著者、読者、登場人物まで、みんなが忌野清志郎に「ありがとう」と歌ってる

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新年度が始まって環境の変化に戸惑う人も多いこの季節。疲れた心を休めるためにも、読書でリフレッシュしてみるのはいかがですか? おすすめの新刊4冊を紹介します。

『明日、あたらしい歌をうたう』角田光代/水鈴社/1870円

 今も忌野清志郎ファンなら本書を抱きしめてしまうはず。豆田新という少年の思春期に清志郎スピリッツが溶けた成長小説だ。シングルマザーの母くすかに、写真の清志郎が父だと信じこまされた新少年は、陽菜や匠人とバンドを始め、やがて劣等感をこじらせる。父と母の出会い、父の人柄と非業の死など、清志郎的な"善"がそこかしこにこぼれ、明るい涙が止まらなくなる。

『俺の恋バナを聞いてくれ』新川帆立/小学館/1870円

 蕾をほころばせたり満開になったりする恋バナ6話。コンサル業の尊が漢詩や町中華好きという同好の女性に出会うまで、英国の大学院に留学中の征爾が中国人の彼女が欲しがるブランドバッグを世界中に探す涙ぐましい努力、逃亡中の35歳の無職男が官憲の目も恐れずにするある決意。主人公達の社会階層がエリートと非エリートと極端だが、恋の時間は誰にも平等みたいだ。

『書店を守れ!』今村翔吾/祥伝社新書/1023円

 著者は新しい書店文化を創造しようと訴える。本は薄利だ。実際に書店を経営する著者が台所事情を明かし、一般には知られていない出版社・取次・書店の関係を解説し、書店と図書館の確執改善のために「本の甲子園」を提案する。47都道府県の代表を図書館員が審査、書店はこれを売るというお祭りだ。この春からトーナメント形式で選考が始まり、10月には頂上戦が。大注目だ。

『ある日、逗子へアジフライを食べに』大平一枝/幻冬舎文庫/858円

 重い腰を上げるというほどの決意もいらず、日常とは別の場所にひょいと行く。著者はこれを「こたび(小旅)」と呼ぶ。肝心なのは計画を立てないこと。夫と日帰りするアジフライの海辺旅、美容のための自分養生ホテル泊、秘密のバーに迷い込み料金に目の玉が飛び出た京都旅行。出張を利用した自費での前泊や後泊の楽しみは大いに同意するところ。働く熟年女性に刺さります。

文/温水ゆかり ※女性セブン2026年4月16・23日号