チョコレートが好きだ。私にとってチョコレートは自分のために買うもので、チョコレート商品が巷(ちまた)にあふれるバレンタインデーは自分のための祭りである。毎年、SNSで「#1日1チョコ」というハッシュタグをつけて、バレンタインデーからホワイトデーまで好きなチョコレートを紹介している。

 先日お会いした方が私のチョコレート投稿を話題にだした。「チョコレートが好きなんです」と答えた私に、その人は「チョコレート好きな人は甘えん坊なんですよ」と笑顔で言った。甘えん坊? チョコレートの話ではないのか……。私の困惑が伝わったのか、その人はチョコレート好きに甘えん坊が多いという結論に至った理由を説明してくれたが、どうも腑(ふ)に落ちなかった。「パートナーとか身近な人に心をひらいて甘えてみたらいかがでしょう。チョコレートを欲する気持ちが少し落ち着くかもしれません」と提案までされた。食べ過ぎだと心配してくれているようだったが、自分の説を覆す気はなさそうだったので話を変えた。しかし、数日経ってもなんとなく悲しい気持ちが残った。

 まず、私はチョコレートの量を減らす気はない。そして、誰かに甘えることでチョコレートへの愛が減るとは思えない。チョコレートを他者への依存心の代替品として扱われたように感じられ、悲しくなったのだと思う。私はチョコレートがただ好きなのだ。そこに理由はいらないし、原因を探りたいとも思わない。愛するチョコレートを、埋まらない何かの代わりにするつもりは毛頭ない。美味なるチョコレートに出会うために費やした時間と金銭と労力を悔やんだことはないし、「この世にこんなに素晴らしいチョコレートがある!」という感動を伝えたくてSNSで発信している。私はそんな混じりけのない好きがあることが幸福なのだ。好きの正体を知りたい人もいれば、「ただ好き」というシンプルな欲望をそっとしておいてもらいたい人もいる。=朝日新聞2026年4月15日掲載