実はハイボールはビールより太りやすい…肝臓専門医が解説"一生お酒を楽しむために知っておくべきこと"
※本稿は、尾形哲『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■肝硬変のトップ原因になった「お酒の飲みすぎ」
これまでC型肝炎ウイルスがトップだった肝硬変の原因が、今年はじめてアルコール性の肝硬変が原因の1位に躍り出ました。とはいえ、アルコール摂取量の平均は1992年のピーク時に比べて、74%まで減少しています。飲酒しない人の割合も増えていることを考慮すると、お酒をたくさん飲む人の飲酒量がさらに増えていると考えられます。特にコロナ禍によって在宅飲酒が習慣になってしまい、抜けきれないという声も聞かれます。
飲酒機会が増える年末・年始を迎えるにあたり、お酒好きな人がお酒で“太らない”、“健康を失わない”ために知っておくべき飲酒の誤解を紹介します。
■誤解その1:お酒では太らない
糖質ゼロのお酒なら太らない、お酒は体熱産生で消費されるから太らない、おつまみを控えれば太らないと思っている人が、実は多いようです。ですが、それは大きな誤解です。
お酒を飲むと体はアルコールの処理を優先するため、中性脂肪をエネルギーとして使う働きが低下します。同時に、中性脂肪を体内にため込む働きが高まります。さらに、血糖値が低下したときに糖質以外の物質からエネルギーを産生する「糖新生」という働きがストップすることが知られています。このトリプル作用で、中性脂肪が増えてしまうのです。
■度数が高いお酒はカロリーも高い
糖質ゼロのお酒で一時的に血糖値を上げなかったとしても、中性脂肪は減りません。むしろ、糖質ゼロのウイスキーやウォッカなどの蒸留酒は“アルコール度数が高い”という落とし穴があります。お酒はれっきとしたエネルギー源で、純アルコール量1g当たり7.1kcal分のエネルギーを持ちます(なんと、1g当たり約4kcalの糖質より高い!)。だから、アルコール度数が高いお酒こそ注意すべき。ハイボールはビールよりもむしろ太りやすいお酒なのです。

お酒を飲むと体がカッと熱くなるように、お酒はエネルギーとして使われる「食事誘発性体熱産生(DIT)」が高い食品といわれます。しかし、エネルギーとして使われるのは全体の約2割。残りは、脂肪として蓄積されやすいエネルギー源です。つまり、お酒は飲んでも勝手に代謝されるから、“摂取カロリーがゼロで太らない”という理論は大間違いなのです。
■中性脂肪とアセトアルデヒドのダブルパンチ
おつまみはアルコール分のカロリーに単純に加算されるので、食べすぎはもちろん太る原因です。お酒を飲むと食欲が増進されて、食べすぎやすいことも注意です。とはいえ、おつまみなしで飲むと血中アルコール濃度が急激に上がるだけでなく、胃腸の粘膜を荒らすことに。さらに飲酒スピードが上がって、結果的に飲酒量が増えやすくもなります。だから、太らないために減らすべきはおつまみではなく“お酒”です。
お酒の害というと、肝臓で代謝する際に出る「アセトアルデヒド」という有害物質について耳にすることが多いかもしれません。しかし、アルコールの摂取によって体に中性脂肪が増えると、肝臓は粛々とその脂肪を肝細胞にも蓄積していきます。これが「脂肪肝」。アセトアルデヒドの害とのダブルパンチで著しく肝機能を低下させることも知っておいてほしい事実です。
■誤解その2:飲酒後に眠くなる人は寝かせておけばいい
お酒を飲んでもまったく顔に出ない人がいる一方、飲むとすぐに赤くなる人や眠くなる人がいます。これは、アルコールが代謝される際に出る有害物質「アセトアルデヒド」の分解能が異なることが原因で、生まれつき持っている遺伝子が関係しています。酵素の活性度が遺伝子の型によって違うのです。

