「私たち、子どもは諦めようか…」世帯年収670万円・26歳共働き夫婦、計650万円の「奨学金ダブル返済」で“親になる未来”が遠のく過酷な現実
職場結婚をしたKさん(26歳)夫婦の世帯年収は670万円。しかし、夫婦ともに学生時代に借りた奨学金の返済があり、毎月合計4万円が口座から引き落とされています。「将来は子どもがほしい」と願っていた2人ですが、産休・育休中の収入減と奨学金の支払いをシミュレーションした結果、経済的な現実の厳しさに直面。奨学金のダブル返済が家計を圧迫し、理想の未来が遠のいていく20代夫婦の事例を紹介します。
「奨学金」のダブル返済が家計を圧迫
「夫婦で協力して働けば普通に生活していけると思っていました。でも、毎月必ず口座から引かれていく4万円の負担は、想像以上に重いです……」
中堅企業で事務職として働くKさん(26歳)は、昨年、職場の同僚である夫(26歳)と結婚しました。Kさんの年収は約300万円、夫は営業職で年収約370万円、世帯年収にすると約670万円です。決して将来安泰な収入ではありませんが、2人で生活していくには十分な額のはずでした。
しかし、2人の家計には大きな固定支出が存在します。それは「夫婦そろっての奨学金返済」です。
Kさんは約300万円、夫は約350万円の奨学金を大学時代に借りており、それぞれ毎月約2万円ずつ、夫婦合計で毎月4万円の引き落としが続いています。
「奨学金返済がなければ、もう少し家計に余裕が生まれるんですが……」
2人の手取り額は合わせて月に35万円ほど。そこから家賃や光熱費、食費、日用品代、保険料、そして4万円の奨学金を引くと、将来のための貯金に回せるお金は少ししか残りません。
「毎月4万円の固定支出」で遠のく理想の未来
結婚当初から「子どもは2人ほしいね」と話していたKさん夫婦ですが、最近になってその計画をためらうようになりました。きっかけは、Kさんが産休・育休を取得した場合の家計のシミュレーションをしたことでした。
「もし私が育休を取ったら、お給料がなくなって手当だけになるから、収入が一気に減るよね。でも、奨学金の4万円は毎月必ず引かれるし、そこに赤ちゃんのおむつ代やミルク代が加わったら。やっぱり、絶対にお金が足りなくなるよ……」
Kさんの言葉に、夫も黙り込んでしまいました。夫の収入だけで生活費と奨学金4万円を払い続けるのは難しく、これまでの貯金もすぐに底をつきます。そして、2人の奨学金の返済は、あと10年以上続きます。
「このままだと不自由なく育てられないね。私たち、子どもは諦めようか……」
2人で話し合った結果、「今の経済状況で子どもを育てるのは厳しい」という現実的な結論に至りつつあります。
「学生時代に借りた奨学金が理由で、子どもを持つかどうかを悩むことになるなんて思ってもみませんでした。ただ普通に結婚して、親になるという未来を描きたかっただけなのに……」
奨学金返済が若者のライフイベントに与える影響
労働者福祉中央協議会の調査によると、JASSOの貸与型奨学金利用者の借入総額は、平均約345万円(中央値約312万円)にのぼります。もし同じように奨学金を借りていた2人が結婚した場合、新婚生活のスタート時点で世帯として約600万円以上の負債を抱えることになります。
奨学金の返済が若者の人生に与える影響は、客観的なデータからも読み取ることができます。労働者福祉中央協議会が実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査」において、「奨学金の返還が生活設計に影響している」と回答した人の具体的な影響事項を見ると、「貯蓄」への影響が最も高いものの、「結婚」や「出産」といったライフイベントに影響していると答えた割合も高く出ています。
とくに「出産」に関しては、産休・育休中の収入減少と、奨学金という固定支出の継続が家計に与える影響は小さくありません。毎月の負担を和らげるための「減額返還制度」などの救済措置もありますが、根本的な返済総額が減るわけではないため、期間が延びることでかえって教育費のピークと重なってしまう懸念もあるでしょう。
学ぶための支援であったはずの奨学金という固定支出が、結果として若い世代が親になるという未来の選択に直接的な影響を及ぼしている現状があります。当事者の家計管理だけでなく、社会全体としてどのような支援体制を整えていくべきか、改めて議論が必要な状況といえます。
[参考資料]
日本学生支援機構(JASSO)「奨学金事業に関するデータ集」
労働者福祉中央協議会「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査」
