ペーパーアセットが暴落する局面でも…「アンティーク・コイン」が金融危機に強く、分散投資として機能するワケ【コイン収集歴50年のFPが解説】
株や債券などのペーパーアセットは、金融ショック時に巨額の投機マネーによって激しく値動きします。一方、実物資産である「アンティーク・コイン」は、その市場の特殊性から影響を受けにくく、資産の質的分散として機能します。本記事では、田中徹郎氏の著書『資産運用の視点からみた 決定版 アンティーク・コイン投資のすべて』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集し、アンティーク・コインが金融危機に強い理由を解説します。
巨額の投機マネーが入り込めない…コイン市場が金融危機に強いワケ
まず挙げておきたいのは、市場に入ってくるマネーの性質です。株や債券、為替市場など、いわゆる証券市場にはさまざまなおカネが入ってきます。もちろん実需に基づいたおカネも入ってきますが、その何倍もの投機的なマネーが日々刻々と出入りしています。
投機的なマネーは足が速く、市場参加者の心理は一瞬の間に全体へと伝染します。隣の投機家が売るから自分も売る、自分が売るとさらにそれを見た隣の投機家が売る……。こうやって相場は急速に上下動するものです。
これに対しコインはどうでしょう。
株や債券との最大の違いは、市場の規模が小さく、投機的なおカネが入りにくい点です。株式の時価総額は2京円ほどあると言われていますし、債券はもう少し大きいと考えられています。このような大きな市場は投機的なマネーが入っても、自らのおカネで市場を動かしてしまうことは通常ありません。
コインの市場規模を4兆円と申しましたが、このように狭い市場に投機的なマネーが入るのは難しいでしょう。なぜなら、自らのおカネで相場を動かしてしまうからです。
巨額な投機的なマネーの受け皿として、コイン市場はふさわしくないのです。
一枚一枚状態が違う…金融市場から隔絶されたコインの“特殊性”
投資の難しさという点でもコインは不適格です。株の世界をみると、たとえばソニー株は東京証券取引所に上場していますし、NY市場にもADR(米国預託証券)を上場しています。投資家がどこで買おうがソニー株はソニーの株です。株価は刻々と動きますが、その株価が妥当と考えるならいつでも買うことができるのです。
これに対してコインは一枚一枚状態が違います。鑑定会社の評価は一つの目安にはなりますが、キズやスレ、アタリの箇所や洗浄の度合い、トーンの美しさなども評価の対象になります。この点で先ほどのソニー株の購入とは異質です。
つまり、コインの購入には専門性や目利きが求められ、その点でかなり特殊な金融商品だと言っていいでしょう。このような特殊性によって、コイン市場は株や債券など金融市場から隔絶されており、それが上記のような穏やかな値動きにつながっていると言えるでしょう。
コインが質的な分散対象として機能するのは単なる偶然ではなく、それなりの理由があるのです。
株の暴落に耐え抜くための「質的分散」の重要性
私自身、株式投資は長くやっており、今の資産は株式投資によるところが大きいのですが、株式投資一本では成功しなかったと思います。
たとえば、リーマン・ショックです。私が持っていた株も随分とやられました。おそらく最悪期には半分ほどに減っていたと思います。それでも私は株式投資をやめようなどとまったく思いませんでした。もちろん職業柄、株式投資には大きな価格変動を伴うことを知っていたこともありましたが、それだけではありませんでした。
当時から私はコインや貴金属、不動産などの現物資産へ資産を分散しており、そのことで損失を一定範囲に抑えられたのです。貴金属は株と一緒に売られてしまった時期もありましたが、コインの世界はまったくの無風状態でした。
もし、私が株式だけで運用していたなら、おそらくあの時点で持ち株の一部を売ってしまったに違いありません。少なくとも半分ほどは売っていたのではないでしょうか。あの時じっとこらえて株を持ち続けることができたのは、質的分散のおかげですし、それがその後の資産拡大に寄与したのです。
リーマン・ショック後もたびたび世界は経済的なショックに見舞われました。ギリシャから始まった2010年の欧州債務危機、2020年のコロナ・ショック、そして2025年の4月にはトランプ関税ショックがありました。その時々のショックのサイズに応じ、株価は大きく下がりました。おそらく今後も数年おきに経済ショックは起きるでしょう。
しかし、実物資産への分散はこれからも私たちを助けてくれるに違いありません。
田中 徹郎
株式会社銀座なみきFP事務所
代表/FP
