記事のポイント
著名人の参入や健康志向の高まりを背景に、女性を意識した新しいエナジードリンクブランドが増えている。
アップデートはカフェインの代わりにパラキサンチンを採用し、体に寄り添う新しいエネルギー体験を提案する。
Z世代の需要拡大によりエナジードリンクはアルコール市場のシェアも奪いながら成長を続けている。


2月、エナジードリンク市場の競争はさらに激化した。創業4年のスタートアップ、アップデート(Update)がキム・カーダシアン氏を共同創業者として迎え入れると発表したためである。

これによりアップデートは、消費者主導型ビジネスを構築し、ブランディングし、スケールさせてきた彼女の知見も得ることになる。

ブランドの最大の特徴は、カフェインを使用せず、代わりにパラキサンチンを使用している点である。パラキサンチンとは、人間の体内でカフェインから自然に生成される活性化合物で、カフェインと同様の作用がある。

カーダシアン氏を共同創業者として迎えた発表に加え、アップデートは3月1日に、最大の小売パートナーであるウォルマート(Walmart)でも展開を開始した。

4000以上の店舗で、限定のバラエティパックを発売する予定である。その後、今春の後半にはほかの大手小売店でも販売を開始する見込みだ。

健康志向の若い女性を意識したエナジードリンクの新しいデザイン潮流



ここ数年、セルシウス(Celsius)によるアラニ・ヌ(Alani Nu)の買収のような取引は、エナジードリンク市場に新しい美的感覚を確立するのに一役買ってきた。それは、より健康志向製品に関心を持つ若い女性に向けたデザインである。

この新しいデザインは、従来ブランドに多く見られる派手でダークなパッケージデザインと距離を置いている。

モンスター(Monster)でさえ、「女性向け」ゼロシュガーエナジードリンク「フラート(Flrt)」を発売すると発表した。

こうしたなか、アップデートはカーダシアン氏の参画と、従来のエナジードリンクに代わる新たな選択肢への関心の高まりが、成功の方程式になることを期待している。

カーダシアンが共同創業者に就任するまで



アップデートによると、カーダシアン氏は「機能性ウェルネスへの個人的な関心をきっかけに、2023年にアップデートを発見した」という。その後、同社と面会し、フレーバーや配合、パッケージに関するフィードバックを行った。

カーダシアン氏は2025年半ばに正式に共同創業者としてブランドに参加し、小売店での展開に合わせて参画した。

同社はそのタイミングで商品ラインを刷新し、ベリー、グレープ、ピーチ、マンダリン、パイナップルなどの新しいフレーバーを投入した。いずれもカロリーゼロ、砂糖ゼロである。

「強烈な刺激」から「意図的なエネルギー」へと変わる市場



「エナジーカテゴリーは歴史的に、強烈さ、大きな缶、より強いフレーバー、高いカフェイン量を中心に発展してきた」と、アップデートの共同創業者兼CEOであるダニエル・ソロモンズ氏はModern Retailに語った。

ソロモンズ氏によると、パラキサンチンを一般消費者に広めることに加え、アップデートの新しい洗練されたパッケージは、カーダシアン氏の特徴的なミニマリストブランディングから大きなインスピレーションを得ており、柔らかなパステルカラーの配色を採用している。

一方で、以前のブランドは、光沢のある鮮やかな色の缶を使用していた。

ソロモンズ氏は、同社が全米規模で拡大するなかで、「カーダシアン氏が商品、ブランド、クリエイティブの方向性の形成に積極的に関与している」と述べた。

ソロモンズ氏は、長年にわたりレッドブル(Red Bull)やモンスターのような大手企業によって確立されてきたエナジードリンクの攻撃的な見た目や飲み心地が、「パフォーマンス向上には、震えや動悸、急激な疲労、睡眠の妨げなどの代償が伴う」という考えを強めてきたと付け加えた。

