要介護の前兆「フレイル」を診断する”5つの基準”とは?セルフチェックも医師が解説!
フレイルの診断基準はご存じですか?メディカルドック監修医が5つの診断基準やセルフチェック方法などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『1mを何秒で歩けないと「フレイル」?寝たきりを防ぐ”診断基準”を医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
フレイルとは?
高齢になると、「最近疲れやすい」「歩くのが遅くなった」「食事量が減った」など、加齢による変化を自覚する方が増えてきます。こうした変化が重なった状態を「フレイル」と呼び、要介護状態へ移行する前段階として近年注目されています。フレイルは早期に気づき、適切に対処することで進行を防ぐことが可能です。
フレイルの定義
フレイルとは、加齢に伴って筋力や活動量、認知機能、社会的つながりなどが低下し、心身の回復力(予備力)が弱くなった状態を指します。病気ではありませんが、放置すると転倒や骨折、入院、要介護につながるリスクが高まるため、早期発見と予防が重要です。
フレイル・サルコペニア・老年症候群の違いは?
フレイルは「心身・社会面を含めた総合的な虚弱状態」を指します。一方、サルコペニアは「筋肉量や筋力の低下」に特化した概念です。老年症候群は、転倒や認知機能低下、尿失禁など、高齢者に多くみられる症状の総称であり、フレイルやサルコペニアはいずれも老年症候群の一部と考えられます。
厚生労働省が定めるフレイルの5つの診断基準(J-CHS基準)
世界的に、フレイルの評価としてはFriedらの評価基準が広く用いられています。
日本では、この指標を日本人高齢者にマッチするようなものに修正し、2020年日本版フレイル基準として改定されています。
以下の基準のうち、3つ以上にあてはまる場合をフレイル、1または2つあてはまる場合をプレフレイルとします。ひとつもあてはまるものがないときは、健常な状態と考えられます。
体重減少
意図しない体重減少がみられる場合、栄養不足や筋肉量低下が疑われます。半年から1年で2~3kg以上の減少は注意が必要です。
疲労感
ここ2週間ほど、「理由もなく疲れやすい」「何をするにも億劫」と感じる状態が続く場合、活動量低下や身体機能の衰えが背景にある可能性があります。
筋力低下(握力)
握力は全身の筋力を反映する指標です。男性28kg未満、女性18kg未満は筋力低下の目安とされます。
歩行速度の低下
歩行速度が遅くなると、転倒リスクや外出頻度の低下につながります。通常歩行で1秒あたり1m未満が目安です。
身体活動量の低下
以下のいずれも、1週間に1回もしていない場合、フレイルの可能性が高まります。
軽い運動・体操をしているか?
定期的な運動・スポーツをしているか?
運動や外出の機会が減ると、筋力、心肺機能の低下が加速し、フレイルが進行しやすくなります。
フレイルのセルフチェック方法
フレイルは進行すると日常生活機能の低下や転倒リスク増加につながるため、早期に兆候を自覚することが重要です。日常生活で取り組めるセルフチェック方法として、簡単に実施できる評価がいくつかあります。
握力
家庭用の握力計があれば簡単に測定できます。数値の低下はフレイルのサインです。
歩行速度
普段通りに歩いて、決めた距離(例:5m)を何秒で歩けるか測定します。歩行速度が遅い場合、身体機能低下のサインとなります。
ふくらはぎ
ふくらはぎの太さは、サルコペニア(筋肉量・筋力の低下)との関連で広く用いられています。 「指輪っかテスト」は、特別な器具を用いずに行えるチェック方法の一つです。両手の親指と人差し指で輪っか(指輪のような形)をつくります。輪っかにぴったり囲めない(隙間ができる)場合は、ふくらはぎ周囲が小さく、筋肉量が低い可能性があります。フレイルやサルコペニアのリスクが高まっているかもしれません。輪っかがちょうど合う/囲める場合は、基本的な筋肉量は保たれている可能性がありますが、定期的にチェックすることが大切です。輪っかよりふくらはぎが大きい場合、一般的には筋肉量が十分と考えられますが、活動量や疲労感など他の項目も併せて評価しましょう。
セルフチェック
フレイルは身体面だけでなく、精神的・社会的な側面も含まります。以下のような問いに答えてみることも有用です。
最近外出の回数が減っていませんか
食事を一人で取ることが多くなっていませんか
疲労感や活力の低下を感じますか
このようなセルフチェックを通じて、身体・生活機能の低下に本人が早期に気づくことが、フレイル予防の第一歩となります。
「フレイルの診断基準」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「フレイル」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
フレイルかどうか確認する方法はありますか?
木村 香菜 医師
フレイルはJ-CHS基準などを用いて評価されます。指輪っかテストや握力測定などの簡易チェックも目安になります。
フレイルの5つの評価項目は何でしょうか?
木村 香菜 医師
体重減少、疲労感、筋力低下、歩行速度低下、身体活動量低下の5項目です。
フレイルになりにくいBMIの基準はありますか?
木村 香菜 医師
高齢者ではBMI20~24程度が目安とされ、やせすぎはフレイルのリスクとなります。
親がフレイル予備軍かどうか診断してもらうには何科を受診したら良いですか?
木村 香菜 医師
まずはかかりつけ医や内科、老年内科への相談が適しています。
フレイルで寝たきりにならないためには何歳頃から予防すべきでしょうか?
木村 香菜 医師
50代頃から生活習慣を意識し、運動や栄養管理を行うことが望ましいです。メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防と管理を通じて、脳卒中、心臓病、腎臓病のリスクを減らし、または重症化を防ぐことが60歳~65歳以降のフレイルの予防につながります。
まとめ フレイルの診断基準は5項目ある!
フレイルは、「年齢のせい」と見過ごされがちですが、明確な診断基準に基づいて評価できる状態です。日本では、体重減少、疲労感、筋力低下、歩行速度の低下、身体活動量の低下という5項目からなる診断基準(J-CHS基準)が用いられています。
フレイルは放置すると、転倒や要介護、認知機能低下などにつながるリスクがありますが、診断基準を正しく理解し、早い段階で対策を始めることで進行を防ぐことが可能です。体重や活動量、歩行や筋力の変化に注意し、気になる点があれば医療機関へ相談することが、健康寿命を延ばす第一歩となります。
「フレイル」で考えられる病気と特徴
「フレイル」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
整形外科系の病気
ロコモティブシンドロームサルコペニア
脳神経内科系の病気
認知症軽度認知障害
内科系の病気
低栄養
肥満
精神科系の病気
うつ病フレイル状態は、上記の病気と密接に関係しています。診断基準ならびにセルフチェックをして、早期発見と対策につとめましょう。
「フレイル」に関連する症状
「フレイル」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
背中がつる
肩が痛い足がだるい疲れやすいよく転ぶペットボトルの蓋が開かない
人と会話していない
フレイルでは筋力低下や身体機能の衰えが進むため、日常生活の中でさまざまな不調として現れることがあるのが特徴です。
参考文献
高齢者の低栄養予防-厚生労働省健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~
フレイルの診断 | 健康長寿ネット
