武者陵司「2024年なぜ米日が世界経済をけん引するのか」
ここ数年、世界経済は驚天動地の変化に見舞われた。だが、2023年までで世界経済情勢の基本的軸はおおむね定まり、2024年はその延長線上での展開が想定される。
巨視的に見れば、1)地政学、米中対立と2)新産業革命を軸として世界経済は展開されていくだろう。また、世界経済の牽引車もシンプル、米国と日本であろう。なぜなら両者が1)、2)の受益者だからである。
米中対立が決定的に重要な理由は、過去数十年間続いた国際分業が抜本的に作り変えられるからである。米国を始めとする自由主義諸国は中国への供給力依存に耐えられず、総力を挙げて脱中国の供給体制構築を進める。その最大の受益者が、かつて米国の日本叩きで沈下していた日本である。半導体、自動車、鉄鋼などかつて日米が競い合っていた分野で、厚い日米産業協力が進む。超円安はそのための必須かつ強力な手段である。中国に代替できるハイテク製造業の産業集積を構築できる国は日本しかない。
これからの世界の最大の成長領域は、インドでもアフリカなどグローバルサウスでもなく、「第七大陸」、国境のないサイバー空間である。この「第七大陸」を米国企業が圧倒的に支配している。スマートフォンの普及一巡で一旦成熟期入に入ったかと思われていた「第七大陸」は、ChatGPTなどブレークスルー新技術により次の成長段階に入った。「第七大陸」の支配者GAFAM+の本当の強さはまだ見えていないのではないか。「第七大陸」のゲートキーパーが半導体・エレクトロニクスというハードウェア。日本が得意とするサイバーフィジカルインターフェイスがものをいう時代でもある。
覇権国通貨ドルはその強力な技術優位と企業の稼ぐ力により、さらに強化されていくだろう。強いドルは、米国が海外から安く仕入れ海外に高く売ることを通して、米国に不当と思えるほどの交易利得とシニョリッジ(=返済義務のない借金)をもたらす。強いドルによって倍加される米国の経済優位性は、時間をかけつつ専制諸国家を圧倒していくに違いない。専制国家専横の悲劇はウクライナを見れば明らかで、世界は強いドルを通した米国覇権の強化を歓迎するだろう。その米国の最大の軍事、経済、産業面での同盟国日本はかつてなく有利な立場にある。
(1)驚くスピードで純化する専制国家群とそこで進行する経済頽廃
波乱、サプライズに満ちた2022~2023年の展開の中で、最も重要な歴史的要素は専制国家群が急スピードで純化し、同時にそれらの国々の経済頽廃が進んだことであろう。それとともに西側諸国の対峙するべき相手は明確になった。環境も人権や格差などの課題も従属要素に下がった。
●結束強める専制諸国家
ウクライナ戦争では、侵略国ロシアの経済が意外な耐久力を見せ、戦況はロシア優勢になっている。西側の対ロシア経済制裁、禁輸は中国の存在でしり抜けになり、ロシアは物資不足とインフレを回避できている。2年前の開戦時には用心深かった中国は、今ではあからさまに中露協調路線を進めている。また、プーチン氏は朝鮮戦争で「傍観していたと見られていたソ連軍が実は中国人民軍服着用の兵士を参戦させていたこと」を暴露した。武器融通や軍事技術供与を通して北朝鮮とロシアが緊密化するなど、専制国家群の結束が明確になっている。
中国では習近平氏の個人独裁が驚くスピードで進行した。党大会での共青団派の追い落とし、李克強前首相の突然の死亡、秦剛外相、李尚福国防相の相次ぐ解任と行方不明化など独裁恐怖政治に向かいつつある。形だけの選挙を4月に迎えるプーチン氏も、反逆者プリゴジン氏の暗殺(ウォール・ストリート・ジャーナル観測)など独裁化を強め、中国もロシアも、今では異常国家とみられてきた北朝鮮と同質化している。イスラエル・ハマス戦争もこれらのならず者国家に利した。
