「家族に迷惑は…」老老介護の末に妻を亡くした92歳父の“意外な行動”。遺品整理で大切なことは
親が高齢になるにつれ、まず心配になるのが「実家の片付け」。いつ始めればよいか、大量のものをどうすればいいのかと、悩みはつきないもの。そんななか、「92歳の父が実家の片付けをする姿を見て、私自身もものへの執着を手放せた」と語るのは、整理収納アドバイザーの新田由香さん(60代)。新田さんが実感した、実家の片付けや遺品整理をスムーズに進めるために大切なことについて、詳しく話を聞きました。

80代で始まった老々介護と父の変化

きっかけは5年ほど前。元気だった母が急に弱り始め、介護が必要になったことでした。実家は、当時85歳の母と、87歳の父のふたり暮らし。予期せぬ老々介護の始まりです。
ヘルパーさんが家のなかに入り、母のお世話や料理をしてくださるようになると、どこになにがあるのかひと目でわかる状態にする必要がでてきました。
それまで家事などまったくしてこなかった父でしたが、母の服や下着、タオル、紙オムツなどを種類別に分け、驚くほどきれいに整理整頓し始めたのです。
キッチンも、他人がスムーズに動けるように工夫されていました。必要なものがサッと手に取れる様子を見て、「お父さん、やるな…!」と思わず感心してしまいました。
父の背中を押した「遺品整理」のリアル

あるとき、父がこんな話をしてくれました。
「親が亡くなったあと、残された子どもたちが、遺品の整理に苦労しているのをテレビで見たんや。だからわしも今のうちに、いらんもんはちょっとずつ片付けていかなあかんなーと思ってな」と。
その言葉を受けて私も、「そうやね。今は実家の片付けで苦労している人が本当に多いみたい。そうしてくれたらめちゃくちゃ助かるわ!」といった会話をしたのを覚えています。
それからは、私も実家に行くたびに、自分が置いていった思い出の品などを持ち帰るようになりました。そのなかで見つけた、父と母がまだ若かった頃に私の娘たちと一緒に写した写真は、今ではかけがえのない宝物です。
母亡きあと、90代の父が始めた「意外な行動」

2025年、母が亡くなりました。
今まで60年以上連れ添ってきた伴侶を亡くした父の悲しみは、計り知れません。90代になった父の突然のひとり暮らしに、私は心配でたまりませんでした。今までヘルパーさんや訪問看護の方たちが頻繁に出入りしてくださってにぎやかだったのに、本当にだれも来なくなるのですから。
しかし、そんな心配をよそに、父は母の服の整理をすぐに始めたのです。もしかしたら、寂しさよりも、長年の介護生活から解放された気持ちの方が大きかったのかもしれません。
古着を回収してくれる場所へ姉が服を運んだり、譲れそうにないものは潔く処分したりと、母の遺品はあっという間に片付いていきました。
「どうしても捨てられないもの」の手放し方

潔い父ですが、どうしても「もったいなくて捨てられないもの」もあります。
先日実家ですてきな着物の帯を見つけたので「これ、売れるかもよ?」と提案してみました。すると父は「だれでも使ってくれる人がいるなら、タダでもかまへん」と言ったのです。
「捨てる」ことには抵抗があるけれど、「だれかが使ってくれるなら」手放せる。そんな思いを抱える人は多いのではないでしょうか。
父の代わりに、私がフリマアプリで次の方へつなぐことにしました。
父の姿が教えてくれた「未来のための片付け」

そんな父を見て、私自身も「ものへの執着」に気づかされました。
「いつか使うかも」と何年も置いていたものを「今もいらないし、これからもいらない」「もっと軽やかに暮らしたい」と思えるようになったのです。
私にも2人の娘がいますが、元気なうちに身軽になっておこう! と決意しました。
娘たちを困らせたくないという父の言葉は、けっしてうしろ向きな「終活」ではありません。92歳になっても、まだまだ元気に楽しく生きていくための、前向きな「未来」を見据えた行動なのだと感じます。
母の介護で自由がきかなかった分、これからは自分の時間を大切に。「100歳まで元気に生きてね!」そんな願いを込めて、父の片付けに寄り添いたいと思います。
