三森すずこ「私の根底にあるのはファンタジックな世界」――3rdアルバム『Toyful Basket』の裏テーマは原点回帰?
声優としてはもちろん、ソロアーティストとしても躍進を続ける三森すずこが、待望の3rdアルバム『Toyful Basket』を9月7日にリリースする。ヒットトラックメーカーによる新曲6曲と、新作リミックス4曲で構成される本作のコンセプトは「おもちゃ箱」。そう、まるでおもちゃ箱をひっくり返したように、にぎやかで楽しい世界が広がっているのだが、ジャケ写の三森は黒いワンピースを身にまとい、カラフルなおもちゃの中で異質な空気を放っている。「すべてが可愛いだけじゃない」――新たなみもりんワールドへようこそ。
撮影/西村 康 取材・文/照沼健太
スタイリング/鎌田里美(Ayuchi) ヘアメイク/mahiro
――2ndアルバム『Fantasic Funfair』は「移動式遊園地」がコンセプトでしたが、今作『Toyful Basket』もコンセプト・アルバムにしたのはどうしてですか?
前作をコンセプト・アルバムにしたときに、すごくいろんなアイディアが浮かんできたんです。それに私のライブはレビュー・ショーのようなスタイルなので、テーマが決まっているとやりやすいんですよね。だから今回も、ファンタジックかつ私の世界観を表現できるテーマがないかと考えていました。
――そこで出てきたテーマが「おもちゃ箱」だったんですね。
大人になってから子どもの頃に遊んでいたおもちゃに触れると、どこか童心に帰れる感じがあるじゃないですか? そういう大人と子どもの境界線がなくなるような、「いつだって子どもに戻れるんだよ」っていう気持ちを表現したかったんです。それと、原点回帰のような意味も含まれているんですよ。
――原点回帰? それは三森さん的に一周したという気持ちがあるということでしょうか?
最近カッコいい曲が続いていたこともあって、デビューした頃の可愛い感じの曲もやりたいなって。いろんな曲に挑戦できることはすごく楽しいし、カッコいい曲も好きなんですけど、やっぱり私の根底にあるのは童話やファンタジックな世界なんですよね。
――各楽曲を担当された作曲家のみなさんには、どのように依頼したんですか?
最初はみなさんに「『おもちゃ箱』というテーマでお願いします」とお伝えしたんですけど、全部がおもちゃ箱っぽい感じだとライブで変化がつかないかもしれないと思って、「おもちゃ箱の中に入ってる○○みたいに」とテーマを細分化していきました。
――なるほど。作曲家さんごとにテーマを設定したんですね。
たとえば太田雅友さんだったら、「このアルバムの世界にぐっと引き込まれるような、ワクワクする導入になるような曲を」とか。
――かなり明確なイメージでディレクションされたんですね。
「おもちゃ箱」というテーマでイメージされるものが作家さんによって違うので、驚きや発見もたくさんありましたが、『ヒカリノメロディ』や『My First Lesson』、それと『ドキドキトキドキトキメキス♡』なんかは、今までの自分の曲になかったものを開拓したいという思いがかたちになりました。
――『ドキドキトキドキトキメキス♡』はアルバムの中でもとくにインパクトがある曲ですよね。
かなりインパクトがありますよね! 現代的でポップな曲を作るPandaBoYさんが私に曲を書いてくれたらどういうものが出てくるんだろう?とワクワクして待っていたんですよ。この曲は女の子の気持ちがすごく表現されていて、「PandaBoYさん、なんでこんなに女の子の気持ちがわかるの!?」って驚いちゃいました(笑)。
――レコーディング時のお話もいろいろお伺いしたいんですが…
今回は短い期間で一気に録りましたね。前山田健一さんには他のユニットのときにもお世話になっていたんですけど、今回も楽しく収録させてもらいました。収録が1だとしたら、雑談が3くらいのボリュームなんですけど(笑)。
――雑談が3倍(笑)。どんな話で盛り上がるんですか?
美と健康について!
――女子トークですか!(笑)
女子トークしてます(笑)。以前、前山田さんと私が同じ化粧水を使ってるということが判明して「あのブランドいいですよね。オーガニックですし」みたいなところから「えっ、ルイボスティー飲んでるんですか? ノンカフェインでいいですよね。…あれ、もしかして健康に興味あるんですか?」って。
――意外な共通点があったんですね。
今ではお会いするたびに、お互いの健康ブーム情報を交換しています。
――元JUDY AND MARYの恩田快人さんも作曲で参加されていますね。
子どもの頃からJUDY AND MARYの大ファンだったので、まさかこんな日が来るとは…!という感じです。レコーディングも恩田さんのご自宅のスタジオで行ったんですけど、そのスタジオ自体がファンタジー世界で。レトロなおもちゃとかたくさん置いてあって「恩田さんもこういうの好きなんだ!」って。
――そうなんですか!
