「急に眠気に襲われることが増え、起きると全身が…」難病手術の後遺症で“てんかん”を発症した間瀬翔太(40)が今も苦しむ“記憶障害”の実態〉から続く

 33歳のとき、10万人に1人の難病「脳動静脈奇形」を発症した、俳優の間瀬翔太さん(40)。

【写真】手術後に左目の周りなどが腫れてしまった痛々しい姿の間瀬さん。病室を訪れた“よく似た”母親とのツーショットも

 手術後は後遺症のてんかん・記憶障害に苦しみ精神障害者手帳も取得したが、自身が入院中に受けた気遣いに感動して2025年には准看護師資格を取得。

 自分が障害者になることで初めてわかったこと、准看護師資格を取得した理由について話を聞いた(全3回の3回目)。


「難病インフルエンサー」としての活動も始めた間瀬翔太さん ©文藝春秋 撮影・榎本麻美

◆ ◆ ◆

--てんかんによって精神障害者手帳を取得されたのですよね。何か変わったことはありますか?

間瀬 変わったというよりも気づいたこととして、想像以上に理解されていないものなんだなとよく感じます。たとえばてんかんの発作が心配なので電車の優先席に座らせてもらうことがあるんですけど、月に1回くらいは面と向かって「邪魔だ」と言われます。障害者用のトイレも出るときによく睨まれますね。

--見た目でわからないからこその苦労もあるのですね。

間瀬 障害者向けイベントに呼んでいただくこともあるのですが、障害者であると信じてもらえないことも多いですし、「障害者なのになんでそんなに派手な格好をしているの?」と言われることも。それで逆に「障害者でもこういう格好してもいいんだよ」と言うためにあえて金髪にしてアクセサリーをつけている面もあるんです。

「マークを着けているだけで『ズルしたい人』と勘違いする人がいて…」

--ヘルプマークなども見るようになりましたが、間瀬さんも外出時などに着けることはあるんですか?

間瀬 てんかんの発作があるので、病名や既往歴、発作が起きた場合にお願いしたい対処法や父親の電話番号を書いて腰につけていました。でも最近はつけるのをやめちゃったんです。

--えっ、どうしてですか?

間瀬 マークを着けているだけで「ズルしたい人」と勘違いする人がいて、ネットで悪口を書かれることも何度もあって……。そんなふうに見られるならつけるのも怖いなって思ったんです。

 確かに最近はアクセサリーとしてつけたり転売する人もいるからか、本当に病気で必要で着けていると思ってもらえないこともあるんですよ。

--「ズル」ですか。そういう人は多いんですか?

間瀬 いえ8割くらいは優しい人で、強面の男性が電車で「ここに座っていいよ」って声をかけてくれたり、こんなに助けてくれる人がいるんだと驚いたこともあります。

 ただ2割くらいなんですけど当たりが強い人もいるので、総合すると今はヘルプマークをつける方が損なのかなと思ってしまいますね。

--SNSでも妙に当たりが強い人は見かけます。

間瀬 SNSは2割どころじゃないかもしれませんね(笑)。てんかん患者は発作が出ているときは自動車は乗れないんですけど、自転車は禁止されていないんですよ。それで調子が良いときに自転車にまたがった写真を載せたら、「なんで乗ってるんだ」って批判されて。

 あとは動物園や水族館が障害者手帳で割引になることを「俺らの税金で生活してるのに」と言われたり、ディズニーランドへ行っても「今そうやって楽しむ必要があるのか」と書かれたり。

--そういう反応に対してどんな風に思っていますか?

間瀬 なるべく迷惑をかけないようにしなくちゃ、とは思ってます。バスを降りるときに障害者手帳で割引してもらって5秒くらいかかったら後ろの人に舌打ちされたこともあったので、最後に降りるようにしたり。

--色々と気を遣っているのですね。

間瀬 でも、健常者の人ばかりの責任ではないと思うんです。障害者側にだって色んな人がいます。口が悪い人や、席を譲ってもらったのにお礼を言わない人もいますよね。勿論、体調や症状で、悪意はなくてもそうなってしまう人もいると思いますが、見た目だけではわからない。そんなすれ違いが双方に生じてしまって、結果として相互に無理解になっていることがあるようにも思います。

 僕は33歳まで健常者として生活していて、急に障害者になりました。どっちの気持ちもわかる“中途障害者”として、視点もバランスよく持ちたいんです。

「何人かから『病気のことを知らないのに』と言われたんです」

--間瀬さん自身もストレスで看護師さんに当たってしまったりと荒れた時期もあったそうですが、周囲に当たってしまう障害者の気持ちは理解できますか?

