(2)米国経済の信じがたい強さの秘密、新産業革命とMSSE

●米国の潜在成長率が上昇している可能性が高い

 米国経済は絶好調、2023年は年間で3%近い成長になるだろう。IMF(国際通貨基金)の1年前予想に対しては2ポイントの上振れであり、利上げにより減速不可避とのコンセンサスは見事に否定された。なぜか、米国でIT技術の深化による産業革命と経済の構造転換が起こり、潜在成長率が底上げされている、という仮説を立てざるを得ない。

 現在の米国景況に関して3つの特徴が指摘される。第一は、消費と雇用の好循環が続いていること。経済を引っ張っているのは消費、その消費を支えているのは堅調な雇用というポジティブループが起きている。本来遅行指標である雇用が、先頭で経済を引っ張っている。第二に、好調な雇用は企業における価値創造の好調によって支えられている。生産性が高まり、賃金上昇分を吸収してもなお労働分配率は低水準で、企業の潤沢なキャッシュフローが確保されている。第三に、「大きな政府」への転換、政府の財政支出が効いている。コロナ禍の下での家計給付金に加えて、CHIPS法やインフレ抑制法(IRA)などの産業政策により、財政資金を投じて産業振興が行われている。

 以上の3要素は、構造的な要因である。米国経済の好調さはその構造要因によって潜在成長率が高まったためだと考えるべきではないか。

●サイバー世界で起きている新産業革命

 インターネットやAI(人工知能)、ロボットなど、サイバーの分野で歴史的技術変革が起きている。このサイバーの世界は国境がない、いわば「第7大陸」で、誰でも利用者としても企業としても瞬時に入れる知恵の世界である。この「第七大陸」をほとんど米国企業が独占している。世界の最大のBright Spot(ブライトスポット)は、インドでもグローバルサウスでもなく「第七大陸」であり、そのBright Spotを米国がほぼ独り占めしている。

 2023年1年間(12月15日まで)の株価パフォーマンスを見るとS&P500指数は23%上昇であるが、米国テクノロジー7社、「Magnificent7(荒野の七人)」(アルファベット ・アップル ・マイクロソフト ・メタ・プラットフォームズ ・アマゾン・ドット・コム ・テスラ 、エヌビディア )の合計株価が75%と突出し、それ以外の493社は12%と大きな格差がついている。

 この株価動向から米国には二つの経済領域があるということが読み取れる。一つは新産業革命を牽引しているサイバー上の成長経済圏、もう一つは、他国と同じくほとんど成長をしない一般経済圏。この「第七大陸」での価値創造が米国経済の構造を大きく変えている。

●昨年年初のハイテクリストラはどこへ行ったのか

 2022年後半、スマートフォンの普及一巡で一旦終わったと思われていたハイテク革命が再び加速し始めた。2023年初頭にはインターネットプラットフォーマーをはじめハイテク企業でリストラの嵐が吹き荒れた。このリストラはハイテク企業の新技術による労働代替を加速し、一段と生産性を高め、企業収益を押し上げたようである。雇用拡大が全産業で続いている中で、情報産業だけ雇用が減少していることは、ハイテクでビジネスモデルが進化していることを物語る。

 コロナ前からのGAFAMのキャッシュフローを吟味すると、1)2022年の落ち込みはコロナ巣ごもり特需の反動に過ぎなかったこと、2)この不況を口実に大リストラを実施したこと、3)同時に研究開発費を著増させ表面利益を抑えたこと、4)2022年4Qから鋭角的売上利益増加が始まっていることがわかる。「Magnificent7」の株価は2022年の大幅下落(ほぼ30%)の反動に加えて、この利益回復を織り込んでのものである。