自分が聴いてきた音楽を作ってた人だから、自分のルーツがそこにすごく見えて…なんて言うんでしょう、親鳥に会えた小鳥みたいな気持ちになりました(笑)。
――(笑)。憧れの人の前で歌うのって、緊張しませんでしたか?
めちゃくちゃ緊張しました! しかも今回ご一緒させていただいた『Shall we dance?』は、自分で1から作詞に挑戦した初めての曲だったので、気恥ずかしさもありました。でも恩田さんは丁寧な方で優しくて、私の歌い方をすごく尊重してくださって…。とっても癒やされました。それと、この曲にはちょっとした秘密があるんですよ。
――秘密?
曲中で“Shall we dance?”って16回歌ってるんですけど、恩田さんが「13回目は悪魔の数字だから、悪魔の声みたいな僕の“Shall we dance?”ってセリフを入れていいですか?」って提案してくださって。「わぁ、恩田ワールド!」って、もう鳥肌が立つくらい嬉しくて「ぜひ入れてください!」ってお願いしました(笑)。
――レコーディングには、各作家さんが立ち会われていたんですか?
基本的に全部そうでした。蔦谷好位置さんはレコーディングのときはいらっしゃらなかったんですけど、トラックダウンのときにお会いできました。蔦谷さんは去年の秋頃に前山田さんのラジオに出させていただいたときに、私の次の収録のゲストとしていらっしゃっていて、そこで初めてお会いしたんですよ。
――そのときのご縁で…?
そうなんです、ありがたいことに! 蔦谷さんのお名前はいろんなところで拝見していて、10代の頃から「本当にこの世にいるのかな?」って思ってたくらい神的な人だったので、初めてお会いしたときは本当にビックリしました(笑)。
――今回新曲のほかに既発曲のリミックスも収録されていますが、これらも「おもちゃ箱」というテーマでお願いしたのでしょうか?
はい。子どもっておもちゃを使って本来とは違う遊び方を生み出したりするじゃないですか? もともとある曲をいろいろな作家の方にアレンジしてもらうというのは、それに似てるなーと思って、私の今までの楽曲で遊んでくださいとお願いしました。
――前回のインタビューで、三森さん個人の音楽の趣味にとても近いと教えてくれた『純情Da DanDan』のリミックスも収録されていますね。
この曲はスカっぽくて、世界観が自分の中では固定された曲だったので、kzさんがリミックスしたらどうなるんだろうとすごく楽しみにしていました。結果、予想もしない曲になっており、ただただ感動…。この曲に限らず、みなさんの作品を生み出す力には圧倒されました。
――今回は全部で3本MVを撮影されてますよね。『FUTURE IS MINE』はどんなMVになっていますか?
「いつまでも女の子でいていいんだ」っていう気持ちを表現した、ポップで可愛らしい作品になっています。子どもの頃に買ってもらったもふもふのぬいぐるみと大人になって再会し、ファンタジー世界にワープするというストーリー。もふもふちゃんは、私がデザインしたものをCGで作ってもらいました。
――もふもふちゃん、とっても可愛いです…! 続いて、『ドキドキトキドキトキメキス♡』のMVは?
この曲ができあがったときに「女ゴコロってコロコロ色が変わるルービックキューブみたい!」と思ったので、ルービックキューブをモチーフにした衣装を作ってもらいました。そして“ヴォーギング”というダンススタイルも取り入れてみました!
――雑誌『VOGUE』のモデルのポーズに似ていたことから、そう呼ばれるようになったというダンススタイルだそうですね。
そうです。そしてブラックライトに照らされる中、踊るっていう。女性声優さんで、こういうMVを作る人はいないんじゃないかな(笑)。
――スタイリッシュな映像がステキです! では、『ヒカリノメロディ』のMVはどうなっているんでしょう?
『ヒカリノメロディ』はこれまでの2作とはまた変わって、ノスタルジックな世界観です。ジブリ作品みたいなハートフルな感じですね。私が子どもと一緒にクッキーを焼いたりしてます。
――音楽だけじゃなくビジュアル面でも、おもちゃ箱のようにバリエーション豊かな作品になっているんですね。
MVだけじゃなくジャケットも、パステルカラーのカラフルなおもちゃがたくさん散りばめられた写真になってるんですよ。
――でも、そこにいる三森さんは黒いワンピースを着ていて、どこか不思議な印象を受けました。
すべてが子どものように可愛らしくっていうんじゃなく、大人になった自分があらためておもちゃ箱の世界を開いていくという客観的な目線も含められればと思って、私はシンプルなワンピースを着てみました。
――三森さんのこだわりが細部まで詰まったアルバムができあがったんですね。
曲に合わせて声の音色も変えているので、声優アーティストならではの楽しみ方もできると思います。MVもこだわっているので、ぜひ観てもらいたいです!
