60歳以降の骨粗鬆症予防には何を食べるといいか。管理栄養士の森由香子さんは「魚料理でもっとも栄養を効率良くとれるのは、生のままいただく刺身だといわれているが、骨粗鬆症予防の観点からは異なる」という――。

※本稿は、森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yulia Gusterina

■ビタミンAのとり過ぎで骨折リスクが2倍に

ビタミンAといえば、皮膚や粘膜を健康に保つのに欠かせない栄養素。特に鶏と豚のレバーに大変豊富なので、健康のためにもレバー料理を毎日のメニューにとりいれているという方もいるようです。

でも、ちょっと待ってください。

レバーなどでビタミンAをとり過ぎると、なんと骨折リスクが2倍に上昇するという報告があるのです。

少し専門的な話になりますが、ビタミンAはレチノイドといい、レチノール、レチナール、レチノイン酸に分類されます。このうち、特に問題なのはレチノイン酸で、とり過ぎると、頭痛や脱毛、筋肉痛などが起こることが知られています。

さらに近年になって、レチノイン酸は、骨を作る骨芽細胞のはたらきを悪くし、骨を壊す破骨細胞のはたらきを活性化してしまう可能性が示唆されているのです。

日本におけるビタミンAの食事摂取基準は性別と年齢によって異なるのですが、たとえば50〜64歳の推奨量は、男性が900μgRAE、女性が700μgRAEです。

これに対して、鶏レバーは1食分(50g)で7000μgRAE、豚レバーは1食分(50g)で6500μgRAEもビタミンAを含んでいます。いかにレバーに含まれているビタミンAの量が多いか、おわかりいただけたかと思います。

たまに食べるぶんには問題ありませんが、毎日のように食べるのは、決しておすすめできません。

特に最近は、サプリメントなどでビタミンAの過剰摂取になっている人も増えているので、とり過ぎて骨の健康を損なわないようにご注意ください。日々、バランスの良い食事を心がけていれば、必要なビタミンAはそれなりにとれるはずです。

付け加えると、ビタミンKの不足でも骨折のリスクが高まることがわかっています。

ひとつの食材に偏らず、いろいろな食品からビタミン類をバランス良くとって、骨折リスクが上がらないように注意しましょう。

■骨粗鬆症予防には刺身よりも焼き魚・煮魚を

一般的に、魚料理でもっとも栄養を効率良くとれるのは、生のままいただく刺身だといわれています。加熱調理をすると、EPA・DHAや水溶性のビタミンなどの栄養素が流れ出てしまったり、熱によって壊れてしまったりするからです。

でも、骨粗鬆症予防の観点からは、魚料理は刺身よりも骨つきの焼き魚か煮魚でいただくことを私はおすすめしています。

骨つきのまま調理することで、骨からカルシウムが溶け出して身の部分に含まれることで、カルシウム摂取量の増加が見込めるからです。

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さらに、煮魚を作るときは、少量のお酢を加えると、骨からカルシウムの一部が溶け出す量を増やせる上に、鉄や亜鉛のミネラル吸収率もアップします。

焼き魚の場合は、皮つきのまま調理し、ポン酢、レモン汁、かぼすなどの酸味のある果汁をかけると、皮に多く含まれている亜鉛や鉄などのミネラルも摂取しやすくなるのでおすすめです。

私たちの体内で骨が作られるときは、カルシウムだけではなく、亜鉛などのミネラルも重要なので、皮も必ずいただきましょう。

なお、魚の身の部分にはコラーゲンも豊富です。コラーゲンは、からだを作る上で欠かせない線維状のたんぱく質です。コラーゲンというと肌の組織として有名ですが、骨をはじめ、骨を支える筋肉や、血管など、私たちのからだの組織のあらゆる部位に含まれているので、骨の健康にも深くかかわっています。

ですから、骨粗鬆症予防のためにはコラーゲンの生成も必要なわけですが、魚の皮にも含まれている鉄などのミネラル分は、たんぱく質とともにコラーゲン生成の原料となります。

60歳を過ぎて骨粗鬆症が気になりはじめたら、魚を骨つきのまま調理したり、皮もいただく回数を増やしてみましょう。

■加齢による骨折リスクの上昇を防ぐ食事

高齢者の場合、寝たきりのきっかけになることもある、骨折。年齢が上がってくると、骨粗鬆症の人も増え、筋力不足などの影響もあって、骨折リスクはどうしても上昇します。加齢による骨折リスクの上昇を防ぐには、私たちはどんな食事を心がければよいでしょうか。

カルシウムをはじめ、骨を作るときに必要なミネラルやビタミンなどを含む食材を食べるのはもちろんなのですが、実は近年、別の角度から、骨折リスクを抑制する食事のポイントが語られるようになってきました。

カギを握っているのが、骨折とは一見関係なさそうに思える、ホモシステインです。

これはアミノ酸の一種であるメチオニンが肝臓ではたらくときに作られる成分で、近年になって、動脈硬化の原因物質のひとつとして知られるようになりました。

血中のホモシステイン濃度が高くなった状態を「高ホモシステイン血症」といい、からだを酸化させ(サビさせ)、動脈硬化をはじめ、さまざまな病気を引き起こす原因になることが明らかになってきています。

そして、このホモシステインが、どうも骨折とも関係があるらしいのです。近年のある研究では、血中ホモシステイン量が最も多いグループは、血中ホモシステイン量が最も少ないグループと比べて、男性で4倍、女性では1.9倍、骨折リスクが高かったと報告されています。

理由はまだはっきりしていないのですが、ホモシステインには、骨の構成成分でもあるコラーゲンが網目構造を作るのを阻害する作用があり、これが骨折リスクを上げる原因ではないかと考えられています。

高齢者の場合、骨折の2割近くは、血中のホモシステイン値が高いために起こるとする研究報告もあり、実は骨密度の低下以上に、ホモシステイン値の上昇が骨折に影響を及ぼしているのではないかという説もあります。

■動脈硬化や骨折、認知症を防ぐ食生活

ですから私たちは、中高年になったら、ホモシステイン値ができるだけ上がらないような食生活を心がけていく必要があるといえるでしょう。

そこで推奨されているのが、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB6といったビタミンB群の摂取。これらをしっかりとることで、ホモシステインが増えるのを抑制し、動脈硬化や骨折、さらに認知症をも防ぐ効果が期待されます。

森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)

葉酸が豊富な食材は、レバー、ほうれん草、菜の花、モロヘイヤ、そば、さつまいも、大豆、豆乳、納豆、スイートコーン、落花生、くるみ、焼きのり、鶏肉、卵、いちご、柑橘類など。

ビタミンB12は、のりをはじめ、かき、しじみ、あさり、さんま、たらこ、かつお、ぶりなどの魚介類と、うずらの卵などに豊富です。

ビタミンB6は、玄米、さつまいも、豆乳、大豆、ピスタチオ、スイートコーン、にんにく、バナナ、アボカド、かつお、鶏肉などに豊富です。

少しずつでも、毎日の食卓にとりいれて、骨折はもちろん、動脈硬化や認知症の予防に努めましょう。

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森 由香子(もり・ゆかこ)
管理栄養士
日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻)修士課程修了。2005年より、東京・千代田区のクリニックにて、入院・外来患者の血液検査値の改善にともなう栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導などに従事している。また、フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを行う。抗加齢指導士の立場からは、“食事からのアンチエイジング”を提唱している。『おやつを食べてやせ体質に! 間食ダイエット』(文藝春秋)、『1週間「買い物リスト」ダイエット』(青春出版社)など著書多数。
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(管理栄養士 森 由香子)