弱かったと思っています。(※17年夏長野大会ベスト4=松商学園、佐久長聖、東海大諏訪、岩村田)でも、監督はいつも、「完璧なチームが夏に勝てるわけじゃない。大会中も成長し続けるチームが勝てるんだ」ってことをお話しされていたので、自分たちも、夏は思いっきりプレーすることができました。強いチームと対戦して、「不安があるのが当たり前だ」って、みんな思ってましたから。
そう昨夏を振り返る岩村田ナイン。 今回、新チーム発足後から、秋・冬・春のチームの変化と、岩村田の戦い方の2シリーズに分けて、彼らの強さの秘密を掘り下げていきます。どちらのシリーズからご覧いただいてもお楽しみいただけます!
▼日頃の練習編「毎日の打撃・守備・盗塁・投球練習でココが生きた!」▼チーム成長編「秋・冬・春のチームの変化」毎日の打撃・守備練習でココが生きた! <徹底その2:守備編> 大胆なポジショニング試合のココに生きた![1]準々決勝の松本深志戦。0対0で迎えた中盤に、普通だったら、右中間を抜けていた当たりも、センターがちょうど右中間にポジショニングを取っていてアウトに。それ以外にも、投手の内堀が、「夏は外野の守備に何度も救われました」と語るほど、ポジショニングが功を奏した。
選手の本音 基本的に僕たちは定位置では守らないです。日頃の紅白戦でも、外野手は定位置の半径3メートルの円の中では絶対に守りません。外野手からしたら、守備範囲がめちゃめちゃ広いです。だからこそ、バッターのスイングや打ったファールをみながら、毎回考えて動かないといけないんですけど、夏は2年生バッテリーだったので、3年生がちゃんと守っていくんだという意識はありました。そのおかげで、大胆なポジショニングをしていたから取れた!というアウトが夏はたくさんありました。紅白戦や練習試合で徹底していたおかげです!毎日の盗塁・投球練習でココが生きた!<徹底その4:投球編>100キロ以下の遅い球で勝負!試合のココに生きた![1] 松本深志戦で2年生エース内堀の100キロのストレートと90キロのカーブなどの変化球で、練習試合では敗れていた相手に、9回1失点の快投。
監督の気持ち 内堀もそうですが、入学した時はピッチャーじゃない選手がうちは多いです。20人メンバーがいたら、10人はピッチャー。夏の大会、抑えで活躍した小林も入学時は野手でした。 ピッチャーの基本は、「ストレートと分かっていても打たれない球を投げること」です。だけど、うちに140キロ投手はいません。それでも、内堀のように、スピードが出ないピッチャーでも、もっと遅くすることはできる。相手の間をずらすことができるんです。キャッチャー阿部:これまでは変化球でバッターの気をそらすという配球をしていたけど、花岡監督から「それは違う」と言われてきました。100キロの真っすぐをどう詰まらせるのか?それを一番に考えました。それには、経験が必要だと思ったので、試合中もただサインを出すのではなく、「次はこれを試してみよう」とか、その結果どうだったかというのはしっかり考えて同じミスを繰り返さないように学習するようにしていきました。 ピッチャーとは、ブルペンで多くコミュニケーションを取るようにしています。ピッチング練習でも、甘いジャッジは一切せずに、構えたところに来なければ指摘して、ズレを話し合うようにしています。ピッチャーに求めていることは、何度も同じミスをするのではなく、1回言われたことをどれだけ深く理解して投げることが出来るかということです。
内堀:自分の武器はコントロールと集中力です。ブルペンにいるときから、キャッチャーが構えているところに投げることをとにかく意識して、スピードではなく、とにかく低めのコントロールを磨いてきました。構えてから着地までの動きを体に染み込ませていきました。 松本深志戦では、練習試合では負けていましたが、気にせずにとにかく自分のピッチングが出来ればいいと思って投げていました。
最後に、花岡監督はベスト4の結果を振り返ってこんな言葉を残してくれた。
「ベスト4の結果は、相手を攻略するのではなくて、自分たちのやれることをきちんとできたっていうだけです。相手がこうだからこうするというよりも、自分たちができることはこれだけなんだから、これだけは、徹底的にやるということを守ってきた。ただ、準決勝以上を勝ち上がるには、本当に相手を攻略するということをしていかないと、勝てないことも分かりました」
24年ぶりに県大会4強入りを果たした岩村田。100回大会記念となる2018年。昨年の経験を生かして、2年生バッテリーの内堀−阿部を中心に、この夏もまた新たな歴史を刻んでいきたい。
▼チーム成長編「秋・冬・春のチームの変化」を読む(取材=安田 未由)
注目記事・2017年秋季大会 特設ページ
