米利下げ観測後退で円急落、160円台の約2年ぶり安値 市場に波及

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 米連邦準備理事会が追加利下げに保守的な姿勢を改めて示したことを受け、30日の東京外国為替市場で円相場が急落。1ドル=160円台前半をつけた。日本銀行が4月の金融政策決定会合で利上げを見送ったこともあり、日米の金利差が縮まりにくいとの見方が強まった。円は一時2024年7月以来、約1年9カ月ぶりの安値水準まで下落している。

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 米金融当局は29日まで開いた会合で政策金利を3会合連続で据え置いた。焦点となったのは声明文の内容だ。将来的な金融緩和を示唆する表現に対して複数の連邦準備銀行総裁が反対票を投じ、合計4人が反対した。

 市場ではこの結果を、金融引き締め継続を重視する内容と受け止め、年内の追加利下げ観測が後退した。29日の米長期金利は上昇し、日米の金利差は縮まりにくい状況が続いている。

■日銀が利上げ見送り、物価見通しは上方修正

 国内では、日銀が4月27日、28日に開いた金融政策決定会合で、政策金利を現行の0.75%程度に据え置くこととした。賛成6・反対3と現体制で最多の反対票が出たものの、利上げは実現しなかった。

 同時に公表した展望リポートでは、中東情勢の長期化に伴う原油価格の高止まりを主な要因として、2026年度の消費者物価見通しを大幅に引き上げた一方、実質GDP成長率は下方修正されている。植田和男総裁は記者会見で、経済や物価が日銀の見通しに沿って推移する確度が低下していると述べており、早期の追加利上げに対する慎重な姿勢がにじんだ。

 円相場に対しては、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くことへの懸念も圧力として働いている。エネルギーの大半を輸入に頼る日本では、原油高が貿易収支の悪化につながるとの見方が根強く、円売り圧力が続いている。

 片山さつき財務相は、ゴールデンウィーク中も24時間対応で為替市場の動向を注視するとしており、政府による円買い介入への緊張感が高まっている。市場では2024年4月に政府・日銀が実施した介入の記憶も鮮明に残っており、急激な円安が進んだ場合の警戒は根強い。

■債券・株式市場にも波及、先行き不透明感続く

 債券市場では、米長期金利の上昇を受けて国内の長期金利にも上昇圧力がかかりやすい状況で、日銀の利上げ観測が浮上した28日には銀行株が上昇する場面もあった。

 株式市場では、円安による輸出企業の業績押し上げ期待がある一方、原油高が製造コストを押し上げるとの懸念も根強い。米利下げ観測の後退を受けた米株市場の軟調な動きも、国内相場の重荷となっている。

 市場では日銀の次の利上げ時期として、6月の会合が有力視されており、経済・物価指標の動向が焦点となっている。原油高が一服しない限り実質賃金の圧迫が続き、日銀が利上げに踏み切れる環境が整いにくいとの見方もある。

 米金融政策と日銀の政策判断が双方向に絡み合う構図の中で、円相場の行方を巡る不透明感は当面続きそうだ。