「りくりゅう」らメダリスト東京集結…ミラノ五輪で変わった“勢力図” 史上最多24個が示す次の道
25日、東京のど真ん中でミラノ・コルティナ五輪「応援感謝パレード」
ミラノ・コルティナ五輪とパラリンピックで活躍したTEAM JAPANの「応援感謝パレード」が25日、東京・日本橋で行われる。史上最多24個のメダルを獲得した五輪のアスリートやパラリンピアンたちが、日本橋中央通りの700メートルを歩いてファンに感謝を伝える。五輪閉幕から2カ月以上が過ぎているが、これは五輪後も試合が続いた選手たちのスケジュールに配慮してのもの。冬季競技のシーズンも終わり、豪華な顔ぶれがパレードに参加する。
フィギュアスケートからは「りくりゅう」ペアらメダリスト8人が勢ぞろい、スノーボードも金の村瀬心椛や戸塚優斗、現役引退を表明したスピードスケートの高木美帆さんらほとんどのメダリストが参加予定だ。4個のメダルを獲得したパラからもアルペンスキーで銀メダル2個の村岡桃佳ら3人のメダリストが参加する。
夏季大会はメダリストのパレードだが、今回はメダルを逃した選手も登場する。カーリング女子のフォルティウスやアイスホッケー女子「スマイルジャパン」の選手たち。日本オリンピック委員会(JOC)と日本パラリンピック委員会(JPC)の発表によればオリンピアン72人、パラリンピアン43人が日本橋を練り歩く。
メダリストの顔ぶれを見て思うのは、冬季五輪が「全国区」になったということ。これまで、冬季五輪で活躍する選手の多くは北海道や長野、東北地方など雪国や寒い地域の出身者だった。全47都道府県から金メダリストを輩出している夏季五輪に対して、絶対数が少ないから当然とはいえ冬季五輪金メダリストの出身は偏っていた。
これまで、日本が獲得した冬季五輪のメダルは100個。前回22年北京大会までは76個で団体種目もあるためメダリストは78人いるが、34人は北海道出身で8人が長野県出身。この2つで42人と過半数を占めていた。ところが、ミラノ・コルティナ大会では25人のメダリストのうち北海道は最多とはいえ6人で長野は2人とその割合が減り、新たに千葉県や京都府出身のメダリストが誕生した。
金メダルではさらに顕著。北京大会までの17個で金メダリストは21人いるが、半分以上の11人が北海道出身。続くのは長野県の3人で、岩手、宮城が2人、群馬、大阪、新潟の各県に1人ずついる。7道府県しか冬の五輪金メダリストは出ていなかった。
ミラノ・コルティナ大会では、これが一変した。「りくりゅう」の木原龍一は愛知県、三浦璃来は兵庫県。スノーボードの村瀬心椛は岐阜県、深田茉莉は愛知県、木村葵来は岡山県、戸塚優斗は神奈川県。いずれも地元に初の金メダルをもたらした(愛知県は一気に2個)。
全国に広がった冬季五輪のメダル…雪や氷がなくてもできる
愛知県はもともとフィギュア王国で冬季五輪への関心も低くなかったが、これまで冬のスポーツと縁遠かった地域でのメダル獲得は大きな影響をもたらす。県や市で栄誉賞などの表彰や報告会、パレードなどがあり、そのたびに地元メディアが報じて話題になる。これまで関心がなかった層も「冬の五輪」を意識する。
スキーで通学し、校庭に張ったリンクで滑っていた子どもたちが成長し、かつての冬季五輪の主役になった。しかし今大会の主役は、室内リンクで育ったフィギュアスケーターや、夏でも練習できる施設で技を磨いたスノーボーダーたち。温暖化の影響で天然の施設は減るが、今や雪や氷がなくても冬季競技ができる時代になった。雪や氷と無縁の地域からでも冬季競技のスターが生まれる。
初の分散開催となったミラノ・コルティナ大会で、日本のメダルも分散された。北海道や長野県など一部地域に固まっていた「冬季五輪の熱」を、フィギュアスケートやスノーボードが冬季競技とは無縁の地域にまで広げた。かつて「北海道・東北・長野連合」などと言われた冬季五輪日本選手団が、真の「TEAM JAPAN」になった。
五輪後のパレードは12年ロンドン大会からだが、冬季は今回が初の試み。活躍した選手が北海道出身者ばかりなら「札幌で」という声も出てきそうだが、冬季大会は「全国区」になった。五輪金メダリスト輩出都道府県が、7から12に一気に増えた。東京でやることにこそ意味がある。
JOCとJPCはパレードの目的を「TEAM JAPANへの応援に感謝するため」としている。五輪24個のメダル獲得をはじめ、選手たちが力を発揮できたのは、日本からの熱い応援があったから。選手たちもファンに感謝し、ファンと触れ合える場ができたことを喜んでいる。
と同時に、初のパレードには冬季競技、冬季五輪・パラリンピックの魅力を伝えて理解を深めることで、スポーツの価値を高めたいという主催者側の思いがある。大会の感動から2カ月、再び日本全国がスポーツの素晴らしさを思い返すイベントになる。
さらに、その先には冬季五輪招致への思惑もある。12年ロンドン大会後のパレードには、応援への感謝とともに招致活動中だった東京五輪開催へ機運を醸成する狙いがあった。今回も選手たちを通して冬季五輪の魅力が伝わり、市民の支持が得られれば、停止中の札幌五輪招致活動に動きが出るかもしれない。
冬の競技は海外での試合も多く、国内の大会も見に行くまでにハードルが高い。そんな遠い存在の選手たちが、雪と氷の舞台から都心に降りてくる。パレード開始は午前9時30分、日本橋にミラノ・コルティナの感動がよみがえる。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)
荻島 弘一
1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。