間瀬 そうですね。今まで当然だった健康な生活ができなくなるストレスや、ちょっとした障壁でも毎日積み重なる中でフラストレーションが表に出てしまう人が大半だと思います。

 僕だって芸能活動をしてなければ、もっとイライラを表に出してしまっていたでしょうし。

--どういうことでしょう?

間瀬 僕の態度が悪かったら見ていた人がSNSに書くかもしれないし、そんなことになったらファンの方や応援してくれる方が悲しむ。みんなの顔を思い浮かべると、自然と立ち振る舞いに気を付けることが出来るようになった、と思います。

--2025年に准看護師資格を取得した時も、賛否の反応があったように見えました。

間瀬 「難病インフルエンサー」と名乗りはじめた時に、何人かから「病気のことを知らないのに」と言われたんです。それなら解剖学や疾患のことをちゃんと勉強しようと思ったけど、僕は中卒でしたし、病気もあるので取れない資格もありました。そこでまずは准看護師資格を目指すことにしました。

--記憶障害を抱えての勉強は大変だったのでは。

間瀬 手術を受けた後に驚いたのは、小学校で勉強していたことをほとんど忘れてしまっていたことでした。なので術後は小学生の漢字ドリルや算数からやり直して、中学レベルに戻るまでに4年かかりました。准看護師を取るのにさらに2年、高卒認定試験の勉強も並行していました。

--芸能活動をしながらの勉強はすごいです。

間瀬 それでもネットでは、「なぜ“准”看護師なの? 甘えじゃないの?」と何度も叩かれてきました。今は高卒認定試験にも合格したので、いちおう正看護師を取るための学校にも行けるようになりました。ただ「病院で働いてないくせに」と攻撃されることもあって、キリがない感じもしますね。

--病院で働きたいという思いも?

間瀬 もちろん現場に立ちたい気持ちはあるんですが、医療行為をしている時に記憶障害を起こしてしまったら最悪の事態もありえるので、正直現実的ではないのかなと……。

 ただ実習で患者さんと接する中で医療の仕事のおもしろさを感じたので、いつかは福祉や保育など、広い意味でのケアの仕事に関わりたいですね。

--どんなおもしろさが印象的でしたか?

間瀬 僕は人と接するのが好きなほうで、コミュニケーションスキルはクラスでも多分一番だったと思います。なので、気難しい患者さんとも1日で打ち解けることが出来た時は嬉しかったし、おもしろいと思って。仕事をしていく上でそういうのがあるのは、モチベーションに繋がりますよね。

--何か間瀬さんならではのトーク術が?

間瀬 僕もそうだったからわかるんですけど、患者さんは早く退院したくて勝手に動いちゃう人が多いんです。それで看護する側はもちろん動いちゃダメと伝えるんですが、患者さんは「あんたに私の気持ちはわからないでしょ」と思っている。

 でも「実は僕もこういう経験をしているからお揃いだね」って打ち明けると、驚いてそれからは素直に聞いてくれたりするんです。

「『無理しないで』と言われてしまうと遮断されているような感覚があるんです」

--難病を経験した間瀬さんだからこそ伝えられることがあるのですね。

間瀬 実習では手術後に1日でも早く立ちたがる車椅子の患者さんに出会いました。止めるのが正しい対応ではあるんですけど、自分の限界を自分で決めたい気持ちもすごくわかるので、先生に相談したうえで「立ちたい?」と聞いて、隣で支えて立つ練習を一緒にしたこともあります。

--環境を整えたうえで、患者さんの気持ちに寄り添った。

間瀬 というのも僕自身も「無理をしてでもやってみたい」と思うときがあるんです。睡眠不足になるのはわかってるけど夜遅くまでがんばりたいこともあるし、普段は控えてるお酒をたくさん飲みたい日もあります。

--病気を公表してから何度も「無理しないで」と言われてきたわけですよね。

間瀬 そうなんです。僕も健康だった時期は病気や障害のある人に「無理しないで」と自然に思っていました。でも自分が障害者になって感じたのは、「無理しないで」と言われることの苦しさ。

 良かれと思って言ってくれてるのはわかるんですけど、「無理しないで」と言われてしまうと遮断されているような感覚があるんです。

--ただ相手が心配な時に、どんな言葉をかけるのがいいんでしょう。

間瀬 お芝居の仕事で「3つ役があって、どれも間瀬くんならできると思うんだけどどれがいい?」と聞いてもらえたときは、僕に選択権をくれた感じがしてうれしかったです。

 あとは「何かあったら頼ってね」と言ってもらえると、どこまで頑張るかを自分で決められるので突き放された感じがない気がします。

 その人の限界は、障害者であっても自分で決めたいですから、選択できることが大事なんじゃないかなと思いますね。

(雪代 すみれ)