【高橋 克英】「ネクストニセコ」と目される北海道・富良野に世界のセレブが集う「意外な理由」
北海道・ニセコは日本を代表するリゾートとして、国内外から多くの人々が訪れています。建設ラッシュに沸き、海外投資家や一流ブランドが日本のリゾートにマネーを投下する動きが加速していますが、「第二のニセコ」へと成長をを遂げる可能性が高いリゾートは、どこなのでしょうか。高橋克英著『超富裕層に「おもてなし」はいらない 世界の一流が日本に惹かれる本当の理由』(講談社+α新書)より、内容を一部調整のうえご紹介します。
4位「富良野」(北海道)
北海道の真ん中に位置する富良野スキー場は、これまで10回のFISワールドカップ大会、2回のスノーボードワールドカップ大会が開催されており、日本を代表するスキー場の一つだ。最寄りの旭川空港からは、車で約1時間、札幌からも車で約2時間の距離だ。
中心となる北の峰ZONEには、三角屋根が特徴の富良野プリンスホテル(現在休業中)をはじめ、多くのホテルやペンションなどが建ち並ぶ。
富良野ZONEには、客室数407室を誇る新富良野プリンスホテル、幻想的な店が並ぶニングルテラス、テレビドラマ『北の国から』などをテーマにした富良野・ドラマ館などがある。
富良野スキー場、富良野プリンスホテル、新富良野プリンスホテルは西武ホールディングス(HD)が保有・運営している。富良野は、西武グループが長年開発し発展してきたリゾート地だ。
中国ではニセコより知名度が高い
富良野の魅力はスキーシーズンだけではない。むしろグリーンシーズンがメインともいえる。ラベンダー畑で有名な中富良野町のファーム富田は、SNS映えを求めて訪れる訪日客も多く、中国ではニセコより知名度が高いほどだ。
実際、2024年度の中国人の宿泊者数は、ニセコ(倶知安町)の1万2187人に対して、富良野(富良野市)が1万5991人と上回っている。外国人宿泊延数全体に占める中国人(本土)の割合でも、ニセコ(倶知安町)の6.5%に対して、富良野では10%と、特に中国で人気なことがわかる(図表3‐3)。富良野の外国人宿泊客は14万8177人、外国人宿泊延数は31万3211人といずれも過去最高を更新しており、外国人宿泊数は10年前に比べて2.8倍も増加している。夏はラベンダー畑で雄大な自然を感じた訪日客が、冬には、スキーやスノーボードでダイナミックなスポーツを楽しむ「二毛作」のような動きもあるようだ。
「北の峰町」の地価が急上昇
香港のZekkei社による富良野初の外資系高級ホテルコンドミニアムとして2020年12月に開業した「フェニックス富良野」では、2億円を超える部屋を含め、華僑を中心とした海外富裕層に販売開始3ヵ月で全戸完売している(写真3‐3)。2022年12月に開業した「フェニックスウエスト」に続き、「フェニックス」の3号棟の建設も計画中とされる。
2023年12月にはマレーシアの複合企業LGBグループが「NOZO HOTEL」を開業している。また、積水ハウスがマリオット・インターナショナルと提携して「ウェスティン」ブランドのホテルを2026年以降に着工予定だという(2025年2月21日『日本経済新聞』)。
ニセコへの不動産投資で、インカムゲインだけでなく、キャピタルゲインを得ることに成功し、味を占めた華僑などアジアの海外富裕層が中心となって、ニセコと同じくパウダースノーが楽しめ、グリーンシーズンも集客力がある富良野において、高い利回りを見込める中古物件や、新規の開発用地などを物色してきているのだ。
2025年の基準地価の住宅地の上昇率では、「富良野市北の峰町」が27.1%(5.16万円/?)となり、前年度の全国8位から全国トップに躍り出ている。この先も国内外から投資資金が流入し、不動産価格の上昇を生みながら、「第二のニセコ」の地位を確実にしていくことが見込まれる。
「アセットライト」経営に舵を切る西武HD
西武HDは、資産を圧縮し運営に特化する「アセットライト」経営への転換の一環として、2022年2月、所有するプリンスホテルに加え、スキー場やゴルフ場など国内76施設のうち31施設をシンガポール政府投資公社(GIC)と総額1500億円規模で売却することに合意した。
売却後もMC(マネジメント契約)やFC(フランチャイズ契約)によって、プリンスホテルのブランドや運営は残る。売却となった31施設には、「ザ・プリンス パークタワー東京」や「サンシャインシティプリンスホテル」など都心のホテルに加え、「苗場スキー場」「苗場プリンスホテル」をはじめ、かぐら、万座温泉、志賀高原焼額山の各スキー場やホテルなどプリンスリゾートを象徴する施設も含まれていた。
一方、「軽井沢プリンスホテルザ・プリンス軽井沢」や「品川プリンスホテル」など品川・高輪、軽井沢や箱根、富良野(富良野スキー場、富良野プリンスホテル、新富良野プリンスホテル)などは、西武HDにとって高いブランド力と収益力を有する中核施設として、引き続き西武HDのグループ会社の保有となった。
しかし、2年後の2024年5月には、アセットライト経営の更なる推進のため、西武HDは、富良野を含む全所有物件の売却検討を表明している。西武グループが保有する全ての物件を検討対象としており、流動化により得られた資金を再投資に振り向け、不動産価値を最大化するため、重点エリアを明確にするとともに、外部協業パートナーとの連携およびエグゼクティブアドバイザーの招聘を掲げた。
具体的には、?都心エリア(高輪・品川・芝公園)の再開発、?西武鉄道沿線(西武新宿・高田馬場)の再開発に加え、?リゾート開発(軽井沢・箱根・富良野・日光等)の本格化、物件の新規取得が挙げられている。
富良野がニセコのような世界的なラグジュアリースキーリゾートになるためには、引続き西武HDが鍵を握ることになる。
リゾート開発の本格化を掲げ、2026年度の中期経営計画において、「富良野エリア全体の位置づけを検討」とするものの、西武HDが、バブル崩壊後以降、富良野に経営資源を積極的に投入してきたかというとそうでもない印象だ。富良野プリンスは1974年、新富良野プリンスホテルは1988年の開業で、施設自体の老朽化も進んでいる。
富良野プリンスホテルが長期休業中なのは気になるが、かつてニセコを売却し、2022年には苗場や万座温泉を売却した同グループが、富良野を持続的に維持し、どのように再開発を行い、ブランド価値を高めていくのか否か、今後の動向に注目だ。
ニセコの約3分の1の水準
いずれにせよ、富良野に投資と開発が押し寄せる最大の理由は、すでにブランド化したニセコと比べて土地が割安なことだ。
先述の通り、2025年の基準地価の住宅地の上昇率では、富良野スキー場の中心地である「富良野市北の峰町」が27.1%(5.16万円/?)となり、全国トップに躍り出ている。対して、ニセコの中心街である倶知安町字樺山は15.0%(13.8万円/?)であり、上昇率では富良野に劣るものの、それでも道内8位にランクインしている。基準地価の差は、縮まってきているものの、富良野の中心部の地価は、ニセコの約3分の1の水準に留まっている。
将来性がある割安な土地に投資することは、不動産投資の基本であり、スキーリゾート地であっても同じだ。富良野はスキーシーズンだけでなく、グリーンシーズンも集客力があるため、ホテルやホテルコンドミニアムでは高い客室稼働率も期待できる。この先、良質な不動産の投資機会が供給され、国内外の投資家や富裕層が集まることで、ブランド力が更に高まるだろう。
