「自分の命、数十年しか知らずに死ぬなんて…」Aマッソ加納愛子が“親の本棚”の司馬遼太郎に「グッときた」理由〉から続く

 バラエティ番組で見せる頭の回転の速さと、エッセイなどで発揮される鋭い言語感覚。お笑いコンビAマッソ・加納愛子氏の武器の一つが、他者の本質を突く「人間観察力」であることは間違いない。では、その鋭くありながらも愛のある眼差しは、いかにして培われたのか。(全2回の2回目/はじめから読む)

【動画を見る】「こいつの“ダメなところ”が面白い」Aマッソ加納愛子の恐るべき人間観察力は“司馬遼太郎”に作られていた

(初出:「文藝春秋PLUS」2026年4月21日配信)

かなり司馬遼太郎さんの視点が中に入ってる

 驚くべきことに、そのルーツは「司馬遼太郎の歴史小説」にあった。

 文藝春秋PLUSの動画シリーズ「司馬遼太郎『未来』という街角から」に俳優の東出昌大氏と共に出演した加納氏は、芸歴を重ねて後輩芸人たちと接する中で、自身の視点に司馬作品の影響が色濃く出ていることを明かした。

「こいつのダメなところが面白いな、でもここは輝いてるなとか、そういう光の当て方って、私、かなり司馬遼太郎さんの視点が中に入ってるなって思う」

英雄たちの中に潜む「ダメな部分」や「愚かさ」

 司馬遼太郎が描く歴史上の英傑たちといえば、壮大な志を持った立派な人物というイメージが強い。しかし加納氏の読み方は違う。彼女は、歴史を動かした英雄たちの中に潜む「ダメな部分」や「人間の愚かさ」を見抜いていく。


加納愛子氏

 例えば、幕末の志士たちが熱狂した「尊王攘夷」というスローガンについて、加納は「大はったりじゃないですか」と一刀両断する。本音では異国の進んだ文化を欲しながらも、建前で大衆を煽る英雄たちの「二枚舌」。加納はそこに、現代にも通じる「タイトルに踊らされる」人間の愚かさを見る。

「大したことない」人間だからこそ愛おしく、笑える

 ずっと無口で不愛想だった人物が、突然すごい戦略を練ってくる。そんな、一見するとドラマの主人公にはなりにくい不器用な人間にスポットを当てる面白さを、彼女は司馬作品から学んだという。

「やっぱり人間ってそんなに大したことなくて。欲であったり夢であったりとかって、今は個性とも言うけれども、そもそも別に大したことないっていうことがわかりますよね」

 歴史上の偉人であっても、一皮むけば欲にまみれ、嘘をつき、時代に翻弄される。そんな「大したことない」人間だからこそ愛おしく、笑えるのだ。この視点こそが、加納愛子氏が後輩芸人の“ダメなところ”を面白がり、光を当てるプロデュース力の源泉になっている。

 このように、司馬作品の「ダメな男たち」を独自の視点で読み解く加納氏だが、一方で、作品内に登場する「女性の描かれ方」については、手厳しいツッコミを炸裂させている。「竹を割ったような女性だった、ぐらいの描き方なんですけど、もうちょっと欲しいですよね」と、女性読者ならではの不満を漏らす、その容赦ない本音トークの全貌は、以下の動画内で確認できる。

(「文春オンライン」編集部)