春から路線バスを運転しているマハトミ・リスマルタンティさん(4月22日、川崎市麻生区で)=伊藤紘二撮影

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 人材が不足する分野で外国人労働者を受け入れるための在留資格「特定技能1号」の対象にバス運転手を含む自動車運送業が追加されてから2年がたち、資格を取得した運転手が全国各地でバスを走らせている。

 神奈川県ではこの春、資格を得た外国人で初の女性運転手が誕生した。人手不足が深刻なバス業界の安全運行の一助となるか、注目される。(川崎支局 滝川乃彩)

 「ドアが閉まります。ご注意ください」。4月下旬、川崎市麻生区のバス営業所と横浜市青葉区の東急田園都市線たまプラーザ駅を結ぶ路線バスを運転するインドネシア出身のマハトミ・リスマルタンティさん(27)は停留所に止まるたび、乗降客に丁寧に声をかけていた。東急バス(東京都)が初めて採用した、3人の外国人運転手の1人だ。

 マハトミさんはジャワ島東部の町の農家に生まれたが、大きな車の運転手に憧れていた。高校時代にアニメ「けいおん!」に夢中になり、大学で日本語や日本文学を学んだ。卒論のテーマもアニメ「君の名は。」にした。

 卒業後は、東ジャワの日本語学校の講師などをした。2024年11月、東急バスが運転手を募集していることをSNSで知ると「私にぴったりの仕事」と応募。面接と運転テストを経て採用された。

 在留資格を取得して25年9月に来日すると、自動車学校で大型二種免許も取得。同社での4か月間の研修も経て、3月に運転手デビューを果たした。

 運行前、ルートは歩いて覚えた。乗客の日本語が理解できないこともあるが、丁寧な停車や聞き取りやすいアナウンスを心がけていると、「ブレーキうまいですね」「声が癒やされる」と言ってもらえるように。癒されるの意味は、営業所に戻って同僚に教わった。

 日本での生活は「アニメの中にいるみたい」。毎日両親と電話するので寂しくはないといい、「もっと経験を積んで運転手を続けたい」と意気込む。

 マハトミさんが在籍する虹が丘営業所の川又健二所長は乗客への対応を評価し、「一人の運転手として信頼され、安心してバスを利用してもらえる存在になってほしい」と期待する。

 東急バスは、まだ運転手は不足していないとするが、「年100人規模の採用」を実現するため、1割程度は特定技能1号を得た外国人にする予定だ。マハトミさんら1期生3人に続き、2期生のインドネシア人3人、ネパール人1人の計4人も近く営業所に配属され、3期生のネパール人2人も大型二種免許取得などの準備を進めている。

 同社は外国人運転手の採用について、「異国で努力する姿は日本人運転手にも良い影響を与えている。バスの運転手は日本人男性というイメージが強いので、人材不足が深刻化する中では女性や外国人を採用し、すそ野を広げていくことが大切と感じている」としている。

人手不足解消へ…2・2万人見込む

 国は2024年3月、トラックやタクシーの運転手を含む「自動車運送業」を、最長5年滞在可能な「特定技能1号」の対象業種に加えた。29年3月末までに約2万2100人の受け入れを見込む。

 日本バス協会(東京)によると、特定技能を取得した外国人運転手は5月末時点で26人。首都圏や北海道、広島県などでハンドルを握っている。

 「ニッコー観光バス」(東京)では昨年12月から、羽田空港で客室乗務員の送迎バスをインドネシア人男性が運転。沖縄県でも事業を展開する「東京バス」(同)では、同県で4人のフィリピン人運転手が路線バスなどを運転する。同社は運転手不足で稼働できないバスが約100台あるといい、外国人の採用で解消を図る。

 一方、安全対策の徹底を求める協会は各事業者に対し、免許取得だけでなく、1人で客を乗せられるようになるまで繰り返し練習させるよう指導している。

 東急バスは、道路交通法のほか、日本語での乗客への対応などを座学で約1か月学んだ上で、横浜市内の練習場と公道で計1か月、運転を練習。さらに、路線の運転などを2か月実施させている。