昨年は5位に甘んじ、オフもこれといった大型補強をしなかったマリーンズ。開幕前は苦しいシーズンになるのではという予想が多かったが、粘り強い戦いぶりで健闘し、46試合を消化した時点(5月26日現在)で2位に3ゲーム差をつけてパ・リーグの首位に立っている。

 この原動力になっているのが、ドラフト下位で入団した生え抜きの若い選手たちだ。

 2008年育成ドラフト5位という土俵際からスタートした西野勇士は、昨年11月に支配下登録され、今季は先発ローテーションの一角に加わり、早くも5勝を挙げている。2011年ドラフト4位の益田直也も、昨年72試合に登板した経験を糧に今季は抑えを任され、ここまで13セーブを記録。また、2012年ドラフト4位の加藤翔平も初打席初本塁打という派手なデビューを飾った。

 さらに、2006年に大学・社会人ドラフト7巡目で指名され、昨シーズン首位打者を獲得した角中勝也。3年連続ゴールデングラブ賞の岡田幸文(2008年育成ドラフト6位)なども加えると、近年、ドラフト下位や育成ドラフトで入団した選手の活躍が目立っている。

 こうした活躍の裏には、大胆に選手を起用する首脳陣の姿勢があるのは間違いない。しかしそれだけでなく、知名度や話題性に惑わされず、見どころのある選手をこまめに見出し、積極的に入団させるスカウトの目の確かさも評価する必要があるだろう。

 マリーンズのスカウトの戦略と基本的な考え方について、スカウト部門のリーダーのひとり、松本尚樹編成部編成統括に話を聞いた。

 松本氏はマリーンズでの現役生活を経て、32歳になる2002年からスカウトに転身した。そのころは、チームに対するアマチュアからの評価が低く、苦労が多かったという。

「私は関西の担当だったんですが、タイガースが圧倒的に人気で、あいさつに行っても、『マリーンズ? ふーん』というような反応でした」

 そのことが闘志に火をつけ、西岡剛、久保康友などの入団をまとめ上げた。風向きが変わってきたのは2005年の日本一からだった。

「日本シリーズに勝ったということで、選手や監督さんの見る目が変わってきました。あの優勝が転機でしたね。やはりプロは勝たなければダメって痛感しました」

 相手の好反応も手伝い、徐々にドラフト戦略も整ってきた。それまでは、とにかく入団してくれそうな選手を指名するのが第一で、細かい戦略を立てるのは難しかったのだ。

「いま下位の選手が活躍しているので、誰も狙わない選手ばかりに目をつけていると思われがちですが、年によっては競合覚悟でビッグネームを取りに行くこともありますよ。そのあたりは、あくまでもその年ごとで変わります」

 確かに、一昨年は3球団競合の中で大学ナンバーワン左腕の藤岡貴裕を引き当てた。

 しかし、やはり驚くのは西野、岡田といったほとんど注目されていない選手を育成ドラフトで獲得して、一軍選手に育て上げた目の確かさだ。

「西野も岡田もマリンスタジアムでテストしてから指名しました。もちろん、それまでも見ていましたが、指名前の最終確認みたいな感じですね。西野は、球速はそれほどでもありませんでしたが、フォークボールなどの変化球がよかった。それに県立の進学校(富山・新湊高)で成績も上位。頭のいい子なんです。育成というのはコーチがすべて手取り足取り教えるというわけには行かない。練習や投球の組み立ても自分なりに工夫する必要がある。この選手なら自分で考えてそれができるという見通しで指名したんです。そして岡田はなんといっても足ですね」

 下位や育成で指名する際、マリーンズが重視するのは総合的なセンスよりも飛び抜けた能力、ひとつのセールスポイントだという。