●中国の経済困難、ジレンマの経済政策と強権介入

 しかし、中国では不動産バブル崩壊と貿易減少、消費の冷え込みとデフレ化、流動性の罠と金融政策の無能化などの症状が現れ、長期衰弱過程入りはほぼ明確になった。中国では政策のジレンマが頻発している。バブル崩壊の食い止めと消費喚起のためには金融緩和が必須だが、それは中国からの資金流出、人民元の暴落に弾みをつけることになる。このような数々のジレンマは強権で抑えこむしかない。それには経済合理性を主張するエコノミストを黙らせなければならないということで、経済分析に当局が介入する事態に至っている。人口減少と急激な少子化という構造問題も進行している。

 政策テコ入れによる半導体投資急増、自動車テコ入れによるEV(電気自動車)輸出増、対ロシア輸出拡大と人民元決済比率の増加(一見、人民元経済圏の拡大に見える)などポジティブに見える要素はあるが、どれも持続性はないだろう。

●求められる経済社会メンタリティーの再検討

 このように世界は危険極まりない時代に入った。20世紀前半までと同様の侵略と戦争の時代に戻った。日本も世界も戦後77年間続いた「平和ボケのメンタリティー」の一掃が求められている。メンタリティー再検討は、各国国内政治・社会においても進行している。本源的欲求が強まり、建前主義、理想主義が偽善に見える時代になった。各国政治の右旋回、いわゆるポピュリズムの強まりが潮流になっている。環境対応の美辞麗句もその副作用、裏側が見えてきた。人道的移民受け入れの弊害が極端になり、リベラル路線のリーダー国であるオランダ、スウェーデンですら右派が台頭している。過度の人権擁護、例えば過去の差別迫害の歴史の清算を求めるCRT(Critical Race Theory)、LGBT促進などに批判が高まっている。各国政治はナショナリズム回帰を強める時代であるが、底流には世界秩序の再構築と新たな価値観合意の希求がある。新秩序構築にあたっては、米国覇権の強化が求められる時代とも言える。

 米国の中国敵視が一段と強まることは避けられない。誰が大統領になっても対中冷戦勝利が最優先の課題であり、中国を排除するサプライチェーン構築が一丁目一番地のイシューであることは変わらない。「大きな政府」指向も変わらない。国内産業基盤の整備、コロナ補給金に見られる社会保険支出は必須である。トランプ氏は共和党だが、伝統的小さな政府指向ではない。減税や政府支出による景気浮揚実現という点も大差はない。

●トランプ人気は価値観の再定義を人々が求めているから

 2024年は米大統領選、台湾総統選という大イベントがあるが、選挙結果にかかわらず政策選択の幅は大きくはない。トランプ現象は、米国における論点整理が進行している証である。前回の大統領選挙結果の否定という暴言にもかかわらずトランプ支持が揺るがないのは、新秩序を求める人心が強いということであろう。

 トランプ氏が再選された場合、「輸入関税10%、移民規制&禁止(イスラム教国から)、対中MFN(最恵国待遇)撤廃、反環境石油・ガス増産、EVシフト再考、公務員人事制度に介入し解雇を容易にするなど強権(独裁色)強化、伝統的価値観の復興、NATO(北大西洋条約機構)離脱、同盟関係再構築?、核拡散容認など米国国益を基準としたよりラディカルな国際秩序の再構築」などが提起される可能性が濃厚だが、対中排除はさらに進む。

 その場合、日本政局には高市首相擁立に一気に風が吹くなどと言うことがあるかもしれない。欧州経済はデッドロックにはまっている。盟主であるドイツはエネルギーの対ロシア依存、貿易の中国偏重というメルケル政権以来の戦略の清算期に入っており、停滞色が払拭できないだろう。