「燃やされた中世写本」[著]小林哲夫人の死後も、その記憶は本のなかに残る。本が失われたとき、記憶は2度目の死を迎える。僕が去年翻訳した小説で、中世末期のビザンツ帝国に暮らす老教師はそう語っていた。中世ヨーロッパで作成され、近現代まで保存されてきた写本が、一瞬にして破壊されてしまう。その代表的事例を集めた本書は、失われた写本への真摯(しんし)な挽歌(ばんか)である。粘土板からパピルスの巻物、