スタイリング/鎌田里美(Ayuchi) ヘアメイク/mahiro
「いつだって子どもに戻れるんだよ」
――2ndアルバム『Fantasic Funfair』は「移動式遊園地」がコンセプトでしたが、今作『Toyful Basket』もコンセプト・アルバムにしたのはどうしてですか?
前作をコンセプト・アルバムにしたときに、すごくいろんなアイディアが浮かんできたんです。それに私のライブはレビュー・ショーのようなスタイルなので、テーマが決まっているとやりやすいんですよね。だから今回も、ファンタジックかつ私の世界観を表現できるテーマがないかと考えていました。
――そこで出てきたテーマが「おもちゃ箱」だったんですね。
大人になってから子どもの頃に遊んでいたおもちゃに触れると、どこか童心に帰れる感じがあるじゃないですか? そういう大人と子どもの境界線がなくなるような、「いつだって子どもに戻れるんだよ」っていう気持ちを表現したかったんです。それと、原点回帰のような意味も含まれているんですよ。
――原点回帰? それは三森さん的に一周したという気持ちがあるということでしょうか?
最近カッコいい曲が続いていたこともあって、デビューした頃の可愛い感じの曲もやりたいなって。いろんな曲に挑戦できることはすごく楽しいし、カッコいい曲も好きなんですけど、やっぱり私の根底にあるのは童話やファンタジックな世界なんですよね。
――各楽曲を担当された作曲家のみなさんには、どのように依頼したんですか?
最初はみなさんに「『おもちゃ箱』というテーマでお願いします」とお伝えしたんですけど、全部がおもちゃ箱っぽい感じだとライブで変化がつかないかもしれないと思って、「おもちゃ箱の中に入ってる○○みたいに」とテーマを細分化していきました。
――なるほど。作曲家さんごとにテーマを設定したんですね。
たとえば太田雅友さんだったら、「このアルバムの世界にぐっと引き込まれるような、ワクワクする導入になるような曲を」とか。
――かなり明確なイメージでディレクションされたんですね。
「おもちゃ箱」というテーマでイメージされるものが作家さんによって違うので、驚きや発見もたくさんありましたが、『ヒカリノメロディ』や『My First Lesson』、それと『ドキドキトキドキトキメキス♡』なんかは、今までの自分の曲になかったものを開拓したいという思いがかたちになりました。
――『ドキドキトキドキトキメキス♡』はアルバムの中でもとくにインパクトがある曲ですよね。
かなりインパクトがありますよね! 現代的でポップな曲を作るPandaBoYさんが私に曲を書いてくれたらどういうものが出てくるんだろう?とワクワクして待っていたんですよ。この曲は女の子の気持ちがすごく表現されていて、「PandaBoYさん、なんでこんなに女の子の気持ちがわかるの!?」って驚いちゃいました(笑)。
憧れの人と対面してド緊張! レコーディング秘話。
――レコーディング時のお話もいろいろお伺いしたいんですが…
今回は短い期間で一気に録りましたね。前山田健一さんには他のユニットのときにもお世話になっていたんですけど、今回も楽しく収録させてもらいました。収録が1だとしたら、雑談が3くらいのボリュームなんですけど(笑)。
――雑談が3倍(笑)。どんな話で盛り上がるんですか?
美と健康について!
――女子トークですか!(笑)
女子トークしてます(笑)。以前、前山田さんと私が同じ化粧水を使ってるということが判明して「あのブランドいいですよね。オーガニックですし」みたいなところから「えっ、ルイボスティー飲んでるんですか? ノンカフェインでいいですよね。…あれ、もしかして健康に興味あるんですか?」って。
――意外な共通点があったんですね。
今ではお会いするたびに、お互いの健康ブーム情報を交換しています。
――元JUDY AND MARYの恩田快人さんも作曲で参加されていますね。
子どもの頃からJUDY AND MARYの大ファンだったので、まさかこんな日が来るとは…!という感じです。レコーディングも恩田さんのご自宅のスタジオで行ったんですけど、そのスタジオ自体がファンタジー世界で。レトロなおもちゃとかたくさん置いてあって「恩田さんもこういうの好きなんだ!」って。
――そうなんですか!
自分が聴いてきた音楽を作ってた人だから、自分のルーツがそこにすごく見えて…なんて言うんでしょう、親鳥に会えた小鳥みたいな気持ちになりました(笑)。
――(笑)。憧れの人の前で歌うのって、緊張しませんでしたか?