そもそもアセトアルデヒドを分解できない遺伝子を持つ人は、飲むとすぐに気分が悪くなるので率先して大量のお酒を飲むことはないでしょう。ただ、自分の体質を知らない若い世代で無理に大量のお酒を飲んで「急性アルコール中毒」を起こす例が少なくないので、この点は注意してください。
■お酒と同量以上の水を飲むよう心がける
飲むと赤くなるけれど、飲んでいるうちに強くなって飲めるようになる人もいます。また、楽しく飲んでいたと思ったら急に静かになって眠ってしまう人も。こういうタイプの遺伝子型を持つ人が、日本人の40%ほどいます。このタイプの人が飲みすぎると肝臓だけでなく、食道や咽頭がんのリスクが高くなることが知られています。
飲むと寝付きがよくなると思って寝酒の習慣を持ちやすいのもこのタイプ。しかし、寝酒の習慣がつくと耐性がついて飲酒量が増えることになりかねません。しかも、睡眠中はアルコールの分解が遅くなります。肝臓では脂肪よりもアルコールの分解を優先するため、体内にアルコールが残っていると脂肪はエネルギーに変換されずに蓄積されていきます。だから、飲んですぐ眠ってしまう人は“太りやすい”と自覚すべきでしょう。
もし、一緒に飲んでいる仲間でこういうタイプの人がいるときは、寝たら放っておくのではなく、寝てしまう前に水を勧めて血中アルコール濃度を下げるようにしてあげてください。もちろん、自分でこのタイプだと自覚がある人は、お酒と同量以上の水を飲むことを心がけてください。ちなみに、飲酒量の目安は1日で純アルコール量40gまで。ビールならジョッキで2杯までです。
■「飲める人」でもビールならジョッキ3杯まで
最後に、赤くならずにいくらでも飲めてしまう人。アセトアルデヒドの分解スピードが速いため“飲める口”といえます。だからこそ、飲酒量を自分でコントロールする必要があります。1日で日本酒5合程度(純アルコール量100g)を超す多量の飲酒を続けると、男性40年、女性30年で肝硬変になると推計されるデータがあります。飲めるタイプの人でも最大1日で純アルコール量60gまでにし、休肝日を設けましょう。
純アルコール60gとは、ビールならジョッキ3杯、ワインならグラス4〜5杯、日本酒で3合なので、飲む日には、これを上限としましょう。
■誤解その3:ウコンやしじみのサプリで肝臓強化ができる
ウコンやしじみのサプリメントで飲み会に備えてはいませんか? 巷では肝機能の改善をサポートする栄養補助食品として、ウコンやしじみエキスなどのサプリメントが人気のようです。
しかし、肝臓専門医として肝機能が低下している人は、サプリメントの摂取をストップしてほしいと思います。サプリメントがかえって肝機能を低下させているケースを否定できないからです。
2005年、日本肝臓学会が民間薬や健康食品など、健康保険で承認されていないものによる薬物性肝障害の調査を実施しました。その結果、原因で最も多かったのがウコンだったのです。ウコンを飲んでいる人の多くは、飲酒量も多いと想定されるので、原因がウコンであるかを確実に突き止めることはできません。ただ、少なくともウコンによる二日酔い予防や肝機能改善を示す科学的根拠は十分ではありません。
肝臓の代謝・解毒作用を高める「オルニチン」を多く含むことを理由に、飲みすぎた翌日にしじみのみそ汁を飲むことを推奨する情報もあります。ですが、しじみは鉄分の含有量が多く、肝機能が低下していると鉄分が蓄積して肝障害が引き起こされる例も報告されています。
二日酔いになるまで飲まないことがベストですが、飲みすぎた日の翌日は、多めに水を飲み、野菜たっぷりのスープやみそ汁などをとるとよいでしょう。
■飲酒量を「今よりも減らす」ための工夫を
ここまでお酒の誤解について述べましたが、では実際どうしたらいいのでしょうか? まず、お酒を完全にやめる必要はありません。お酒好きな人が意気込んで今日から「断酒」しても、どこかで我慢の限界が訪れてお酒を口にしてしまうことでしょう。

それよりも、まずは“今よりも減らす”ことです。外で仲間と飲むときは、乾杯のビールをジョッキから瓶ビールにするのがおすすめです。最初にジョッキを頼むと、次もその次もジョッキを注文してくれる優しい人がいて倍々に量が増えることに。瓶ビールなら、相手に上手にすすめながら自分が飲む量をコントロールしやすいです。できるだけコップを空にしないことで、心理的に相手に注がせない防衛策になります。
自宅で飲むときは、1本ビールを開けたら、2本目はノンアルコールにするなどで、切り替えてみてください。昨今増えている低アルコールビールを活用するのもひとつの手です。
ノンアルコールなんて飲んだ気にならないと思い込んでいる人も多いようですが、最近のものはクオリティが格段に上がっています。ノンアルコールビールでも、水にはないリラックス効果を得られるというデータもあるので、ものは試しでこの年末に挑戦してみてはいかがでしょうか。
----------
尾形 哲(おがた・さとし)
佐久市立国保浅間総合病院外科部長
1970年生まれ。1995年神戸大学医学部医学科卒業、2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(いずれもKADOKAWA)がある。
----------
(佐久市立国保浅間総合病院外科部長 尾形 哲)
