高額年俸が重荷に…結果が出ない「ベテラン選手」に突きつけられる“非情な現実”
順調な滑り出しを見せているソフトバンクに、思わぬ火種が持ち上がった。リリーフ右腕のオスナが起用法を巡って球団と折り合いがつかず、開幕から一軍メンバーを外れることになったのだ。【西尾典文/野球ライター】
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ある意味当然の訴えだが…
オスナはアストロズ時代の2019年に最多セーブのタイトルを獲得するなどメジャー通算155セーブの実績を持つ。2022年シーズン途中にロッテに入団すると、29試合に登板して10セーブ、9ホールド、防御率0.91という成績を残し、翌年からはソフトバンクに移籍している。2023年も26セーブ、12ホールド、防御率0.92とクローザーとして活躍すると、オフには4年総額40億円以上(推定)という超大型契約を結んで残留し、大きな話題となった。

しかし2024年は24セーブをあげたものの防御率は3.76と大幅に悪化。昨年も開幕から調子が上がらず6月には二軍降格となり、26試合の登板で8セーブ、6ホールド、防御率4.15と来日以来最低の成績に終わっている。今年のオープン戦でも8試合に登板したが、全て中継ぎでの起用で防御率は4.50という成績だった。
今回の騒動は抑えとしての起用を希望するオスナと、中継ぎとして起用する球団の間に対立があったと考えられる。4月14日にはソフトバンクの三笠杉彦GMが起用法について合意したと発表し、即日一軍登録されたが、場合によっては契約破棄の可能性もあったという。他球団の編成担当はこう話す。
「メジャーの選手と球団の契約は日本とは比べものにならないくらい細かい条件があり、選手が代理人に契約を任せるのはそのためです。実績のある選手が起用法やトレードについての条項が入っていることも珍しくありません。最終的には中継ぎでの起用も認めたようですが、オスナが抑えでの起用を訴えるのもある意味当然と言えるでしょう。球団内でも色々と意見はあったようですが、昨年抑えを務めた杉山一樹が怪我で離脱したこともあって何とか話し合いで解決したというところではないでしょうか」
一昨年にはメジャー通算178本塁打を誇るオドーアが巨人に入団したものの、オープン戦から調子が上がらずに二軍調整を打診されたところこれを拒否し、開幕前に退団ということもあった。メジャーで実績のある高額年俸の選手を獲得するということは、このようなリスクもあると言えそうだ。
しかしリスクが大きいのは球団だけではない。高額年俸の選手自身にも厳しい現実があるという。前出の編成担当者はこう話す。
「球団は選手のシーズン中の成績はもちろん、細かいプレーなどから査定し、それをもとに年俸の提示をします。FAで獲得した選手や、FA権を行使しながら残留した選手などは、通常の査定とは全く違う基準で金額が決められます。実績があるから当然と言えば当然なのかもしれませんが、そういう意味では査定は決して平等とは言えません」
シーズン前半の出遅れが命取りになるケースも
重要なのは、その先だ。
「ただ、年俸が高くなれば当然球団側が求める基準も上がり、結果を残せなかった時のダウン幅も通常の査定とは全く異なるものになります。大体前半戦が終わる7月頃には来季に向けての検討が始まり、まず年俸の高く、結果が出ていない選手をどうするかという話になります。そういった選手は交渉が長引くことも多いからです。後半戦は現場も当然来季以降に向けて新たな戦力を抜擢することが増えますから、ベテランはさらに厳しくなります。シーズン前半の出遅れが命取りになるケースもありますね」
一昨年では当時楽天でプレーしていた田中将大が開幕から出遅れて一軍わずか1試合の登板に終わり、オフの契約交渉では大幅な減額提示を受けて退団することになっている。田中は幸い、巨人からオファーがあり、今年もプレーを続けているが、現役続行の危機だったことは間違いないだろう。
今年も開幕してからここまで一軍での出場がなく、今年で契約が切れる高額年俸の選手は少なくない。主な選手をピックアップしてみると、西勇輝(阪神/推定年俸3億円)、梅野隆太郎(阪神/1億2000万円)、大瀬良大地(広島/2億円)、石山泰稚(ヤクルト/1億2000万円)、岸孝之(楽天/1億8000万円)、中村奨吾(ロッテ/2億円)といった顔ぶれで、いずれも高額年俸を背負う主力クラスの選手たちである。
他にも浅村栄斗(楽天/推定年俸5億円)、坂本勇人(巨人/推定年俸3億円)なども試合には出場しているものの、結果が出ていないのが現状だ。
ここまで名前を挙げた選手はいずれも実績が抜群で、球団にとっても功労者ばかりである。しかし田中将大のようにシビアな評価を下される可能性もあるだろう。残されたチャンスで年俸に見合った存在感を示せるか。どこまで巻き返せるか。高額年俸という“重圧”とどう向き合うのか、その真価が問われる。
西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
デイリー新潮編集部