めちゃくちゃ緊張しました! しかも今回ご一緒させていただいた『Shall we dance?』は、自分で1から作詞に挑戦した初めての曲だったので、気恥ずかしさもありました。でも恩田さんは丁寧な方で優しくて、私の歌い方をすごく尊重してくださって…。とっても癒やされました。それと、この曲にはちょっとした秘密があるんですよ。
――秘密?
曲中で“Shall we dance?”って16回歌ってるんですけど、恩田さんが「13回目は悪魔の数字だから、悪魔の声みたいな僕の“Shall we dance?”ってセリフを入れていいですか?」って提案してくださって。「わぁ、恩田ワールド!」って、もう鳥肌が立つくらい嬉しくて「ぜひ入れてください!」ってお願いしました(笑)。
――レコーディングには、各作家さんが立ち会われていたんですか?
基本的に全部そうでした。蔦谷好位置さんはレコーディングのときはいらっしゃらなかったんですけど、トラックダウンのときにお会いできました。蔦谷さんは去年の秋頃に前山田さんのラジオに出させていただいたときに、私の次の収録のゲストとしていらっしゃっていて、そこで初めてお会いしたんですよ。
――そのときのご縁で…?
そうなんです、ありがたいことに! 蔦谷さんのお名前はいろんなところで拝見していて、10代の頃から「本当にこの世にいるのかな?」って思ってたくらい神的な人だったので、初めてお会いしたときは本当にビックリしました(笑)。
カラフルな中に黒一点。ジャケ写に込めた思いとは?
――今回新曲のほかに既発曲のリミックスも収録されていますが、これらも「おもちゃ箱」というテーマでお願いしたのでしょうか?
はい。子どもっておもちゃを使って本来とは違う遊び方を生み出したりするじゃないですか? もともとある曲をいろいろな作家の方にアレンジしてもらうというのは、それに似てるなーと思って、私の今までの楽曲で遊んでくださいとお願いしました。
――前回のインタビューで、三森さん個人の音楽の趣味にとても近いと教えてくれた『純情Da DanDan』のリミックスも収録されていますね。
この曲はスカっぽくて、世界観が自分の中では固定された曲だったので、kzさんがリミックスしたらどうなるんだろうとすごく楽しみにしていました。結果、予想もしない曲になっており、ただただ感動…。この曲に限らず、みなさんの作品を生み出す力には圧倒されました。
――今回は全部で3本MVを撮影されてますよね。『FUTURE IS MINE』はどんなMVになっていますか?
「いつまでも女の子でいていいんだ」っていう気持ちを表現した、ポップで可愛らしい作品になっています。子どもの頃に買ってもらったもふもふのぬいぐるみと大人になって再会し、ファンタジー世界にワープするというストーリー。もふもふちゃんは、私がデザインしたものをCGで作ってもらいました。
――もふもふちゃん、とっても可愛いです…! 続いて、『ドキドキトキドキトキメキス♡』のMVは?
この曲ができあがったときに「女ゴコロってコロコロ色が変わるルービックキューブみたい!」と思ったので、ルービックキューブをモチーフにした衣装を作ってもらいました。そして“ヴォーギング”というダンススタイルも取り入れてみました!
――雑誌『VOGUE』のモデルのポーズに似ていたことから、そう呼ばれるようになったというダンススタイルだそうですね。
そうです。そしてブラックライトに照らされる中、踊るっていう。女性声優さんで、こういうMVを作る人はいないんじゃないかな(笑)。
――スタイリッシュな映像がステキです! では、『ヒカリノメロディ』のMVはどうなっているんでしょう?
『ヒカリノメロディ』はこれまでの2作とはまた変わって、ノスタルジックな世界観です。ジブリ作品みたいなハートフルな感じですね。私が子どもと一緒にクッキーを焼いたりしてます。
――音楽だけじゃなくビジュアル面でも、おもちゃ箱のようにバリエーション豊かな作品になっているんですね。
MVだけじゃなくジャケットも、パステルカラーのカラフルなおもちゃがたくさん散りばめられた写真になってるんですよ。
――でも、そこにいる三森さんは黒いワンピースを着ていて、どこか不思議な印象を受けました。
すべてが子どものように可愛らしくっていうんじゃなく、大人になった自分があらためておもちゃ箱の世界を開いていくという客観的な目線も含められればと思って、私はシンプルなワンピースを着てみました。
――三森さんのこだわりが細部まで詰まったアルバムができあがったんですね。
曲に合わせて声の音色も変えているので、声優アーティストならではの楽しみ方もできると思います。MVもこだわっているので、ぜひ観てもらいたいです!