11月16日に稲葉GMから自由契約を伝えられた「驚きも動揺もあった」

 日本ハムから自由契約となり、DeNAへ入団が決まった大田泰示外野手が、Full-Count編集部の単独インタビューに応じた。11月16日に日本ハムから来季の契約を提示されない「ノンテンダー」で保留者名簿を外れ、DeNAが今月14日に獲得を発表。去就が注目されていた31歳が、ノンテンダーから移籍先決定までの28日間の心の動きや学びなどを語った。

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 11月16日は当初から日本ハム幹部との会談が設けられていた。大田は稲葉篤紀GMが待つ都内の一室へ。その脳裏にはさまざまな思いが浮かんでいた。

「いろんな想像はしていました。大幅減俸か、FA権の話か。それともクビなのか。(戦力外通告の考えは)微かでしたけど、そういう危機感は持ってました」

 会談時間は約10分。10月下旬に就任した新GMから来季契約を提示されず、自由契約とする旨を伝えられた。「FA権を行使するよりも自由契約の方が他球団とも交渉しやすくなる。野球をやる上で、いい選択ができる」と説明を受けたが、通告直後は動揺を隠せなかった。

プロ野球界で13年やってきて、初めて自由契約と言われたので。本当に初めての体験。前に進んでいくしかないと思いましたけど、驚きも動揺もありました」

 不本意なシーズンだった。日本ハムの中心選手となった今季は極度の不振に苦しみ、1か月以上の離脱を2度繰り返した。打率.204、3本塁打、20打点。76試合出場も移籍後ワーストだった。「自分が変わらないといけない。今まで通りにやっていたらダメなんだなと。当然、自分のスキルを上げることを考えているんですけど、まだまだ足りないと思いました」。来季へ気持ちを新たにする中で通告だった。

 突然の自由契約で日々の落ち着きを欠いた。複雑な思いも去来する中、日本ハム2軍施設での自主トレに徹底的に打ち込んだ。

「いろんな思いはありました。でも、なぜか分からないですけど、野球の練習をしていると忘れられるんですよね。ボールを打つにしても投げるにしても、1つのことに集中したら、そういうことを忘れて練習できました」

三浦監督の言葉に胸熱「一緒に野球がしたい。最下位から優勝したい」

「心の救い」になったのは球友たちだ。人物や内容は明かさなかったが、巨人、日本ハムのプロ13年間で作った仲間の言葉に耳を傾けた。

「たくさんの方が連絡をしてくれたり、先輩には相談もしました。僕は人に恵まれているなと。本当に1人だけでは抱えきれない問題ではあったと思ったので。所属先が決まった今は本当に感謝しています」

 DeNAからの連絡は8日の12球団合同トライアウト直後。「知らない電話番号」からの吉報は「また野球ができる」とモヤモヤを吹き飛ばしてくれた。三浦大輔監督の言葉にも強く胸を打たれた。

「『一緒に野球がしたい。最下位から巻き返して優勝したいんだ』と熱い思いを聞いて。僕もファイターズでBクラスを3度経験して、そこから優勝を目指す。そこにやりがいをすごく感じました。少しでも力になって、勝ちにつながる活躍を1つでもしたい」

 新天地の外野手陣は佐野恵太、桑原将志、タイラー・オースティンといったレギュラーがいる。「とにかくアピールというか、また大田泰示というのを見てもらわないといけない」。激しい定位置争いに臨むつもりだ。年俸は今季の1億3000万円から5000万円(金額は推定)と大幅ダウンとなったものの、今は何よりプレーできることに喜びを感じている。

「年俸は頑張り次第でまた上げることもできる。過去に逆境を乗り越えてきた選手はたくさんいる。プロ野球は3、5年でクビになったり……。そういう世界じゃないですか? 所属先があるのは野球選手としては、やっぱり嬉しいことだし、幸せなことだと思います」

 ノンテンダーからの“空白の28日間”で芽生えたハングリー精神は、大田泰示の新たな武器となる。(小谷真弥 / Masaya Kotani)