『今夜、秘密のキッチンで』は『愛の、がっこう。』に続くか “年の差恋愛”ドラマの系譜
木南晴夏が主演を務め、高杉真宙と共演するドラマ『今夜、秘密のキッチンで』が、4月9日よりフジテレビ「木曜劇場」枠で放送される。
参考:木村文乃×ラウールが見せてくれた大きな夢 『愛の、がっこう。』は“人間を救う”作品だった
本作は、夫のモラハラに苦しむ専業主婦の坪倉あゆみ(木南晴夏)が、突然目の前に現れたイタリアンシェフ・Kei(高杉真宙)と夜のキッチンという秘密の空間で愛を育んでいく物語。共同テレビとマガジンハウスが共同開発し、3月に連載がスタートした黒沢明世による同名漫画が原作となっているが、ドラマでは異なるストーリーが展開されていくという。特筆すべきは、本作が「大人のファンタジック・ラブストーリー」と銘打っている点だ。なんでも、Keiは夜のキッチンにだけ現れる謎多きシェフで、そこに隠された“秘密”が物語の鍵を握っているとのこと。それを聞いただけでも今までにないラブストーリーになりそうな予感に胸が高鳴る。
一方で、SFやファンタジーを題材とした国内ドラマは少ない。特にロマンスファンタジーは、“トッケビ・シンドローム”と呼ばれる社会現象を巻き起こした『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』にはじまり、2024年に世界的ヒットとなった『ソンジェ背負って走れ』に至るまで、韓国から次々と名作が生まれているのに対し、日本では『恋はDeepに』(日本テレビ系)や『君が心をくれたから』(フジテレビ系)など、全くないわけではないが、数としてはかなり限られている。単純に予算の問題もあるのかもしれないが、日本では細かい部分にまでリアリティが求められる傾向が強めだ。たとえファンタジーであっても、現実社会に根ざしたメッセージ性や、自分の身に置き換えられる要素があるかどうかが視聴継続を決める重要な指標になっているように思う。
その点で言えば、1月期に放送されたドラマ『未来のムスコ』(TBS系)の原作者である阿相クミコが、本作の脚本を手がけていることは一つの安心材料となり得るのではないか。『未来のムスコ』は主人公のもとに未来から息子がタイムスリップしてくるという突飛な始まりながら、夢や子育てに奮闘する世の女性を鼓舞する内容で、ドラマも大きな反響を呼んだ。ファンタジーな設定で話題性を担保しつつ、地に足のついたストーリー運びで視聴者をしっかりと巻き込んでいく。その塩梅が絶妙な阿相の力量は本作でも発揮されるのではないだろうか。
■食×再生ドラマが近年のトレンドに また、『ワカコ酒』(テレ東系)や『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)を代表作に持つ阿相を筆頭に、脚本の共同執筆者である嶋田うれ葉は『パパと親父のウチご飯』(テレビ朝日系)、今西祐子は『新米姉妹のふたりごはん』(テレ東系)、『アリスさんちの囲炉裏端』(BS-TBS)などのグルメドラマを過去に手がけており、本作も“食”が一つのテーマになっている。
かつてはテレビ東京の専売特許だったが、近年は他局でも人気ジャンルの一つになっているグルメドラマ。特に主人公が食を通じて人生を再生していく、あるいは他者と心を通じ合わせていく作品は最近のトレンドと言えるだろう。難病にかかって生活が一変した女性が「薬膳」と団地に住む人々との交流を通して自分なりの幸せを見つめていく姿を描いた『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)は癒しのドラマとして話題になり、この夏にスペシャルドラマの放送も控えている。
本作でも「薬膳」が劇中で大きな役割を担っているようだ。薬膳といえば、中国料理のイメージがあるかもしれないが、高杉演じるKeiはイタリアン薬膳のスペシャリスト。イタリアンに薬膳の要素を取り入れた心と体に優しい料理が、料理の味や自分の存在意義までもわからなくなっていた木南扮するあゆみに心のときめきや自分らしさを思い出させていくという。劇中に登場した料理のレシピは公式SNSで紹介されるそうで、それもドラマの一つの醍醐味になっていくのではないか。
さらに、このドラマは「年の差ラブストーリー」でもある点に注目したい。年上女性×年下男子の組み合わせといえば、2025年7月期に同じく木曜劇場枠で放送された『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)が思い起こされる。真面目過ぎる高校教師と夜の世界で生きるホストの恋という刺激的な題材ながら、あまりに純粋で情緒的な物語や、主演を務めた木村文乃のピュアさを残した大人の演技と、相手役のラウールの瑞々しく繊細な演技がぶつかり合った時の美しい化学反応に多くの人が魅せられた。
木南はコメディからシリアスまで、ジャンル問わず幅広い役柄を演じ分ける頼もしさとチャーミングで親しみやすい雰囲気を兼ね備えている。その魅力は、離婚した夫の浮気が原因で傷つくことに敏感になりながらも年下男子との次の恋に進むアラフォー女性を演じた『9ボーダー』(TBS系)や、山田涼介とのバディ役で存在感を示した『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)で大いに発揮された。一方、高杉は昨年12月に結婚した波瑠との共演作『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)で圧倒的な家事スキルを誇る後輩男子を好演。恋愛ものではないが、NHK大河ドラマ『光る君へ』では姉役の吉高由里子と息ぴったりのかけ合いを見せていた。愛らしさもありつつ、全てを柔らかく受け止めてくれそうな包容力を感じさせる高杉は年上の女性俳優との相性がいいのだ。そんな木南と高杉がタッグで挑むラブストーリーは間違いないと断じていいだろう。
『愛の、がっこう。』の他にも、『silent』『わたしの宝物』『波うららかに、めおと日和』などの話題作を生み出してきたフジテレビ木曜劇場。再び木曜の夜にSNSが盛り上がる3カ月が訪れそうだ。(文=苫とり子)