「いま起きているのは、より意図的なエネルギーへのシフトである」と同氏は語る。

ウェルネス志向の若い女性がエナジードリンク市場を押し上げる



アップデートは女性専用ブランドとして厳密にマーケティングされているわけではないが、配合とブランディングは現代のエナジードリンク消費者の嗜好を反映しているとソロモンズ氏は言う。

多くはウェルネスに関心を持つ若い女性である。

「消費者は依然として集中力やパフォーマンスを求めている」と同氏は述べる。

「しかし同時に、商品が自分の体にどのような影響を与えるかについての意識も高まっており、過度な刺激ではなく、明敏さやコントロールを支える選択肢を求めるようになっている」。

「ブランドが成長するにつれて、キム・カーダシアン氏が共同創業者として加わったことは、ビジョンをさらに強固にするものとなった」とソロモンズ氏は語る。

パラキサンチンを配合することで、アップデートはエネルギーが消費者の体に「逆らうのではなく、寄り添う」形で働くことをめざしている。

Z世代の需要拡大とともに広がる女性向けエナジードリンク市場



業界関係者は、アップデートの参入を、より健康志向のエネルギー源に対する消費者の需要を測る試金石としてみている。

ウェルネス・グロース・ベンチャーズ(Wellness Growth Ventures)の創業者兼マネージングパートナーであるレイチェル・ハーシュ氏は、エナジードリンク市場には、若い女性向けに設計された複数のブランドを支えるだけの需要が十分にあると述べた。

ハーシュ氏は、背景として世代的な変化を挙げる。缶入りエナジードリンクへのシフトが進んでいることが要因のひとつだ。

Z世代はエナジードリンク市場を急速に拡大させており、この世代は前の世代よりもクリーンラベル(原材料表示がシンプルなものを好む消費トレンド)のエナジードリンクに多くのお金を使っている。

「アルコールからも大きなシェアを奪っており、なお成長を続けている」とハーシュ氏は語る。

「私の感覚では、サプリメントカテゴリーに近い存在である」。

女性向けエナジードリンク市場は拡大途上



このカテゴリーにすでに参入しているブランドのなかには、アップデートの参入がサブカテゴリーの正当性をさらに高めると見る向きもある。

ゴージー(Gorgie)の創業者兼CEOであるミシェル・コルデイロ・グラント氏もそのひとりである。「正直に言うと、最初の反応は純粋な興奮だった」とグラント氏は語る。

「キム・カーダシアン氏が女性向けエナジードリンク市場に参入したことは、カテゴリーがどこへ向かっているのかをすべて物語っている」。

グラント氏は、カーダシアン氏のような著名なセレブリティ起業家が市場の可能性を見いだすことは大きな意味を持つと述べた。

「これは、カテゴリーが我々が創業当初から知っていたことをはっきりと言葉にしたようなものだ。女性は長いあいだエナジードリンク市場で十分に満たされてこなかった。それを変えるチャンスは非常に大きい」と同氏は語る。

「女性を意識しつつも、実際には男女両方に向けたブランドやクリエイターが増えているのを見るのは素晴らしいことである」。

ただし、いわゆる「女性向けエナジードリンク」カテゴリーを、カーダシアン氏の影響力がさらに加速させるかどうかは、まだ判断するには早いとハーシュ氏は言う。

「非常に賢い戦略であり、大きな可能性を秘めている」と同氏は語る。「彼女がどれほど深く関与するかにもよるが、簡単に勝者になる可能性はある」。

一方グラント氏は、エナジードリンクのような急成長カテゴリーでは「勝者総取り」にはならないと考えている。市場は若い女性以外にもさまざまな層に支持されているからだ。

「重要なのは、誰がもっとも執念深く消費者の声に耳を傾けているかである」と同氏は語る。「いま消費者が我々全員に伝えているのはこういうことだ。『よりよいエネルギー、よりよい原材料、本当に自分たちのために作られたと感じられる製品が欲しい』のである」。

[原文:Kim Kardashian's Update is the latest brand to give energy drinks a refresh with women in mind]

Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)